Derm.2025
皮膚腫瘍・皮膚外科における他科との境界領域
中村 貴之
1
1筑波大学医学医療系皮膚科
pp.88
発行日 2025年4月10日
Published Date 2025/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002149730790050088
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私は普段,皮膚腫瘍・皮膚外科を専門として診療しているが,他科との境界領域にかかる疾患・症例をよく経験する.尿道や腟に浸潤する乳房外Paget病や肛門周囲の有棘細胞癌,眼球に浸潤するメラノーマなどがそれに該当する.そのような疾患を経験し,他科の先生と治療方針に関して話し合うことがあるが,なかなか話が噛み合わず苦慮することが多い.例えば,Bowen病という病名は皮膚科が主に用いているが,扁平上皮癌の上皮内癌の一型であり,婦人科のVIN(vulvar intraepithelial neoplasia)という病変と同様の病変・病態と考えられるが,他科の先生に相談してもBowen病が扁平上皮癌の一型であるという認識が乏しいことが少なくない.皮膚科では有棘細胞癌(または上皮内癌であれば場合によってBowen病),婦人科では外陰癌,泌尿器科では陰茎癌という病名が主に使われているが,同じ扁平上皮癌に対して各科での病名の使い方にギャップが生じている.また,切除マージンやリンパ節の摘出に関する考え方も皮膚科と異なることがあり,実際に皮膚科で扱う有棘細胞癌とは各科のガイドラインの記載内容も異なる部分がある.これは他部位と比べた陰部の特殊性とともに各科の診療の歴史的な背景や,それを基にした価値観にも依存していると思われる.ただし,患者さんにとって好ましい治療法は科に依存しないと思われ,どのような治療法がよいかを複数の科で相談して決定すべき場合も多いのではないかと感じている.そのため,このような各科の認識,治療方針のギャップを少しでも埋めていき,患者さんにとってベストな治療法を検討したいと日々考えている.
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