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はじめに
アカデミック・ハラスメント(以下、アカハラ)は、大学などの教育機関内で起きるハラスメントの総称であり、教員から学生に対して、あるいは教員から若手の研究員や教員などに対して行われる、権力を用いた嫌がらせを意味する言葉である1)。代表的な例として、以下が挙げられる2)[表]。
看護教育の場においても、教員と学生、臨床実習指導者と学生といった多様な関係性の中で、ハラスメントが少なからず発生している。しかし従来こうした問題は、加害者個人の人格や資質、あるいは被害者側の受け止め方の問題として、個人間の関係に還元して理解されることが多かった。しかし近年の研究は、ハラスメントを単なる個人間のトラブルとしてではなく、それを生起させ、許容し、時に助長してしまう組織的・構造的な条件の産物として捉える視点の必要性が主張されている。
そこで本稿は、看護教育におけるハラスメントを「組織的・構造的規定要因」という観点から論じることを目的とする。ただ、国外ではアカハラという言葉はあまり使用されておらず、基本的にはいじめ(bullying)や暴力(violence)という用語を用いて研究されているため、本研究でもそれらの用語を用いた研究を包括的に採用する。なお日本語で「いじめ」と聞くと悪意がある行為を思い浮かべる読者が多いかもしれないが、英語で言う「いじめ」にはそのようなニュアンスはなく、悪意があってもなくても、結果的に相手に対しネガティブな影響(精神的不調・生産性低下など)をもたらしていれば、それは「いじめ」だと位置づけられている。例えば、職場のいじめに関する研究で代表的に用いられている「尺度Negative Acts Questionnaire-Revised(NAQ-R)」にも、「あなたの仕事や評価に影響を与えるような情報を与えてくれなかった」「無視された」「あなたに権利のあるもの(有給取得など)を主張できないよう圧力をかけられた」「あなたが起こしたミスや間違いを、繰り返し思い出させられた」など、不適切な指導に関する項目が多く含まれている3)。
本稿では、研究の理論的枠組みを参照しながら、ハラスメントを生み出す組織的条件を整理する。次いで、看護領域における国内外の実態調査を引用し、看護教育という場が構造的にハラスメントを生みやすい特性を備えていることを示し、組織的・構造的観点から導かれる対策の方向性について検討する。

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