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「身体拘束最小化」を実現した松沢病院の方法とプロセスを全公開
筆頭著者 東京都立松沢病院 (編)
医学書院
電子版ISBN 978-4-260-64355-9
電子版発売日 2020年12月7日
ページ数 192
判型 B5
印刷版ISBN 978-4-260-04355-7
印刷版発行年月 2020年11月
書籍・雑誌概要
身体拘束を何十年も当たり前に行ってきた松沢病院だったが、「縛らない病院」へと方針を大転換。そこから実際に現場が変わるまでのプロセスを解説する。変わっていく現場を生で体験したスタッフたちの「裏話座談会」も収録。「こんな時はこうして解決した」という具体的な考え方・写真・テクニックは、これから身体拘束を減らしていこうとするあらゆる組織にとって参考になる。
目次
はじめに 松沢病院の変遷を、世に公開することの意義
1章 日本の身体拘束の現状と、松沢病院の改革
1 そもそも身体拘束の定義にグレーゾーンがあるために生じている問題があります
2 何が「身体拘束」? 自分の施設の基準を決めよう
3 松沢病院では身体拘束をこのように定義しました
4 過酷な条件下でも身体拘束最小化はできることを示していく。
それが松沢の使命
5 はじめの一歩。認知症病棟では何をしたのか
6 乗り越えるべき3つの壁がありました
取り組み裏話① 管理者の立場で語る、認知症病棟で
拘束ゼロに取り組み始めた当初のこと
2章 松沢病院が身体拘束最小化を実現した25の方法
はじまりのはじまり
それは新院長・新看護部長の方針表明から始まった
ここから25の方法を紹介します
方法01 行動制限のデータを数値化し、公表し、可視化する
方法02 身体拘束を明確に定義し、グレーゾーンを作らないようにする
方法03 “支えるリスクマネジメント”に切り替え、医療安全委員会と連携する
方法04 いざという時は管理者が「責任を負う」ことを明言する
方法05 データ集計の単位を変更。変化がわかりやすいようにする
方法06 身体拘束を「する」ことの弊害に意識が向くように情報を伝える
方法07 家族に「当院はできる限り身体拘束を行いません。
それによる転倒のリスクがあります」と説明し、
納得を得てから入院してもらう
方法08 職員教育で、患者さんの目線に立った研修を開催する
方法09 指示を出す医師との意識のギャップをなくし、協働する
方法10 行動制限最小化委員会が、現場で解除を推進する
方法11 代替手段を提案、導入し、ケアの引き出しを増やす
方法12 身体拘束を解除する目的で多職種カンファレンスを毎日開く
方法13 記録に無駄な時間をかけず、患者さんのそばに行く時間を増やす
方法14 救急・急性期病棟 入院時に鎮静・身体拘束ではなく、会話をする
方法15 慢性期病棟 重症化の前に自らの意思で「休息入院」を選択してもらう
方法16 慢性期病棟 問題行動ではなく「困っているサイン」と捉える
方法17 認知症病棟 QOLから考え、身体拘束せずにできる治療へと、工夫を極める
方法18 身体合併症病棟 身体治療においても精神科医が早期に介入する
方法19 終末期医療 死は負けではない。治療は、本人・家族・医療者の考えを
すり合わせてから
不安や気持ちの壁をどう乗り越えるか
方法20 まずは1人からやってみて小さな成功体験を積み重ねる
方法21 最小化できない理由を探さない
方法22 「手間暇はかかるもの」と腹をくくる
方法23 患者さんに対して抱いている「不安」「恐怖」「偏見」を自覚する
方法24 「最小化」を目標にするのではなく、あくまで
「患者さんのQOLの向上」を目指す
方法25 悩み続ける姿勢、あきらめない姿勢でいく
一緒に進んでいきましょう
3章 こんな工夫と考え方で身体拘束を外せた15の事例
事例01 長期入院中の統合失調症の男性。
問題行動、興奮、転倒の心配から、長期間拘束が外せなかった事例
事例02 統合失調症、ステロイド性精神障害の50代女性。
ベッドから転落しようとする衝動行為が止まらず、
拘束が長期化していた事例
事例03 長期入院中の統合失調症の60代女性。
危険行為、迷惑行為、転倒リスクから、
長期間拘束が外せなかった事例
事例04 パーソナリティ障害を持つ長期入院中の50代女性。
「自傷?拘束」の繰り返しでスタッフが疲弊しきっていた事例
取り組み裏話② 認知症病棟が本当の意味で「身体拘束なし」を
実現するまでの経緯
事例05 認知症の70代女性。
他の患者さんの経鼻チューブを抜く危険な行動があるが、
それでも行動制限せず歩いてもらった事例
事例06 BPSDの改善目的で転院してきた認知症の70代男性。
前院で拘束や制限の多い環境に置かれ、暴力的になっていた事例
事例07 BPSDの改善目的で入院してきた80代の認知症男性。
転倒リスクが高いが、被害妄想が強いため
近づくことを許さない事例
認知症の患者さんの周辺環境を、安全に心地良く整えるためにできる工夫
取り組み裏話③ ルート類が入っていることが多い身体合併症病棟で
身体拘束を早く外すために
事例08 アルコール依存症の50代男性。
中心静脈栄養(CV)が挿入されたが、
状態の改善に伴い自己抜去のリスクが高まった事例
事例09 がん末期で転院してきた40代男性。
ルート自己抜去、せん妄など、リスクが重なっていた事例
事例10 認知症が進行した70代女性。
ミトンを外す時間を長くしたいが、
経鼻チューブを自己抜去されるジレンマがあった事例
事例11 認知症の80代男性。
前院で食事摂取は困難と判断され、経管栄養に。
自己抜去防止のために拘束され、衰弱した状態で転院してきた事例
事例12 緊急措置入院のアルツハイマー型認知症の60代男性。
拘束具により2日目に圧迫創傷が生じた事例
取り組み裏話④ 救急外来・急性期病棟で身体拘束なしに大転換できた理由
事例13 警察依頼で搬送されてきた、統合失調症の40代女性。
意思疎通が困難で、落ち着きがなかった事例
事例14 統合失調症の50代女性。
緊急措置入院で、点滴が入ったまま保護室へ。
目覚めた時に点滴台でケガをするリスクがあった事例
事例15 双極性感情障害の40代女性。
躁状態で暴言・暴力があり、保護室に隔離。
激しく拒薬している事例
おわりに
身体拘束最小化がもたらしたもの
column 一覧
[1]医療観察法病棟には身体拘束具を置かなかった
[2]当初の混乱を経て、「いかに身体拘束を回避するか」に焦点が移るまで
[3]一律から個別へ。とにかく会話を始めた
[4]措置入院でも身体拘束が減り、「やわらかな治療」へ
[5]方針が出た時には想像もつかなかった景色が目の前にあった
[6]認知症病棟にならい、精神科救急病棟でも
「身体拘束をしない同意書」を導入
[7]内科医が考える身体合併症治療と身体拘束
[8]精神科医が考える身体合併症治療と身体拘束
[9]一度医療を始めてしまったら後戻りはできない。だから入口が大事なのだ