循環器ジャーナル 73巻1号 (2025年1月発行)

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特集　急性冠症候群（ACS）から心臓と生命をまもる

Editorial 中川　義久 73巻1号 , 2025年1月 , pp.4-5

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　急性冠症候群（ACS）は，急性心筋虚血に由来する臨床病態を指し，ST上昇型心筋梗塞（STEMI），非ST上昇型心筋梗塞（NSTEMI），不安定狭心症（UA）が含まれる．ACSの中でもSTEMIは死亡率が高く，世界的には人類の死因の第一位の急性疾患である．夜間・休日を問わず治療にあたる日本の循環器内科医の献身的な努力にもかかわらず，残念ながら現在もなおACSで命を落とす患者が存在する．その多くは発症後短時間の死亡であり，改善が強く望まれる．

　ACSが疑われる場合，最初のトリアージと評価が重要である．患者の病歴と身体所見，心電図，X線検査や画像診断，心臓バイオマーカー検査を迅速かつ十分に評価することが正確な診断を可能にし，治療の指針となる早期のリスク層別化を助ける．初期評価に基づいて，早急な侵襲的治療が必要かどうかを決定する．STEMI患者には速やかに冠動脈インターベンション（PCI）が必要である．

Ⅰ. ACSの疫学と病態

ACSの病理大塚　文之 73巻1号 , 2025年1月 , pp.6-14

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POINT

●冠動脈血栓症の主な成因はプラーク破裂であり，プラークびらんや石灰化結節も成因となり得る．

●ステント血栓症のメカニズムは多様であり，ステントの種類や留置期間によっても異なる．

ACSの疫学澤山　裕一 73巻1号 , 2025年1月 , pp.15-19

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●本邦におけるAMI発症率は10万人当たり50〜60人程度と推測される．

●AMI発症率は人種により大きく異なり，欧米では日本の約4倍高い．

●AMIの定義や対象者の抽出方法が研究間で異なっていることには注意を要する．

Ⅱ. ACSの診断

ACSの実践的な診断過程髙林　健介 73巻1号 , 2025年1月 , pp.21-27

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POINT

●再灌流療法の適応があるかをいち早く決定することが目的である．

●一つの所見だけでなく，多角的な所見を組み合わせて診断する．

●診断過程において血行動態の安定化や合併症，リスクの評価も重要である．

ACS診断における心電図所見の意義宮本　和享 73巻1号 , 2025年1月 , pp.29-37

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POINT

●ST上昇と非ST上昇では緊急性が異なる．

●心電図所見から，いつSTE-ACSを発症したのか類推できる．

●鑑別診断として，ST上昇を来すACS以外の疾患について理解しておく．

ACSのプレホスピタル診断藤田　英雄 73巻1号 , 2025年1月 , pp.38-46

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●STEMIにおいて虚血時間短縮は予後改善に重要である．

●全虚血時間短縮のために，プレホスピタル（病院前）心電図の有用性は確立している．

●わが国でも，徐々にプレホスピタル心電図伝送を行う医療圏が増加している．

●救急隊員を対象とした心電図の教育プログラムが策定され実施されている．

●心電図伝送を軸とした循環器救急医療体制が各医療圏で策定されることが期待される．

Ⅲ. ACSの画像診断

ACSの発症予測小山　幸平 73巻1号 , 2025年1月 , pp.48-53

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POINT

●血管内画像診断は破綻リスクの高いプラークの同定が可能である．

●NIRS-IVUSは，血管壁の脂質を客観的に定量評価することが可能である．

●不安定プラークの存在に対しての介入方法については，さらなる検討が必要である．

ACS診断における心エコーの意義天野　雅史 73巻1号 , 2025年1月 , pp.54-62

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POINT

●ACS症例において心エコー図検査を施行する意義は，虚血カスケードを理解できるとよくわかる．

●ACS診断では，心エコー図検査により冠動脈支配に一致した壁運動低下を確認する必要がある．

●胸痛症状を呈する急性大動脈解離・急性血栓肺塞栓症・タコツボ型心筋症を鑑別するために，心エコー図検査を施行することは有用である．

●ACSの急性期合併症はしばしば致死的であり，カテーテルか手術治療の選択に関わるため，ACS診断時には必ず合併症の有無を評価する必要がある．

ACS診断における核医学検査の意義松尾　仁司 , 中川　正康 73巻1号 , 2025年1月 , pp.63-71

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●急性冠症候群では，冠動脈内プラーク破綻，血管攣縮などに起因する血流の低下が生じる結果，リスクエリア内の血流異常，心機能低下，脂肪酸代謝異常，交感神経機能異常，心筋壊死を引き起こすことが知られている．

●心臓核医学はこれらの心筋の状態（血流異常，心機能，脂肪酸代謝，交感神経機能異常，梗塞心筋）を画像化することが可能であり，病態への詳細なアプローチが可能である．

●また非梗塞責任血管の虚血診断，退院後のリスク診断にも使用可能である．

Ⅳ. ACSの急性期治療

STEMIでの冠血行再建浅田　紘平 73巻1号 , 2025年1月 , pp.72-77

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●STEMIの再灌流療法は，できる限り迅速なprimary PCIが第一選択である．

●primary PCIにおいて，TIMI 3を獲得することが最優先であり，待機的なPCIとは治療戦略の考え方が違うことを認識する必要がある．

●心原性ショックを合併したSTEMIは，現代でも予後不良であるが，適切な機械的循環補助を使用し，primary PCIによる血行再建を行うことで，予後改善につながる可能性がある．

NSTEMIでの冠血行再建河合　健志 , 石原　正治 73巻1号 , 2025年1月 , pp.78-86

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POINT

●NSTEMIの病態は多彩であるため，その治療戦略はリスク層別化に基づいて決定される．

●NSTEMIの治療はリスク層別化に準じた即時，早期，中期，晩期の侵襲的戦略が原則となる．

●多枝病変を合併したNSTEMIに対する血行再建に関するエビデンスが近年報告されている．

Speedy PCIの重要性川上　栞里 , 高橋　玲比古 73巻1号 , 2025年1月 , pp.87-93

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●Speedy PCIとは，単一のカテーテルでPCIの手技時間の短縮を図ることである．

●シースレスガイディングシステムを使用することにより，さらなる短縮が可能である．

●遠位橈骨動脈アプローチはSpeedy PCIの効果を高める可能性がある．

血栓性病変への対応齋藤　佑一 73巻1号 , 2025年1月 , pp.94-100

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●血栓性病変のPCIはしばしば難渋する一方で，その治療方法は確立していない．

●血栓性病変におけるprimary PCIでは，良好な冠血流を得ることを目標とする．

●抗血栓療法や血栓吸引療法をはじめとする治療オプションを理解する必要がある．

石灰化病変への対応陣内　博行 73巻1号 , 2025年1月 , pp.101-108

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●石灰化病変を責任病変とした急性冠症候群は予後不良である．

●血管内イメージングを用いることが重要である．

●石灰化病変への経皮的冠動脈形成術は十分配慮する必要がある．

STEMI機械的合併症における心臓血管外科治療の意義髙島　範之 , 鈴木　友彰 73巻1号 , 2025年1月 , pp.109-114

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●急性心筋梗塞後の機械的合併症は，再灌流療法の発達によりかなり減少した．

●外科手術が救命のための最後の手段であるが，術後の院内死亡率はいまだに高い．

●成績向上のためには，外科・内科でハートチームを形成することが最も重要である．

Ⅴ. ACSの慢性期治療

ACSの2次予防におけるOMTの意義宮内　克己 73巻1号 , 2025年1月 , pp.115-126

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POINT

●至適内科治療により，生命予後を含めた予後は改善する．具体的には，血圧，LDL-C，血糖管理にあり，基本は生活習慣の改善（禁煙，歩行運動，飽和脂肪酸制限）である．

●治療の達成目標値は，血圧130/80 mmHg，LDL-C 70 mg/dl，HbA1c 7〜8%である．降圧薬に関する指定はないが，LDL-C低下はスタチンは不動，血糖降下薬は冠動脈疾患患者ではSGLT2阻害薬，GLP-1受容体作動薬の推奨度が上昇している．

●そのうえで薬物治療として，治療目標の達成にかかわらずアスピリンと高強度スタチンが基本治療薬として必須である．冠動脈疾患において，血行再建の有無にかかわらず至適内科治療は基本中の基本である．

2次予防における脂質管理多田　隼人 , 高村　雅之 73巻1号 , 2025年1月 , pp.127-135

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POINT

●ACS症例においては家族性高コレステロール血症のスクリーニングが必須である．

●ACS症例に対する積極的LDL-C低下療法実践がいまだ不十分である．

●残余リスクとしてのトリグリセライド（アポB）およびLp（a）のケアが必要である．

心不全合併ACS患者における薬物治療今村　輝彦 73巻1号 , 2025年1月 , pp.136-142

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POINT

●ACS患者にはしばしば心不全が合併し，慢性化する．

●ACS合併慢性心不全に対して，各種心不全治療薬を組み合わせて治療する．

●心不全に対する治療は，腎臓などとの臓器連関を睨みながら行う必要がある．

Ⅵ. ACSの補助的治療

心臓リハビリテーション谷口　良司 73巻1号 , 2025年1月 , pp.144-151

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POINT

●包括的な心臓リハビリテーションはガイドラインで推奨されている．

●にもかかわらず，その参加率は低いため，工夫や改善が必要である．

●時期に応じ目的をもって，生涯心臓リハビリテーションを行うことは重要である．

重症心不全への補助循環岩永　光史 73巻1号 , 2025年1月 , pp.152-163

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POINT

●植込型補助人工心臓は性能向上により生命予後が改善し，DTの開始で適応も拡大している．

●心原性ショックでは「ショックの治療フェーズ」を意識しながら治療にあたる．

●植込型補助人工心臓が検討される場合，他臓器保護を最優先に治療し，早期からVAD実施施設との連携を図る．

SHD患者におけるACS治療阿佐美　匡彦 73巻1号 , 2025年1月 , pp.165-172

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POINT

●TAVI後のACSはカニュレーションが難しく，PCIの失敗も多いため死亡率が高い．

●TAVI患者のPCIでは，en-face viewとperpendicular viewがエンゲージに有用である．

●STEMIでなければ，PCI前にCTを撮像することでTAVI後のPCIの手助けになる．

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目次 73巻1号 , 2025年1月 , pp.2-3

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バックナンバーのご案内 73巻1号 , 2025年1月 , pp.174

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奥付 73巻1号 , 2025年1月 , pp.176

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電子版ISSN：2432-3292 印刷版ISSN：2432-3284 医学書院

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