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はじめに
糖尿病をはじめとして,「食事療法」を治療の一環として自己管理を課される慢性疾患は多い。糖尿病の場合,高血糖の持続は生命や生活そのものの障害に直結する症状が生じる。ここでは,慢性疾患のひとつである糖尿病の「食事」を例に挙げ,「ヘルスマネジメントの持続困難:食事」に関する情報と実践・評価・研究について取り上げる。
厚生労働省が実施した令和5年(2023)の調査によると,糖尿病で現在治療を受けている患者総数は552万3,000人(男性317万7,000人,女性234万6,000人)で(厚生労働省,令和5年患者調査の概況,2025)註1,前回の調査時よりも減少しているものの,その「予備軍」の人口は,約2,000万人以上と推計されている(厚生労働省「国民健康・栄養調査」,2025)註2。増加の背景には高齢化,肥満の増加,ストレスなど現代社会の生活習慣が深く関わっているといわれている。
糖尿病における食事療法は,治療の基本であり患者自身が実践する治療である。この遵守は血管障害などを基盤とする網膜症や神経障害,脳梗塞や心筋梗塞の予防につながるものでもある。しかし,「食事」は毎日,かつ生涯繰り返されるものであり,その人がこれまで生活してきたプロセスにおいて選択され変化して,いまに至る行動でもある。また,「食事」はすべての身体機能を効果的に使うための基本となるエネルギー摂取行動であるとともに,心理・社会的な意味をもつものでもある。
しかし,糖尿病などの慢性疾患に罹患することで,それまであたりまえのように摂られてきた「食事」内容や量に制限がかかることがある。特に慢性疾患においては,疾患の悪化防止,改善のために食事の制限と変更が求められる。疾患という要因が加わることで,その困難な選好をし直すことになる。慢性疾患をもって生きる人に対して,看護はこれまでさまざまな方法でその困難性にアプローチし,有意義な結果を生み出してきた。しかし,これまでの対象の捉え方やアプローチの仕方を再考し,さらなる効果的な看護実践を生み出さなければならない時期に来ている(能美ら,2023)。
本稿では,治療の遵守状況でヘルスマネジメントの持続が最も困難になりやすいといわれる慢性疾患(特に糖尿病)をもつ人の「食事」に関する情報と,実践・評価・研究について述べていく(河口,1994;深田ら,2018;細野,2019;山本ら,2000;友竹,2020;青島ら,2025)。

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