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はじめに
肘関節は上腕骨・橈骨・尺骨からなり,上肢のなかで最も複雑な関節の一つである.屈曲伸展に加え,前腕の回内・回外運動に重要な役割を果たしている.食事や整容,排泄,家事動作などリーチ動作を中心として日常生活のあらゆる動作にかかわっている.
中高年になると,加齢やオーバーユースによる変性,血流障害,絞扼性神経障害などが関与し,肘の痛みや可動域制限が生じやすくなる.スポーツ選手だけでなく,家事や軽作業,パソコン操作など,日常生活レベルでも肘への負担は意外に大きい.これらのことから,中高年では特有の腱付着部炎や軟骨,神経障害を生じる.関節の変性が進行すると肘関節においても変形性関節症(osteoarthritis:OA)に至り,就労や日常生活に支障を来す.また高齢者の特に女性においては,骨脆弱性による肘関節周囲骨折で粉砕により治療に難渋することもある.
また40代以降の女性に多い関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は,診断と治療の技術が急速に進歩し,早期診断と薬物療法により炎症をコントロールできるようになってきた.整形外科医に対する関心やニーズは減少するかと思われたが,「関節リウマチ診療ガイドライン2024」では非薬物治療・外科的治療アルゴリズムが新たに提示され,“保存的治療が無効な場合は関節機能再建術を検討する”として,人工関節置換術・関節(温存)形成術・関節固定術・滑膜切除術などを行うとされている1).RAにおいて上肢は早期に滑膜炎と関節破壊が発生しやすく,さまざまな機能障害を来すことから適切な時期に適切な治療介入を図ることが重要である.
本稿では,臨床でよく遭遇する中高年の肘関節疾患を整理し,その病態とリハビリテーションを含めた対応について概説する.さらにRAによる肘関節変形であるリウマチ肘に対する手術療法として,また高齢者の骨折やOAに対する切り札として確実に進歩を遂げている人工肘関節全置換術(total elbow arthroplasty:TEA)について解説する.

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