特集 未来型デジタル健康活躍社会の到来と日本版看護診断
Ⅲ 日本版看護診断とこれからの研究の方向性
日本版看護診断「自己尊重の混乱/自尊感情の低減」に関する情報と実践・評価・研究
黒江 ゆり子
1,2
1関西看護医療大学
2岐阜県立看護大学
pp.567-570
発行日 2025年12月15日
Published Date 2025/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002283700580060567
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序
看護診断の発展の初期,看護理論家集団は看護学における人間の捉え方をユニタリーパーソン・モデルとして明解に提示した(図)。このモデルでは,人間は四次元のエネルギーの場としての1つの開放システムであり,その特性として,‘相互作用(interaction)’,‘行為(action)’,および‘心の動き(moving)’の3つを有しているとされている。この特性から人間反応パターンが導かれた。すなわち,‘相互作用’から「交換・伝達・関係」,‘行為’から「価値・選択・運動」,そして‘心の動き’から「知覚・感情・理解」の9つのパターンである。これらの人間反応パターンは,たとえば,‘行為’では,人間は人それぞれの「価値」づけをもち,その価値づけに基づき人生における多様な「選択」を行い,それが実際の「運動(身体活動)」につながるという関連性が明示されていた。このモデルを基盤に,体系的かつ真髄的な看護診断名が構築されたのである。
本稿で述べる「自己尊重/自尊感情(self-esteem)」は,‘心の動き’の「知覚」に包摂される概念である。「知覚」とは,開放システムである人間の情報の受け入れに関する反応パターンであり,自己概念(ボディイメージ,自己尊重,個人的アイデンティティ),感覚(視覚,聴覚,触覚等),および意味づけで構成される。『NANDA看護診断—定義と分類1992-1993』(北米看護協会編/松木監訳,1994)の「知覚」には,すでに,自己尊重の障害,ボディイメージの障害,絶望感,および無力感に関する定義と診断指標等が提示されている。

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