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■はじめに
「経済財政運営と改革の基本方針2025」1)では「第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現」において,——現役世代が急速に減少し,高齢者数がピークを迎える2040年頃を見据えた中長期的な時間軸も視野に入れ,現役世代の負担を軽減しつつ,年齢に関わりなく,能力に応じて負担し,個性を活かして支え合う「全世代型社会保障」の構築が不可欠である.改革工程2)を踏まえ,医療・介護DXやICT,介護テクノロジー,ロボット・デジタルの実装やデータの二次利用の促進,特定行為研修を修了した看護師の活用,タスクシフト/シェアなど,医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・省力化を実現し,職員の負担軽減や資質向上につなげるとともに,地域医療連携推進法人,社会福祉連携推進法人の活用や小規模事業者のネットワーク構築による経営の協働化・大規模化や障害福祉サービスの地域差の是正を進める——と記載されている.こうした方針について医療・介護界の関係者は,おおむねその必要性を認めながらも,費用面や技術支援といった点から懸念を示し,国によるさらなる支援を要請している.しかし,地域医療再生基金を用いて多くの地域で導入された地域共通電子カルテのほぼ全てが事業停止の状況になっていることを踏まえると,財政面での支援があったとしても,それがそのまま制度として一般化するかについては慎重な判断が必要だろう.なぜ,これらの事業がうまくいかなかったかと言えば,費用面以上にそれを使うことの必要性・利便性が関係者にとって明らかではなかったからである.しかし,こうした状況下でも,DX化を行い,それを用いて総合的な地域包括ケア体制を構築することに成功している事例がある.本稿で取り上げる祐愛会織田病院は,まさにそうした事例である.佐賀県鹿島市という高齢化が進む地方都市で,人的・物的資源に制限がある状況でも,地域包括ケアシステムを構築するにはサービスの複合化を行い,それを効率的に運営するためDX化が不可欠であった.祐愛会ではこうした問題意識から,国や都道府県からの支援を待つのではなく,自らの努力で前述の「経済財政運営と改革の基本方針2025」で目標とされていることを,他地域・他組織に先駆けて実現している.そして,そのシステムは国際的に見ても先進的なものである.本稿では,織田病院のこれまでの取り組みについて紹介し,日本のこれからの地域包括ケアシステム構築の在り方について論考する.

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