増刊号 周術期管理マニュアル—保存版
Ⅰ周術期管理・総論
ERASの現状
海道 利実
1
Toshimi KAIDO
1
1聖路加国際病院消化器・一般外科
pp.8-11
発行日 2025年10月22日
Published Date 2025/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800110008
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ERASとは
Enhanced recovery after surgery(ERAS)とは,手術後の回復を促進し,合併症を減少させ,医療資源を効率的に活用することを目的とした多職種連携による科学的根拠に基づく周術期管理プログラムである.1990年代後半に北欧で生まれたこの概念は,従来の慣習に依存した術後管理を見直し,術前・術中・術後を通じて患者中心の一貫したケアを提供することで,より安全で迅速な回復を実現することを目指している.
2001年に欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)でERAS study groupが組織され,2005年に周術期のストレス反応を軽減し,術後合併症を減らす方法として17項目からなるERASプログラムの詳細が報告された(図1)1).これが現在行われているERASプログラムの基本となっている.ERASの構成要素は,術前教育,栄養管理,疼痛対策,早期離床,輸液管理,ドレーン最小化など,多岐にわたる介入で構成され,それぞれに明確なエビデンスが存在する.これらを体系的に実施することで,入院期間の短縮や術後合併症の減少,患者満足度の向上などといった成果が,数多く報告されている.

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