Japanese
English
特集 関わり合う脳
Ⅰ.他者と関わる脳
他者の行動戦略に対応した自己の行動戦略決定
Dynamism of action strategy between self and other
石井 宏憲
1
,
倉岡 康治
2
Ishii Hironori
1
,
Kuraoka Koji
2
1関西医科大学医学部生理学講座
2近畿大学医学部生理学講座
キーワード:
サル
,
行動戦略
,
ゲーム理論
,
前帯状皮質
,
扁桃体
Keyword:
サル
,
行動戦略
,
ゲーム理論
,
前帯状皮質
,
扁桃体
pp.7-11
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760010007
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これまでの研究により,学習や意思決定の脳内機序について多くのことが明らかにされてきた。例えば,中脳ドーパミンニューロンによる報酬予測誤差コーディング1)や前頭眼窩野ニューロンが表現するeconomic value2,3)は,言ってみれば,脳の中に自分にとってより良い報酬を得るための行動選択を導く重要なコンパスが存在することを示している。しかし,困ったことがある。そのコンパスを他者も持っているということである。特に,集団に属する動物たちにとって,仲間は同時に最も厄介なライバルである。自分にとって魅力的な資源は他の誰かにとってもそうであり,競争の結果それが得られるとは限らない,あるいは多くのコストがかかることも考えられる。一方,仲間の存在によって,単独では捕食効率が悪く魅力的でなかった資源も効率よく捕食できる魅力的な資源に変わる可能性がある。このように実際のマルチエージェント環境では,自分がとるべき行動戦略は他者との関係で大きく変わり得る。
本稿では,サルがどのように他者と餌をめぐる駆け引きを行うのか,そしてその行動戦略決定を支える神経回路についてレビューする。
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