Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「オレの記念日」—冤罪による獄中生活を自己教育・自己形成の時間に充てた人生譚
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.111
発行日 2025年1月10日
Published Date 2025/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530010111
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2024年は「冤罪」をテーマとするドキュメンタリーが,「正義の行方」(飯塚事件:死刑執行済み),「Mommy マミー」(和歌山毒物カレー事件:死刑判決),「拳と祈り—袴田巖の生涯」(袴田事件:再審無罪判決)と立て続けに公開されたことが印象的だった.これらの作品に先立つ「オレの記念日」(監督/金聖雄:2022年)は,冤罪の実相に迫りつつも,冤罪被害者である桜井昌司(1947〜2023)の生き方,思考に光を当てている点で異彩を放つ.
桜井は,杉山卓男(1946〜2015)とともに,1967年8月,茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件,いわゆる「布川事件」の犯人として手錠をかけられ,1978年に無期懲役が確定.その後,29年の獄中生活を経て仮釈放され,2009年に再審開始決定,2011年に無罪判決,2021年に国家賠償裁判での完全勝利.こうした経験の一つひとつが詩人・桜井にとって,ネガティブ,ポジティブ問わず,いずれも「記念日」としての意味をもつものであった.
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