特集 卒前,卒後の教育をつなぐ
コラム:女性の協会参画と作業療法士としてのキャリア形成について考える
竹中 佐江子
1
1日本作業療法士協会
pp.1046-1048
発行日 2023年8月15日
Published Date 2023/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203507
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はじめに:女性OTにおけるキャリア形成の課題
2021年(令和3年),日本作業療法士協会(以下,協会)の協会事業として「女性会員の参画促進事業」が設置され,女性会員の協会活動参画を促進するための新たな目標および具体的取り組みを次期5カ年戦略に掲げる準備が進められた.私は本事業の担当理事としてかかわらせていただいたのだが,「なぜ女性の参画を進めないといけないのか」,「女性会員の参画が進めばどのような社会になるのか」等,さまざまな視点で意見交換を行う機会を得た.その取り組みや議論の中で課題として印象に残っていることが2点ある.
1点目は,本事業の先駆けとして会員向けに実施された「会員のワークライフバランスと学術研鑽やキャリア形成,協会士会活動参画に関する現況調査」において,研究や大学院への進学等をおおむね半数の女性が「そもそも考えたことがない」と回答したことであった.進学しようとしてあきらめたわけでもなく,そもそも女性は研究や進学をするものではない,という「無意識の偏見」が男女共同参画を謳う今の時代においてさえも根強く残っていることがうかがえた.
2点目は,本事業のディスカッションの中で,OTは生活をみる職業特性から,ライフイベントに応じた自分の役割を重要視するがゆえに,結婚,出産,介護等に直面した際に,まずは今の自分の生活に向き合うことを優先する傾向があるのではないか,という意見が挙がったことである.
本稿では,これらの女性特有のライフイベントに応じたキャリア形成の課題と,今後向かうべき協会事業の方向性について,私見も交えて述べたいと思う.
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