回盲部脂肪腫の嵌頓を契機に診断された横行結腸癌の1例

A case of transverse colon cancer diagnosed as a result of incarceration of lipoma originated from the ileocecal lesion

要旨

症例は82歳，女性．腹痛，嘔気・嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した．造影CT検査の結果，腸重積症が疑われ当科へ紹介となった．CTで右側横行結腸の全周性の壁肥厚と口側腸管の拡張を認め，壁肥厚部肛門側に脂肪のdensityを示す腫瘤と，腫瘤に連続した血管茎を上行結腸内に認めた．以上より，横行結腸癌への上行結腸脂肪腫の嵌頓と診断した．診断的治療目的に注腸造影を施行したが，整復困難であり手術の方針とし，右半結腸切除術を実施した．切除標本は，回盲部を起始部とする脂肪腫が横行結腸癌に嵌頓した状態であった．有茎性の脂肪腫が大腸癌の狭窄部を超えて嵌頓した症例は極めて稀であり，文献的考察を加え報告する．