特集 —これだけは知っておきたい—せん妄診療の現在
特集にあたって
明智 龍男
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野
pp.5-6
発行日 2026年1月15日
Published Date 2026/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810680010005
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日本は世界で最も高齢化が進んだ国となり,「超高齢多死社会」という新たな時代を迎えている。平均寿命の延伸とともに,慢性疾患や終末期医療のニーズは急増し,臨床現場では術後のせん妄のみならず,認知症や身体疾患を背景とした高齢者のせん妄が高頻度にみられる。私自身が地域の中規模の総合病院に診療支援で訪問することになって驚いたのが,そのせん妄の適切な早期発見・診断・非薬物療法を含めたマネジメント,ケアのいずれもがいきわたっていない状況にあることであった。
せん妄は,高齢者の生命予後や生活の質(QOL)に重大な影響を及ぼす頻度の高い器質性の脳機能障害であるにもかかわらず,医療現場では患者の性格に原因を帰する誤った見立てや鎮静を重視した不適切な薬物治療,身体拘束といった倫理的問題とも直結する。入院中の高齢者の20〜50%に発症するとされるせん妄は,医療従事者の間でも依然として理解の差が大きく,統一的な対応がなされていないのが現状である。また終末期においては,身体状態の悪化に伴うせん妄をどこまで「疾患」として扱い,積極的にマネジメントすべきなのか迷うこともある。

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