特集 【研究する人間】木下康仁先生の功績と足跡
Ⅰ.研究者として,教育者として—木下康仁先生との在りし日
Ⅰ-4 ヘルスヒューマニティーズ
「ウェルビーイングの新たな人間学」へ—木下康仁先生の「相互回復のメカニズム」探求
井上 麻未
1
1聖路加国際大学大学院看護学研究科
pp.55-58
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002283700580010055
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木下先生とヘルスヒューマニティーズ
『ヘルスヒューマニティーズ—相互回復の実践・教育・研究』(2024)の執筆と編集が木下康仁先生の最後のお仕事であった。先生は,ヘルスヒューマニティーズとは「ウェルビーイングの新たな人間学と呼びうるような,学際的ではあるが学際性を超えた実践領域である」(木下,2024c,p.140,太字は筆者)と定義づけ,ヘルスヒューマニティーズ(Health Humanities: 以下適時HHと略記)について以下のように述べられている。
「初学者としてHHを学んでいくなかで予想していなかった気づきがあった。自身のこれまでの活動の部分と全体の統合を課題として認識しているのだが,HHを理解するにつれ,まるで吸い取り紙のように,自分が行ってきたさまざまな研究が1つのつながりとして浮上してきた。これはちょっとした驚きであった。それなりには意識していたつもりであったが,HHによってくっきりと像が浮かんできた。コアに普遍的問いをおくことによって,自身の活動に統合化が促された」(木下,2024b,p. 66)。

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