特集 【研究する人間】木下康仁先生の功績と足跡
Ⅰ.研究者として,教育者として—木下康仁先生との在りし日
Ⅰ-3 M-GTA研究会の活動
【研究する人間】と木下康仁先生
横山 登志子
1
1札幌学院大学人文学部
pp.38-41
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002283700580010038
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「実践の科学化」の研究方法としてM-GTAに出会う
私がM-GTAに出会ったのは,メンタルヘルス領域におけるソーシャルワーカーが実践経験を経てどのような援助観を醸成しているのかを明らかにする研究で,調査の方法論を広く模索しているときでした。木下先生のご著書や論文を通して,M-GTAに魅了されていったのですが,それはなぜだったのだろうと改めて考えてみました。
それは,M-GTAが単なる調査手順を連ねた調査方法論ではなく,実践と理論の往還を強く意図した,社会的相互作用としての「研究」「研究者」をとらえる認識論を基盤に持っていたことが大きかったように思います。そのうえで,【研究する人間】としての研究者の問題意識や「主観」を活用するという明快な立場性や,研究者の主観が暴走しないためのシステム化された各種の調査手順の工夫とそのわかりやすさ,合理性が十分に納得できるものでした。また,領域密着型の理論生成の実践的活用が強く意識されていたことや,スーパービジョンでのスーパーバイザーの役割を,木下先生は「良い問いを投げかける人」だとおっしゃっていたことも目からウロコでした。

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