BRAIN and NERVE 72巻10号 (2020年10月)

特集 COVID-19—脳神経内科医が診るための最新知識

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2020年4月7日の緊急事態宣言発令から半年が経ち,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による神経症候も少しずつ明らかになってきた。まだ先の見通しが立たない中ではあるが,疫学データや神経症候の特徴,治療方針,COVID-19で明らかになった課題や実際に最前線で重症患者の診療を行った経験など,これまでの知見を集積し,脳神経領域において知っておくべき現時点での最新知識としてまとめた。日々変化するCOVID-19に神経学の専門家としてどのように対応していくか,その足掛かりとなれば幸いである。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は神経筋症状をしばしば合併する。味覚障害,嗅覚障害が特徴的であるが,頭痛,めまいといった非特異的症状を呈し,また重症例では意識障害の合併が多い。神経筋合併症としては,脳血管障害,脳症,髄膜脳炎,末梢神経障害,筋障害などが報告されている。これらは初発症状となり得ることから,日常診療における鑑別診断としてCOVID-19を念頭に置く必要がある。

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日本は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査率が低いことが批判されているが,PCR検査率は封じ込め成功にも死亡率抑制にも関係はなく,封じ込め成功の主因はソーシャル・ディスタンシングと考えられる。日本を含む東アジアの死亡率の低さは感染が広がっていないことも一因である。日本は世界一の高齢化の中,高齢者選択性の極めて高いCOVID-19の死者の抑制に成功している。今後の方策として弱毒化も期待され,日本では東京が先行して軽症化している可能性がある。

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新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大とともに,種々の神経症状が明らかになり,中枢神経合併症として脳炎,急性壊死性脳症,急性散在性脳脊髄炎が報告されている。これらの疾患の発症機序として,ウイルスの直接的な中枢神経侵襲,傍感染性神経障害,高サイトカイン血症に伴う全身性疾患としての神経障害も想定される。脳炎,急性壊死性脳症,急性散在性脳脊髄炎の臨床的特徴を解説するとともに各病態を考察する。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延に伴い,脳血管障害や血管炎関連疾患の合併が報告されるようになった。SARS-CoV-2が血管内皮細胞に発現するアンジオテンシン変換酵素阻害薬2(ACE2)を介して,血管内皮細胞に感染,炎症を惹起することがその機序として推定されている。またCOVID-19重症例に合併することが多く,全身状態悪化に伴うサイトカインストームや血栓形成傾向も影響していると考えられる。COVID-19に関連する脳血管障害や血管炎の病態を明らかにし,最善の治療法を確立していくことが望まれる。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大に伴い,COVID-19感染に伴うさまざまな神経・筋合併症が報告されてきたが,詳細な病態については不明なままである。神経障害の代表的な症状である嗅覚・味覚障害は80%のCOVID-19患者に見られるとされる一般的な症状であり,急性期から出現することから診断マーカーの1つとされている。末梢神経障害としてはCOVID-19陽性患者にギラン・バレー症候群を発症した症例報告が増加しており,COVID-19陽性患者に合併するギラン・バレー症候群の臨床像が明らかとなりつつある。COVID-19に関する神経・筋障害を把握しておくことは,他疾患との鑑別を行いCOVID-19陽性の患者の治療法を決定するうえで極めて重要であることから,本論ではCOVID-19に特徴的とされる嗅覚・味覚障害,末梢神経障害,筋障害について最新の報告を紹介する。

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2020年春の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより地域の基幹病院である当院は混乱に陥った。病院の崩壊を招かないためには濃厚接触者を作らない対策,日々変化してゆく指示の確実な伝達,地域医療機関の明確な役割分担が大切だと考えた。96症例の検討では意識障害,高次脳機能障害,四肢脱力などの神経系の症状を高頻度に伴っていた。病態について未解決な部分が多く,脳神経内科医の感染初期からの積極的な診療への関与が重要である。

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感染症パンデミック下では不要不急の病院受診は避けるべきであるが,慢性神経疾患患者の多くは,専門医による治療継続の必要性が高い。そこで,世界中で注目されているのが遠隔医療である。本稿では,神経疾患における遠隔医療の必要性,本邦における遠隔医療の歴史とパンデミック下での変遷,神経疾患におけるオンライン診療導入および実施の実際について概説する。

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新型コロナウイルス感染症における中枢神経系の病態は明らかではない。病理解剖により得られた脳組織を用い,病理学的,ウイルス学的,分子生物学的検討を行うことが必要である。一方,病理解剖自体を行うことが,感染防御の観点から困難となっている。海外では徐々に神経系の病理所見の報告などが蓄積されていることから,わが国でも適切な方法で神経系の病理学的検討を行う必要がある。ここでは既に海外から報告された神経系の病理所見をまとめ,また病理解剖の手技的な点や解剖自体の意義についてまとめた。

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ポストコロナ時代の診療では,これまでの通常のアプローチに加えて,医療者の安全を守り,感染をさらに拡げないためのさまざまな配慮が,特に意識障害,てんかん重積状態,脳血管障害をはじめとする救急対応,重症患者対応で求められる。本稿では,新型コロナウイルス感染症の最新の神経障害,臨床像を簡潔にまとめるとともに,筆者も参画して急遽取りまとめられた国内外学会等による推奨,マニュアルのポイントと活用方法を紹介する。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下の脳卒中診療には何よりも「確実な感染防御」が求められる。日本脳卒中学会版Protected Code Stroke(PCS)は,まずCOVID-19未判定例を定義し,PCSの要点として,①確実な個人感染防護具の装着,②患者へサージカル・マスクの装着,③必要最小限の人員での対応を示した。施設ごとの実情に即したPCSプロトコルの作成が急務である。

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多発性硬化症や視神経脊髄炎関連疾患,重症筋無力症では,感染症罹患を契機とした原疾患の悪化がしばしば見られるため,新型コロナウイルス感染症に対しても,感染予防策を徹底する。いずれの疾患においても,疾患自体やそれに対する治療薬による罹患や重症化のリスクの上昇は示されていない。患者ごとの判断が必要だが,治療の中断によって原疾患の増悪や再発を招く可能性があるため,原疾患の治療は継続するのが原則である。

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神経筋疾患患者の換気補助の第一選択として非侵襲的陽圧換気(NPPV)が用いられる。しかしNPPVの使用により定常的にエアロゾルが発生するため,NPPV使用者がSARS-CoV-2に感染している場合,または感染が疑われる場合,新型コロナウイルス感染症症状の有無にかかわらず周囲の感染リスクに留意すべきである。本稿では感染予防の観点から,SARS-CoV-2流行期間における在宅,入院中のNPPV使用上の注意点について解説する。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威をふるっている。濃厚接触を伴う,リハビリテーション治療を行う回復期病院や認知症治療ケアを行う介護老人保健施設などの高齢者施設でのアウトブレイクは第1波で多くの死亡者を出し,第2波での拡大が懸念される。COVID-19を根絶することが困難である以上,感染予防と上手な共生方法を学ぶ必要がある。濃厚接触を伴う施設でのアウトブレイクの起こり方と感染終息対策,そして,COVID-19の脅威と感染対策,感染発生時の施設対応,さらに今後の社会活動再開における医療者が示すべき役割について概説する。

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近年,脳梗塞に対する細胞療法の研究が盛んに行われているが,既存の細胞療法は,投与細胞の採取や調整に複雑な手技を要するため,一般臨床への普及が難しい。われわれは,末梢血単核球に,低酸素低糖刺激という簡便な刺激を加えることにより,脳梗塞に対して治療効果のある細胞を調整できることを証明した。本稿では,われわれの開発した技術と今後の展望について概説する。

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髄膜腫と神経膠腫が同部位に発生することは非常に稀である。今回われわれは,髄膜腫摘出後に再発が疑われ腫瘍摘出を行ったところ膠芽腫であった1例を経験した。症例は67歳女性,左前頭部髄膜腫に対して摘出術が行われ,fibrous meningiomaと診断された。術後2年11カ月目に摘出部に腫瘍を認め再発を疑い摘出術を行った。悪性髄膜腫が疑われたが,病理組織診断は膠芽腫であった。IDHはwild type,TERT promoterのmutationを認め,de novoに発生した膠芽腫と診断した。

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 この書の「序」は次の文章で始まる。

 不明熱の臨床はざっくりと次の2つの問題を内包しています。

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あとがき 虫明 元
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 新型コロナウイルスのことが毎日のように報道され,医療のみならず経済,社会のどの分野においても大きな影響を与えている。このたびの10月号特集「COVID-19—脳神経内科医が診るための最新知識」は,その点で,極めてタイムリーな企画で重要な情報が詰まっている。

 一方で新型コロナウイルスの神経系への影響は,ウイルスによる直接的なもの以外にも,昨今の感染対策に伴う社会的な影響からくる心理面への影響さらには神経系への間接的な影響があるのではないかと危惧している。感染対策として「3密回避」と同時によく言われる言葉が「ソーシャル・ディスタンシング」である。「ソーシャル・ディスタンシング」は,実際には人との物理的距離「フィジカル・ディスタンス」をとる意味だと思うが,「3密回避」,マスク着用を含め人々のコミュニケーションや対人関係,孤独感などに大きな影響を及ぼしている。

基本情報

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BRAIN and NERVE
72巻10号 (2020年10月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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