呼吸器ジャーナル 71巻1号 (2023年2月発行)

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特集　エキスパートに学ぶ—肺癌診療悩ましいシチュエーションへの解決策

序文

エキスパートに学ぶ—肺癌診療悩ましいシチュエーションへの解決策虎澤　匡洋 , 後藤　悌 , 宿谷　威仁 71巻1号 , 2023年2月 , pp.4-5

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　肺癌の診断と治療はここ数年で飛躍的な進歩を遂げ，治療選択が複雑化してきている．ドライバー遺伝子変異とそれに対応する分子標的治療薬の発見は進行・再発非小細胞肺癌患者の予後を飛躍的に改善した．10年くらい前までは，EGFR遺伝子変異とALK融合遺伝子がドライバー遺伝子として検索されていたが，2022年の肺癌診療ガイドラインでは，8つの遺伝子異常がドライバー遺伝子として掲載されており，今後，その数がさらに増える可能性が高い．検索すべき遺伝子数の増加に伴い，遺伝子検査もsingle plexからmultiplexの検査へと移行し，また，multiplexの検査を施行するためには，十分な腫瘍検体の質と量が必要となってきている．

　薬物治療においては，例えば，EGFR阻害薬も5つ上市されており，血管新生阻害薬とのcombinationや細胞傷害性抗がん剤との組み合わせも標準治療の一つとされている．このような中，どのレジメンを用いて治療を行うか，また，耐性化後の治療選択に悩むことも多い．また，近年，進行期においても，奏効すれば病勢を長期に制御することが期待される免疫チェックポイント阻害薬も数多く導入されている．臨床試験のデータを読み取り，各レジメンの特性を活かして，どのように最適なレジメンを選ぶかが現場の医師に求められている．

Ⅰ．検査

生検（気管支鏡検査）今林　達哉 71巻1号 , 2023年2月 , pp.6-12

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POINT

●マルチプレックス検査提出目的の気管支鏡検査のプランニングにおいて，生検部位と生検方法を選定する際は「確実性」を重視する．

●予定していたプランが実行困難だった際の代替プランを必ず準備しておく．

●比較的新しく，有望視されているクライオ生検，EBUS-IFBも含め，「これさえやれば大丈夫」な万能な生検方法は存在しない．症例に応じて，上手く使い分けることが重要である．

遺伝子検査を使いこなすには松本　慎吾 71巻1号 , 2023年2月 , pp.14-17

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POINT

●非小細胞肺癌においては，ドライバー遺伝子が数多く同定されている．

●ドライバー遺伝子陽性例に対する分子標的治療は患者の長期生存をもたらす．

●マルチ遺伝子検査で複数のドライバー遺伝子をすべて正確に診断することが重要である．

Ⅱ．治療　［A．一次治療で迷うレジメン選択］

chemo＋ICI，ICI＋ICIのレジメンの使い分け三浦　理 71巻1号 , 2023年2月 , pp.18-25

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POINT

●ICIはdriver遺伝子変異陰性例におけるkey drugであり，適切に患者さんに届ける必要がある．

●PD-L1発現や腫瘍量，組織型などを考慮して，shared decision makingを経て治療を決定する．

EGFR遺伝子変異の種類から考える治療戦略（L858R，exon19del，uncommon mutation）高倉　敏彰 , 林　秀敏 71巻1号 , 2023年2月 , pp.26-33

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POINT

●未治療EGFR common mutationに対する標準治療はオシメルチニブ単剤療法である．

●オシメルチニブの耐性機序にはMET増幅，C797S変異などがあり，耐性機序に応じた治療戦略が開発中である．

●EGFR uncommon mutationにはオシメルチニブに対する感受性が低いものもあり，近年ではexon20insに対する治療薬の開発が進んでいる．

Ⅱ．治療　［B．二次治療以降で迷うレジメン選択］

ドライバー遺伝子変異陽性NSCLCにおけるTKI耐性後の治療戦略渡部　聡 71巻1号 , 2023年2月 , pp.34-41

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POINT

●EGFR-TKI耐性後のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する化学免疫複合療法の有効性が報告されている．

●希少ドライバー遺伝子変異陽性NSCLCに対するPD-1/PD-L1阻害薬の評価は定まっていない．

●ICI長期奏効例が散見され，TKI耐性後いずれかのlineで使用を検討するべきと考えられる．

切除不能Ⅲ期NSCLCの化学放射線療法後再発例の治療戦略三浦　雄 , 解良　恭一 71巻1号 , 2023年2月 , pp.42-49

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POINT

●デュルバルマブ地固め療法後に，再発症のレジメンとしてICI再投与の選択肢も考えられる．

●PD-L1陰性例には，ニボルマブ＋イピリムマブも考慮される．

●デュルバルマブ地固め療法が有効な症例にはICI再投与も考慮されたい．

治療薬のre-challengeの考え方（TKI，ICI）寺岡　俊輔 71巻1号 , 2023年2月 , pp.51-58

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POINT

●TKIやICIのre-challengeのエビデンスについては後方視的研究が主だが，前向き試験も散見される．

●EGFR-TKIのre-challengeについては一定の有効性は示されるものの，他の細胞傷害性抗がん薬などの選択肢がある場合にはそちらを優先すべきである．

●ICIのre-challengeについては有効性の示唆がなく，推奨し難い現状と考える．

Ⅱ．治療　［C．肺癌診療と医療経済］

医療経済的観点からの治療選択後藤　悌 71巻1号 , 2023年2月 , pp.60-66

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POINT

●日本では高額療養費制度の甲斐があって，がん医療のコストを治療の選択基準とすることは少ない．

●ここでは，仮想的に費用対効果に基づいて治療を選ぶときに考えられることについて検討してみる．実臨床ではこのような判断はしないと思われるが，思考訓練の場となれば幸いである．

Ⅱ．治療　［D．周術期補助化学療法］

術前/術後化学療法の治療戦略虎澤　匡洋 , 後藤　悌 71巻1号 , 2023年2月 , pp.67-74

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POINT

●近年，術後補助療法としてアテゾリズマブやオシメルチニブの投与が可能となった．

●周術期化学療法における臨床試験はエンドポイントを理解することが重要である．

●アテゾリズマブやオシメルチニブの適応は，効果のみならず有害事象や経済面などを踏まえ総合的に判断する．

Ⅱ．治療　［E．患者背景から考察する肺癌治療戦略］

高齢者小暮　啓人 71巻1号 , 2023年2月 , pp.76-81

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POINT

●高齢者においても非高齢者とほぼ同様の治療を受けることができるようになってきた．

●高齢者におけるICI投与は，非高齢者と比べて毒性が増強することを念頭に置く必要がある．

PS不良患者朝尾　哲彦 71巻1号 , 2023年2月 , pp.83-90

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POINT

●Performance Status（PS）は，患者の全身状態を評価する指標の一つである．

●PS不良（ECOG PS 2以上）の肺癌は予後不良で治療効果も乏しい．

●PS不良症例に対する治療方針決定・治療選択には十分な検討が必要である．

間質性肺疾患合併肺がんの抗がん薬物治療戦略藤本　大智 71巻1号 , 2023年2月 , pp.92-99

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POINT

●間質性肺疾患合併肺がん患者は，日常臨床で頻繁に遭遇する患者群である．

●標準初回治療は，NSCLCでCBDCA＋nab-PTX，SCLCでPlatinum＋ETPである．

●HAVクライテリアなどを参考とし，PD-1/PD-L1阻害薬使用を検討する必要がある．

腎機能障害のある患者白石　祥理 71巻1号 , 2023年2月 , pp.100-106

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POINT

●腎機能の指標としてGFRやクレアチニン・クリアランスがあるが，その概念や違いを理解する．

●リスク・ベネフィットを患者ごとに評価し，治療開始前に十分なインフォームドコンセントを実施して，がん薬物療法を開始することが重要である．

●特に，分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は，腎機能が低下していても治療選択として検討する．

転移臓器別の治療戦略の立て方—脳転移，肝転移，骨転移，胸膜播種（癌性胸水），癌性髄膜炎秦　明登 71巻1号 , 2023年2月 , pp.108-113

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POINT

●腫瘍の局所コントロール不良は予後の悪化につながり得る．

●放射線療法をいかに上手に使うかが局所コントロールのキーとなる．

●特に脳転移と骨転移のコントロールはQOL維持のために重要である．

オリゴメタ患者の治療戦略宮脇　太一 71巻1号 , 2023年2月 , pp.114-119

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POINT

●進行非小細胞肺癌におけるオリゴメタ患者に対し，すべての病変に対する局所治療の有効性が期待されている．

●オリゴメタに対する局所治療は定位照射が主体となっており，本邦でもオリゴメタを伴う固形癌に対して定位照射が保険承認されている．

●オリゴメタに対して免疫チェックポイント阻害薬と局所治療を組み合わせることで，さらに治療効果が高くなることが期待されており，国内外で臨床試験が進行中である．

●少数病変のみが増悪する状態「オリゴ増悪」においても，増悪病変に対する局所治療の有効性が期待されており，治療開発が進んでいる．

Ⅲ．病状説明

肺癌診断〜一次治療開始時の病状説明高　遼 71巻1号 , 2023年2月 , pp.121-126

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POINT

●肺癌の診断から一次治療開始までの病状説明は，良好な医師患者関係を築くうえで重要である．

●バッドニュースを聞いた患者は，すぐにそれを受容できるわけではないことも考慮し，話を進めていく必要がある．

●病状説明に絶対的な正解はなく，また患者のキャラクターや状況によって，都度内容を調整する必要がある．

二次治療以降（標準治療終了後）での病状説明津端　由佳里 71巻1号 , 2023年2月 , pp.128-133

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POINT

●著効を期待して受けた治療が無効になったという気持ちの落ち込みに最大限配慮する．

●前治療の選択理由や治療経過を振り返り，抗がん薬はいつか無効となることを確認する．

●患者の自由な意思決定を尊重しつつ，その治療を患者が選択しやすいようナッジする．

●best supportive care（BSC）は，診断から早期の病状が安定しているときに話題にする．

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目次 71巻1号 , 2023年2月 , pp.2-3

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バックナンバーのご案内 71巻1号 , 2023年2月 , pp.135

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次号予告 71巻1号 , 2023年2月 , pp.137

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奥付 71巻1号 , 2023年2月 , pp.138

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基本情報

呼吸器ジャーナル
71巻1号
(2023年2月発行)

電子版ISSN：2432-3276 印刷版ISSN：2432-3268 医学書院

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序文

Ⅰ．検査

Ⅱ．治療 ［A．一次治療で迷うレジメン選択］

Ⅱ．治療 ［B．二次治療以降で迷うレジメン選択］

Ⅱ．治療 ［C．肺癌診療と医療経済］

Ⅱ．治療 ［D．周術期補助化学療法］

Ⅱ．治療 ［E．患者背景から考察する肺癌治療戦略］

Ⅲ．病状説明

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