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Key Questions
Q1:作業療法士として必要な生涯学修とは?
Q2:作業療法士として学びから得られるキャリア形成とは?
Q3:作業療法士として仕事から得られるキャリア形成とは?
はじめに
わが国の健康寿命は世界一であり,2007年(平成19年)に日本で生まれた子どもの半数が107歳より長く生きるとも推計されている1).このような「人生100年時代」を目前にして,自分のキャリア形成についての議論や取り組みが加速している.政府は,人生100年時代を見据えた経済社会システムを創り上げるための政策のグランドデザインを検討する会議として,2017年(平成29年)9月に「人生100年時代構想会議」を設置し,議論を交わした.同会議による『人づくり革命 基本構想』2)には,下記のような記載がある.
“……こうした人生100年時代には,高齢者から若者まで,全ての国民に活躍の場があり,全ての人が元気に活躍し続けられる社会,安心して暮らすことのできる社会をつくる必要があり,その重要な鍵を握るのが「人づくり革命」,人材への投資である.”
このような背景のもと,リカレント教育も施策の一つとして掲げられた.高等教育を終えたあとは,仕事に従事するため教育の場から離れるケースが一般的であったが,今後は生涯を通じての学びが国家的にも推進される時代がくる.つまり,既成概念に捉われず,自分のキャリアを自ら考え,創り上げ,自らの価値を高めていくことが求められる.
では,作業療法士を取り巻く環境は,どのように変化しているのだろうか.日本における作業療法士有資格者は,2024年(令和6年)9月現在11万8,471人に達し3),2000年(平成12年)の介護保険制度創設時4)と比べて約8倍に増加している.作業療法士の多くは,医療や介護,福祉等の社会保障制度に基づく事業に従事し,制度改定とともに臨床実践現場は変化してきた.また,今後は地域共生社会に向けた国の施策により,地域における作業療法士の活躍が期待される.
一方,日本の社会保障制度は,人口減少および少子高齢化に伴う人材不足と財源不足という2つの大きな課題に直面している.65歳以上の高齢者は2040年まで増加傾向にあるため,作業療法士の支援対象の数は今後も維持される可能性がある.しかし,限られた財源で多くの対象者に支援を提供するには,現行の社会保障制度において効率化を図るだけでなく,職域の確保と拡大こそが作業療法士が向き合うべき課題ともいえる.つまりは,社会のニーズと課題に応じて,作業療法士の役割も柔軟に変化していかなければならない.
本稿では,作業療法士としての生涯学修のあり方とキャリア形成,そして筆者の経験を通じて得たキャリア形成の考えを述べる.作業療法士としてキャリア形成を築くうえで手がかりになれば幸いである.
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