増刊号 就学・就労支援
第2部 まなぶ:就学
第2章 就学前のかかわり
5 神経発達症児への就学前支援の実際
太田 麻衣
1
Mai Ohta
1
1株式会社リニエR
pp.797-801
発行日 2025年7月20日
Published Date 2025/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590080797
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はじめに
2022年(令和4年)1〜2月にかけて実施された文部科学省の調査1)によると,小・中学校の通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関し,「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」との回答が8.8%,「学習面と行動面ともに著しい困難を示す」との回答が2.3%という結果でした.また,専門家(巡回相談員,作業療法士等)に学校として意見を聞いているかという設問には73.5%が「聞いていない」と回答しています.
2013年(平成25年)〜2023年(令和5年)の11年間で,特別支援学校等の児童生徒の増加の調査においては,特別支援学校は1.3倍,特別支援学級は2.1倍,通級による指導は2.3倍にも増加をしています2).
小学校への入学は,子どもたちにとって新しい集団生活が始まる,大きな節目です.しかし,神経発達症の特性がある場合,集団生活への適応や学習面での困難等,さまざまな課題に直面する子どもも少なくありません.これらの課題は,早期からの適切な支援を受けることによって軽減できる可能性があります.特に,就学後に必要とされる能力,たとえば,コミュニケーション,社会性,学習に必要な能力等を伸ばすためには,就学前からの継続的な支援が大切です.早期からの適切な支援は,子どもたちが自信をもって学校生活を送り,社会の中で自立していくための土台となるでしょう.
本稿では,神経発達症児への就学前支援の実際について,制度の狭間,就学準備の多様性,早期支援の選択肢という3つの視点と事例からの考察を述べたいと思います.

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