Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Charcot-Marie-Tooth(CMT)病1型(髄鞘型)は末梢神経伝導速度の遅延,末梢神経の肥厚,節性脱髄およびオニオンバルブの形成を認め,髄鞘の障害が主因と考えられている。近年,1A型,1B型,1C型そして1型と同様に扱われているX型の病因遺伝子がPMP22,Po,LITAF,EGR2,SOX10そしてCx32と同定された。それぞれの遺伝子変異・欠失,加えてPMP22遺伝子重複による過剰発現により,Schwann細胞の分化誘導および安定した髄鞘の形成・維持機構が障害される。脱髄の機序としては,各々の遺伝子がコードする蛋白のloss of function,異常蛋白によるdominant negative効果,過剰産生された蛋白や変異蛋白の異常蓄積,プロテアソーム系の障害に基づくアグレソームの生成,Schwann細胞のapoptosisの誘導および二次的な免疫反応の関与などが考えられる。
はじめに
Charcot-Marie-Tooth(CMT)病は最も頻度の高い遺伝性ニューロパチーであるが,遺伝形式(常染色体優性,劣性,X連鎖性遺伝)や連鎖部位(病因遺伝子)によって分類される。常染色体優性遺伝を示すものは伝統的に電気生理学および病理学的検査所見に基づいて,2つの病型に分類される。1型(髄鞘型)では末梢神経伝導速度の遅延,末梢神経の肥厚,節性脱髄およびオニオンバルブの形成を認め,髄鞘の障害が主因と考えられている(表1)。2型(軸索型)では神経伝導速度の遅延はないか,ごく軽度であり,誘発筋活動電位の振幅の低下を認め,オニオンバルブの形成も稀で,主因は軸索の障害にあると考えられている。しかし,近年,2型の症例においても1型の遺伝子異常が検出され,髄鞘と軸索の相互関係を裏付けている。これらの分類は一次的障害を意味しているというよりは,主要病変部位を反映しているものと考えられる。
一方,1型(髄鞘型)の検査所見を呈し,常染色体劣性およびX連鎖性遺伝形式をとるものは,それぞれ4型およびX型に分類される(表2)。X型は従来1型と同様に扱われており,含めて解説する。表に示すように,優性遺伝の病型の遺伝子として同定されたPMP22やPo遺伝子の変異が,劣性遺伝を示すこともある。また,病因遺伝子の解明からDejerine-Sottas病およびCongenital hypomyelinationは1型の重症型であり,遺伝性圧迫神経麻痺hereditary neuropathies with liability to pressure palsies(HNPP)は軽症型と考えられる。
髄鞘型においても神経機能の障害は刺激伝導の障害に起因し,症状は脱髄の程度ではなく軸索の障害に伴って進行する。
Charcot-Marie-Tooth disease type 1(CMT1)is a heterogeneous disorder. Most CMT1 patients are associated with a duplication of 17p11.2-p12(CMT1A duplication), and a small number of patients have mutations of PMP22, Po, LITAF, EGR2, SOX10 and Cx32genes. Demyelination in CMT1 is caused by the defects in the differentiation or proliferation of Schwann cells or the defects in the formation and maintenance of stable peripheral myelin by Schwann cells. The underlying pathogenesis is a loss of function of the products encoded by these genes, dominant negative effects of mutant proteins, aggresome formations from mutant proteins leading to the apoptosis of Schwann cells, and secondary autoimmune reactions.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.