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雑誌
ピアジェ・思考の誕生
ニューロサイエンスと哲学から読み直すリハビリテーションの新しい地平
協同医書出版社
電子版ISBN 978-4-7639-9579-7
電子版発売日 2025年12月1日
ページ数 568
判型 A5
印刷版ISBN 978-4-7639-1098-1
印刷版発行年月 2025年10月
書籍・雑誌概要
リハビリテーション界のトップランナーが5年ぶりに世に送る、渾身の書き下ろし!
ピアジェの理論を核にして、ニューロサイエンスと哲学の諸成果を織り込むことによってリハビリテーション理論の新たな姿を描き出す。
本書はジャン・ピアジェによる歴史的な心理学理論である「発生的認識論」を縦糸として、そこにニューロサイエンスと哲学の諸成果を織り込み、その共鳴を探究することによって、リハビリテーションの原理を新たな姿で浮かび上がらせようとする野心的な試みです。
その根幹となるのは、ピアジェによる「人間性」の理解、とりわけその知能の誕生と発達に関わる思考方法です。彼の残した仕事は、人間の発達過程を理解する際の理論として、今もなおいっそうその礎石とも言える価値をもっており、だからこそ、現代のニューロサイエンスや哲学の諸成果との整合性を丁寧に探りつつ、それを土台にして「回復の科学」としての新しいリハビリテーションのビジョンを描き出す探究を可能にしてくれます。
ピアジェによれば発達の本質とは、「思考と行為の質的に異なるシステムによって特徴づけられる一連の段階に沿って進行する。これはある段階から次の段階への移行は、子どもがより何かができるということだけを意味するのではなく、物事を異なったやり方でするということ」です。
ここで「ある段階から次の段階への移行」として指摘されている過程とは、まさに現代のシステム理論や、生きる環境との豊かな相互作用によって統合的に確立していく存在としての人間理解という視点から捉え直されつつあるリハビリテーションへの新たな意義とその必要性の再認識を私たちに迫る、きわめて現代的な問いかけなのです。
発達の障害を抱える子どもに教育者・支援者として向き合う人々はもちろんのこと、成人における脳損傷リハビリテーションに治療者として向き合う人々、そしてそうした人々の日々の努力によって確立していくこの国のリハビリテーションの未来のために、ピアジェ理論のさらなる理解とその活用は大きな意義をもっているのです。
目次
【序章】ピアジェの「運動性知能」という現代性
1 この本を書くにあたって
2 ジャン・ピアジェの生涯(1896~1980)
3 発生的認識論とリハビリテーション
4 発生的認識論の基盤
①概念の構築
②スキーマの形成
③同化、調節、そして均衡化
5 発達における4つの段階
6 現代的視点から捉えるピアジェの理論とその補完
①神経可塑性と社会文化的アプローチ -ピアジェの理論の限界-
②ピアジェの理論と認識論の融合
③段階説の再検討 -連続性・個人差、そしてニューロサイエンスの知見-
参考文献
【第1章】「ピアジェの発達段階1 感覚運動期」を読み直す
1 感覚運動期とは
2 6つのサブステージの概略
①原始反射(0~1か月)
②第一次循環反応(1~4か月)
③第二次循環反応(4~8か月)
④手段と目的の結合(8~12か月)
⑤第三次循環反応(12~18か月)
⑥スキーマの内面化(18~24か月)
3 認知発達の起源としての原始反射
4 第一次循環反応 -能動的探索の始まり-
5 第二次循環反応 -物と身体の関係づけ-
6 手段と目的の結合 -知性の黎明-
7 第三次循環反応 -子どもは研究者-
8 スキーマの内面化 -表象的思考の芽生え-
参考文献
【第2章】「ピアジェの発達段階2 前操作期」を読み直す
1 前操作期とは
2 表象と思考
①行為的表象
②視覚的表象
③象徴的表象
3 言語能力の発達
①語彙の増加と文法的マーカーの萌芽
②過剰般化のプロセス
③概念の理解と語彙の精緻化
4 直感的思考の特徴
①実念論
②アニミズム
③人工論
5 中心化と自己中心性
①見かけに惑わされる思考
②自己中心性
参考文献
【第3章】「ピアジェの発達段階3 具体的操作期」を読み直す
1 具体的操作期とは
2 洗練された言語の獲得
①能記と所記
②刺激等価性
③因果関係への言語の利用
④外言から内言へ
3 可逆性の理解と物語の形成
4 保存や数の概念の理解
5 脱中心化に伴う道徳的発達の進化
①他者視点取得と心の理論
②感情的共感と論理的思考の接合
③道徳発達と規則の理解
参考文献
【第4章】「ピアジェの発達段階4 形式的操作期」を読み直す
1 形式的操作期とは
2 物事の抽象化システム
3 仮説演繹的思考の形成
4 命題的思考と論理的操作の洗練化
5 物語的自己同一性と反省的自己意識
6 意思決定と自己効力感
7 メタ認知と三元ニッチ構築
8 倫理的思考と宗教的思想
参考文献
【終章】人間復権としてのリハビリテーション -発達理論と現代科学と哲学の統合的視座から-
1 現代のリハビリテーションの課題と限界
2 ピアジェの発達理論とリハビリテーション -認知構造の再構築と適応-
3 ピアジェの理論と現代科学の融合から脳卒中リハビリテーションを考える
①脳卒中後の回復過程における理論的枠組み
②リハビリテーションにおける「自己制御」の再構築
③身体化された認知と生成のプロセス
④統合的解釈 -リハビリテーション・モデルの構築-
4 ピアジェの発達理論に基づく脳卒中リハビリテーションの体系的展開
①「感覚運動期」-新たな自己の創造に向けた感覚と運動の統合-
②「前操作期」-象徴的思考と社会的認知の再編成-
③「具体的操作期」-論理的思考と柔軟な戦略の再構築-
④「形式的操作期」-自己の再獲得と超越、リハビリテーションの究極形態-
5 身体的自己と物語的自己の統合と再構築 -哲学的見解との融合-
6 新しい自己生成のためのフレームワーク
①生きたプロセスとしての発達 -ピアジェの理論の再解釈-
②動的なサイバネティクス -フィードバックから予測と創発へ-
③リハビリテーションの進化 -動作から生き方へ-
④多層的支援システムの必要性
⑤主観と客観の統合による評価システムの設計
⑥包括的リハビリテーション・モデルと未来のフレームワーク
7 臨床評価 -リハビリテーションにおける観察と記述の重要性-
①従来の機能評価の再考
②現象学的アプローチの導入
③身体的自己と物語的自己の統合評価
④エナクティブ・アプローチの導入
⑤社会的役割の再獲得に対する評価
⑥倫理的配慮と対話的プロセス
⑦長期的・生態学的評価の重要性
⑧統合的評価におけるピアジェの観察連続性の応用
8 リハビリテーションにおける自由、理性、活動能力 -スピノザとピアジェの統合的視点-
①自由の実現と自己保存
②感情の隷属から自由へ
③認識と自由 -明瞭判断と部分的な認識-
④活動能力の増大と理性の役割
⑤自由へのリハビリテーション
9 倫理的リハビリテーションの地平
①機械論的還元主義の超克と「生きられた身体」の再構築
②機能回復を超えて -環世界再構築の視点-
③患者の尊厳と自己決定権
④純粋客観性を超えて -個別性と相互作用を考慮した科学-
⑤リハビリテーションにおける倫理的責任 -応答する顔-
⑥社会的再統合と構造化理論 -個と社会の相互生成-
⑦「間(あいだ)」に生まれる自己 -リハビリテーションにおける物語的再構築-
⑧神経現象学と暗黙知 -前反省的自己の回復-
⑨リハビリテーションにおける命題的思考の役割
⑩解釈学的循環と新たな自己理解
⑪倫理的なリハビリテーションの新たな地平
10 未来への展望と課題、そして提言
①技術革新とリハビリテーションの融合
②ニューロサイエンスの進歩がもたらす新たな知見の統合
③中動態的自由と協働による多層的リハビリテーション
④改めて臨床知とは -生きた知識の生成-
⑤リハビリテーション教育・研究の新たな方向性
⑥東洋思想に基づく自己再構築の視点
⑦存在と変容の道筋
⑧人間復権としてのリハビリテーションの再定義
参考文献

