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社会保険旬報 №2928
《論評》 『高齢者救急の検討1―入院経路別の分析』松田晋哉
社会保険研究所
電子版ISBN
電子版発売日 2024年5月21日
ページ数 42
判型 B5
印刷版ISSN 1343-5728
印刷版発行年月 2024年5月
書籍・雑誌概要
《論評》 『高齢者救急の検討1―入院経路別の分析』松田晋哉
社会の高齢化の進行に伴い、傷病構造が大きく変化している。そして、この傷病構造の変化は救急搬送にも大きな影響を及ぼしている。図表1は総務省消防庁の「令和3年版救急救助の現況」の第30図で示された年齢区分別搬送人員構成比率の推移である。これをみると、65歳以上の高齢者が増加傾向にあり、令和2年度では62.3%を占めるに至っている。また、その内訳をみると、75~84歳が23.9%、85歳以上が22.6%と高齢者の中でも年齢が高い群の救急搬送事例が多くなっている。
同じく「令和3年版救急救助の現況」のデータを分析した結果として、厚生労働省は令和2年度の高齢者救急329.7万件のうち、36.2%が軽症、51.1%が中等症という数字を示している。また、この結果と救急搬送の原因となった傷病を分析した結果等を踏まえて、ニーズの多い入院(後期高齢者等)については、地域包括ケアシステムを支える医療機関が対応することが提案されている。そして、この地域包括ケアシステムを支える医療機関としては、地域包括ケア病棟を有する病院が想定されていたと考えられる。
この提案については、13対1の看護配置基準である地域包括ケア病棟では、高齢者であろうと救急患者を受け入れるだけの人的余裕はないという反対意見が現場から出されている。確かに、夜間の看護師の配置がおおむね一病棟当たり2名になってしまう地域包括ケア病棟で救急対応を行うことは困難であるのが実情だろう。しかし、増加する高齢者救急のすべてを各地域の救急医療の中核機能を担っている病院が引き受けることも非現実的である。その意味でも令和6年度の診療報酬改定で導入された地域包括医療病棟の役割が重要になる。
ただし、このような新しい枠組みができたとしても、高齢者救急の増加に対応するためには、高齢者救急を医療介護の施設間、そして病院間の連携を前提に考えていくことが現実的であると筆者は考えている。
本稿を含めた3つの論考で、その理由についてデータ分析の結果をもとに説明してみたい。
目次
《視点》 高齢化分に加え物価・賃金上昇分が必要
《座標》 出産費用の保険適用へ検討会設置/国立大学病院の4割が赤字に
《座標》 日本医学会連合が遠隔医療で提言/政策決定へデータ・統計の整備求める
《論評》 『高齢者救急の検討1―入院経路別の分析』松田晋哉
《レコーダ》 『日本健康会議がフォーラム マイナ保険証利用促進へ 医療機関や保険者が宣言』
《特別レポート》 『「病院経営分析のリアル」~初めてのデータ活用でここまでできた ある医事課長の奮闘記~前編』
《全世代型社会保障への道筋》 『子ども・子育て支援の財源論』山﨑泰彦
《随想―視診・聴診》 『働き方改革も』高山哲夫
《潮流》 認知症患者は2040年に584万人
《潮流》 ヘルスケア産業PFがシンポ
《潮流》 選定療養適用の長期品リストを発表
《潮流》 6年度前期納付金等決定額を発表
《潮流》 特定健診・保健指導実施率は向上
《潮流》 2033年の世帯人員は平均1.99人
《NEWS》 日医会長が出産費用の保険適用の検討会設置で見解 ほか
《BOOK REVIEW》 『戦後の社会福祉論争』
《資料》 厚労省がマイナ保険証の利用促進へ取組み強化
《経済スコープ》
《編集室 ワードカプセル》 『日本医学会連合』