Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
小児期にも発症し得る末梢神経疾患の1つとして遺伝性ニューロパチーがあり,運動障害と感覚障害の程度によって3つに分類される.すなわち,運動および感覚の双方が障害される遺伝性運動感覚性ニューロパチー(hereditary motor sensory neuropathy:HMSN),感覚神経が主に障害される遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチー(hereditary sensory and autonomic neuropathy:HSAN),末梢の運動神経のみが障害される遺伝性運動ニューロパチー(hereditary motor neuropathy:HMN)である2,15,34).
このうちHMSNは,Charcot-Marie-Tooth病(CMT)として知られており,遺伝性ニューロパチーの中で最も頻度が高い.臨床的には四肢遠位筋の筋力低下や筋萎縮を特徴とし,逆シャンペンボトル様の下腿筋萎縮,pes cavus(凹足)・hammer toeなどの下肢変形がみられる.正中神経の運動神経伝導速度を基準として,38m/秒より遅いものは脱髄型に,速いものは軸索型に分けられる.さらに,脱髄型で常染色体顕性遺伝のものはCMT1,常染色体潜性遺伝のものはCMT4,軸索型で常染色体顕性遺伝のものはCMT2,常染色体潜性遺伝のものはAR-CMT2に分類される.加えて,X染色体連鎖遺伝のものはCMTX,3歳未満の乳幼児期に発症する重症型はCMT3(Dejerine-Sottas症候群:DSS)に分類される.病理学的には,脱髄型CMTでは長期間の脱髄・再髄鞘化により形成されるオニオンバルブが,軸索型CMTでは軸索再生に伴う集簇した再生線維が,診断の手がかりとなる重要な所見として知られている.
一方,HSANは感覚障害を主徴とする非常にまれな病型である.発症年齢は先天性から成人までさまざまで,表在感覚障害,深部感覚障害,自律神経障害の程度は病型によって異なる.四肢,特に下肢遠位の感覚脱失を呈し,温痛覚障害により外傷や熱傷を繰り返し,皮膚潰瘍などが問題となる.外因によらない骨折や神経原性骨関節症の頻度も高く,切断に至る例もある.病理学的には小径有髄線維,無髄神経を中心に障害されることが多い5).Dyck11)により原因遺伝子と臨床像からⅠ〜Ⅴの病型に分類されていたが,その後も新たな原因遺伝子がみつかっており,Ⅵ〜Ⅷの病型が加わっている.HSANの主な原因遺伝子を表 1に示す.
本稿では遺伝性ニューロパチーのうち,CMTおよびHSANに焦点を当てて,主要な病型について概説する.

Copyright © 2025, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.

