連載 人間関係論 より豊かな共生を・4
自己と他者のコミュニケーション
服部 祥子
1
1大阪人間科学大学精神科
pp.902-905
発行日 2001年11月25日
Published Date 2001/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903888
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
人は孤独を求める生きものではない.多くの人はさまざまな理由で他者と触れ合い,人間関係をもとうとする.たとえば不特定の他者の中から自分の関心や感性に合致する相手を見つけると,近づきたい,親しくなりたいという特定の意図をもって相手に働きかけようとする.その時人は自分のほうから近づく,視線を向ける,話しかける等の接近行動をとる.最初は一方的な行動だが,相手もその刺激に動かされて反応すれば,親密な関係性へと発展する.しかし相手がその働きかけを無視したり拒絶すると,双方向的なかかわりは成立せず,途絶する.また親密性が生まれた後,双方のいずれかの微妙な変化のため,自他の関係性は緊張をはらんだり,フラストレーション(欲求不満)を生み出したりする.このような自己と他者の関係性をコミュニケーションという角度から眺め,コミュニケーションはどのようにして成立するのか,コミュニケーションの技法とは何か,それを磨き高めるためにはどうすればよいのか等を考えてみよう.
興味がある,知りたい,親しくなりたい,仲良くなって一緒にいたい等,相手への融合や親密性の願望がコミュニケーションという行動を起こさせる.その原動力は何も肯定的なもののみではない.相手への憎悪や抗争心から,相手を困らせたり,苦しめたり,だましたりしたいという思いがコミュニケーションを成立させもする.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.