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ナニコレ?痛み×構造構成主義
痛みの原理と治療を哲学の力で解き明かす
筆頭著者 阿部 泰之 (著)
旭川医科大学病院
南江堂
電子版ISBN 978-4-524-25582-5
電子版発売日 2017年2月13日
ページ数 162
判型 A5
印刷版ISBN 978-4-524-26587-9
印刷版発行年月 2016年6月
書籍・雑誌概要
“構造構成主義”という哲学から痛みを捉えようとする新たな試みの書.構造構成主義を用いて理論的に痛みを解説し,さらに,理論を臨床に役立たせる実例も併せて提示.親しみやすいイラストで,痛みを“哲学”することをやさしく解説した.痛みを診るすべての医療者はもちろん,痛みを理解したい一般の方へもおすすめの一冊.
目次
【内容目次】
はじめに(序章)
本書の構成
本書の読み方
1章 痛みをめぐる様々な問題
痛みとは何か
痛みとルネ・デカルト
痛みとルードヴィヒ・ウィトゲンシュタイン
現代において痛みとは何か
人が医療を求める一番の理由は“痛み”
生物学的な視点から離れてみる
現代医療では痛みは二の次?
患者の期待を裏切る現代医療の枠組み
困らない痛みと困る痛みがある
いったい何が問題なのか
痛みは科学的視点だけではよくできない
人間はいつから痛みを「科学的」に捉え始めたのか~デカルトから読み解く
「科学的」な視点で扱えるのは機械論的身体のみである
痛みとは何か,それを“どう”考えたらよいか
どうして哲学なのか
2章 構造化に至る軌跡の提示としての自己開示:志向相関的自己開示
自己開示をすることの重要性
構造化に至る軌跡とは
人間の意味や価値を研究する場合には条件開示が重要になる
志向相関的自己開示
志向相関的自己開示-痛みの理解と対応の遍歴
3章 構造構成主義とは何か
構造構成主義とは何か
量的研究と質的研究の対立
量的研究の背景は(論理)実証主義
質的研究の背景は(社会)構築主義
構造構成主義は違う世界観,世界認識を持つもの同士がわかり合うための理論
構造構成主義は多元論
原理とは
構造構成主義の中核原理を理解しよう
中核原理を理解する:(1)現象~立ち現れたすべてのもの
中核原理を理解する:(2)志向相関性~受け取り方が変わると世界が変わる
中核原理を理解する:(3)契機(相関性)~志向が生まれ,変わる「きっかけ」
中核原理を理解する:(4)構造~契機志向相関的に構成され続けるもの
その他の原理
(5)戦略的ニヒリズム~あえてニヒルからスタートする
そもそもニヒリズムとは
あえてニヒルから始める
構造構成主義における戦略的ニヒリズム
(6)方法の原理~方法のよさは状況と目的によって決まる
(7)問い方のマジック~どちらが正しいかという問いにはリスクがある
4章 構造構成的痛み論
国際疼痛学会「痛みの定義」にみる限界
画期的な痛みの定義―国際疼痛学会
国際疼痛学会が痛みに対する(論理)実証主義的視点を強めた?
スローガンだけでは現場は変わらない
新しい痛みの定義とその意義
痛みとして立ち現れたすべては痛みである
痛みとは構造である
理論の賞味期限?~賞味期限の長い理論をベースに,賞味期限の短い理論を使い分ける
慢性的に続く痛み≠慢性痛症
5章 痛みという構造理解のための切り口(志向性)
ここでいう“切り口”とは
痛みに関する様々な切り口
客観的実在としての“感覚”
痛みと抑うつ
オペラント学習
アレキシサイミア
転換性ヒステリー(転換性障害)
認知の歪み
痛がりの遺伝子
痛みの感じ方=閾値
痛みを引き起こす社会背景
痛みの“意味”
愛は痛い人を救う?
6章 治療論に入る前に―「他者承認の原理」を知る
治療論に入る前に
原理を実践に落とし込むための乗り越えるべき壁
「信じる」こと,「覚える」ことの不安定さ
人間関係の原理としての他者承認
他者とは何か~フッサールとレヴィナスの「他者論」より
他者承認の原理~他者からの応答により他者が生起する
対人援助の原理としての他者承認
援助する者とされる者との不均衡さを認めよう
ある医学生との対話から~他者承認の原理を身につけるには
ユマニチュード~臨床における他者承認の具体的な現れ
7章 原理を実践に活かす-構造構成的慢性痛症治療
志向を捉えて“よき”構造を構成する
痛みの意味づけを変えるということ~中村さんの例より
構造(痛み)に働いている志向(背景,意味づけ)を探る
痛みの意味づけを変えていく
構造をなくしてしまうのではなく,構造を望ましいものに構成しなおす
治療関係の“形”をつくる
形(1)「まな板の上の鯉」スタイル
形(2)「いっしょに痛みをやっつけよう」スタイル
形(3)「私はあなたのガイド」スタイル
鍼灸治療は「ガイド」スタイル?
診断名をつけない!?
診断名=名づけをしない
名づけは恣意的である
診断名は思考をしばる
構造を意識させる~どんな言葉を投げかけるか
「痛みの悪循環を断つ」
「痛みの記憶(記憶としての痛み)」
「現に痛みはある」
「梅干しを想像してみて」
「うまくやれていますね」
契機としての薬物療法
薬物療法は契機である
以前効かなくても,今なら効くことがある
対病名ではない薬剤選択
薬剤をいつやめるか~オピオイドを例として
薬物療法はバランスゲーム
構造構成的慢性痛症治療の実践例
nihilistic painの解明~これからの展望として
現代人のニヒリズム
痛みの臨床で見られるニヒルさ~nihilistic pain
これからの展望~ニヒルさの緩和の効能は医療に限らない
あとがき
謝辞