Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Key Questions
Q1:非がん性呼吸器疾患の特性は?
Q2:非がん性呼吸器疾患の評価と目標設定のポイントは?
Q3:非がん性呼吸器疾患の実際の介入方法は?
はじめに
「緩和ケア」という言葉は,近年,非がん患者である慢性進行性疾患にも広く適用される概念へと拡張されている.中でも非がん性呼吸器疾患(non-malignant repiratory disease:NMRD)は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)や間質性肺炎等を含み,緩和ケアの主要な対象疾患の一つとなっている1).NMRDは進行に伴って呼吸困難や倦怠感,咳・痰,不安・うつといった多彩な症状を呈し,QOLの低下を招くことから,早期から緩和ケアの視点を取り入れることが重要である.
NMRDに対しては,これまで呼吸リハビリテーションが非薬物療法の中心的役割を担ってきた.呼吸リハビリテーションは,呼吸困難,運動耐容能,不安や抑うつを改善,健康関連QOLや健康状態を向上させ,入院を予防するエビデンスの確立された治療介入である2).普及状況としては十分とはいえないものの,国内外において関連するマニュアルやステートメント,各種書籍の発刊が進んでいる.
「非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021」1)では,呼吸リハビリテーションを積極的な回復ケアのみと捉えるのではなく,呼吸リハビリテーションと緩和ケアの目的は,トータルペインや呼吸困難の軽減等,同一線上にあることが広く知られるべきであるとしている.これを受けて,従来から通常臨床において行われてきた呼吸リハビリテーションの中に,結果的に緩和ケアの要素が含まれていたことに気づくセラピストも多いのではないだろうか.
作業療法士は生活支援の専門職として,呼吸困難といった苦痛を抱えながら生きる患者に対し,緩和ケアの視点をもちながら,生きがいや尊厳を意図的に豊かな方向へと導くことのできる,稀有な職種であると私は考えている.
本稿では緩和ケアの観点から,NMRDに対する作業療法のあり方について,臨床実践に即して紹介する.

Copyright © 2025, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.