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大人のトラウマを診るということ
こころの病の背景にある傷みに気づく
筆頭著者 青木 省三 (他編)
その他の著者等 村上 伸治/鷲田 健二
医学書院
電子版ISBN 978-4-260-64577-5
電子版発売日 2021年2月15日
ページ数 230
判型 A5
印刷版ISBN 978-4-260-04577-3
印刷版発行年月 2021年1月
書籍・雑誌概要
幼少期の虐待やいじめの経験など、精神科患者はトラウマを抱えているケースが多い。本書はそんなトラウマへの気づき方や対応のコツなどを解説する一冊。精神科医が日常の外来で遭遇するような症例を取り上げながら、明日の臨床から参考にできるコツを披露する。発達障害とトラウマの関係についても詳述しており、まさに今日の精神科臨床で必要とされる知識が盛り込まれた内容となっている。
目次
第1章 大人の精神科臨床におけるトラウマの診かた・考えかた
トラウマがあるのではないかと常に心がける
日常臨床においてトラウマに気づく
1)不眠症
2)不安症
3)気分障害
4)統合失調症
5)行動変化
6)マイルドな解離
7)敏感さの精度
8)記憶の精度
9)社会の変化がトラウマを活性化させる――時には,社会や時代への警鐘となる
10)どんなときにトラウマを疑うか
トラウマ反応とは
1)トラウマとなる出来事とは
2)トラウマ反応を起こしやすくする要素
3)PTSDと複雑性PTSD
4)発症にいたる経過
トラウマをどのように診るか
1)従来の精神症状の背景にトラウマ関連症状が潜んでいないか
2)反応性の状態ではないか――何か恐いことがあったのではないかと考えてみる
3)発達障害の特性は認められないか
治療と支援をどのように考えるか
1)治療や支援によるトラウマをできる限り作らない
2)「保存的」「支持的」アプローチを基本とする
3)まず求められていること
4)トラウマを話すかどうか
5)安全で安心な関係・環境を提供する――穏やかな,平和な雰囲気が大切となる
6)生活を支援する
トラウマ反応の経過・予後
1)治療や支援に対する反応
2)トラウマ反応は環境の影響を受けて変化する
3)トラウマの治癒とは
おわりに――治療者・治療スタッフのトラウマ
第2章 症例集
1 非定型うつ病として復職デイケアに紹介された30代男性 非定型うつ病? 未熟パーソナリティ?
2 何事も自分を苦しめるほうに進んでしまう20代女性 苦しいのは当たり前
3 飲酒がやめられない50代男性 男としてのプライド
4 作業所に行けなくなった30代女性 相談するのは怖い
5 兄の暴力がフラッシュバックしていた30代男性 仕事を休む理由
6 夫の浮気を知ってしまった30代女性 止まったままの時間
7 長年不眠に悩まされている60代男性 眠れない,起きられない
8 育児への不安を訴える30代後半の女性 産後のうつ病?
9 アルツハイマー型認知症と診断された80代女性 認知症と虐待
10 入院を拒否し治療中断となった40代女性 パーソナリティ障害とトラウマ
11 退院すると過食・嘔吐になる30代女性 非定型な摂食障害
12 10か所以上の病院から処方を受けていた40代女性 処方薬使用障害とトラウマ
13 非現実的な体験を訴える30代男性 虐待か妄想か
14 生きている価値がないと思い込んでいた50代女性 「醜い」と言ってくるお稲荷様
15 長引く抑うつ症状に苦しんでいた30代女性 10年後の告白
16 自責の念に苦しむ40代男性 妻の死
17 離人症状・解離症状のある20代女性 なんで涙が止まらないんだろう
18 昔遭遇した口論が忘れられない30代女性 一難去って……
19 過食・嘔吐を繰り返していた20代女性 思春期の記憶はない
20 子どもの自死の後に精神症状が出現した70代女性 孤立の背後にトラウマあり
21 恐怖心と愛着のジレンマに葛藤する50代女性 息子の暴力
22 家庭内での暴力を繰り返していた自閉スペクトラム症の30代女性 粘ることが大事
23 入退院を繰り返す「治療抵抗性統合失調症」の20代女性 回転ドア現象
24 「近所の人たちが怖い」と語る50代女性 一緒に歩む支援
25 対人緊張・対人不安の強い20代男性 引きこもりとトラウマ
26 避難所・仮設住宅での生活を余儀なくされた50代女性 被災体験
27 ギャンブルで浪費してしまう20代男性 叱られては離職
28 閉鎖病棟への入院を希望した30代女性 この子は私の妹
29 小学生の頃から希死念慮のある40代女性 安楽死はできますか?
30 離婚後もDVの恐怖に苛まれる30代女性 前夫からの荷物
第3章 精神科日常診療におけるトラウマへの精神療法
広い意味でのトラウマ
ふとした症状
まずは心理教育
トラウマの延焼を防ぐ
意味付けの修正
純粋な自閉スペクトラム症
ASDのない場合も同じ
おわりに
第4章 トラウマを抱える人たちへの生活支援
これからの生活支援に求められるもの
トラウマを抱える人たちへの生活支援の難しさ
公的支援を受け入れるということ
相談するということや,支援を受け入れるということが難しい
訪問がトラウマを理解するヒントを与えてくれることがある
就労支援,そして働くということ
トラウマを話すこと,聞くことの副作用について考える
作業療法が安心と安全を再び体験するきっかけになることがある
支援者や治療者の支援を考える
生活を支援する
あとがき
索引