言語聴覚研究 15巻1号 (2018年3月)

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 わが国の発話障害の評価・治療法は,米国のDarley,Yorkstonらのアイデアをもとに育まれてきた.しかし,発話を言語聴覚士が詳細に分析するばかりでなく,患者の自己評価や,患者と聞き手のコミュニケーションの背景などにも目を向ける考え方は,あまり注目されてこなかった.そこで,筆者はVHIを参考に,発話障害の自己評価7項目を作成し,試用している.また,発話に負荷をかける(長文を,普通に,速く,ゆっくり読む)動的な評価・訓練法も試みている.本稿では,これらを7症例の症例報告の中に含めて紹介し,発話障害に関して言語聴覚士にできること,すべきことを交え,解説を加えた.また,われわれは,医師,歯科医師などとの協業をさらに積極的に進めるべきことを強調した.

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 本研究の目的は嚥下造影検査における舌骨・喉頭ピーク速度を解析し,嚥下障害重症度との関連について検討することである.対象は嚥下障害患者28名(72.6±7.6歳,男性21名,女性7名,脳血管障害:15名,パーキンソン病:13名)とした.嚥下造影検査の解析はバリウム水5mlを嚥下したときの舌骨および喉頭のピーク速度,平均速度,移動範囲,挙上時間,PAスケールを実施した.解析結果より,喉頭ピーク速度は嚥下障害が重症なほど低下し,PAスケールと中程度の有意な負の相関を認めた(r=−0.55,p=0.002).一方で舌骨ピーク速度においてはPAスケールとの有意な相関は認めなかった(r=−0.35,p=0.068).以上より,嚥下造影検査における喉頭ピーク速度の解析は,嚥下障害重症度を検討するうえで1つの指標になることが示唆された.

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 延髄外側病変による嚥下障害は,早期に改善するという報告の一方で長期間改善しないという報告があり,予後予測が困難である.そこで延髄外側虚血性病変による嚥下障害患者の機能予後予測因子を後方視的に検討した.対象は延髄外側虚血性病変に由来する嚥下障害患者10例とした.評価項目は年齢,意識障害の有無,軟口蓋麻痺の有無,嗄声の有無,咳嗽反射の有無,飲水評価とし,発症2か月以内の経管栄養離脱の比率について統計解析を行った.第14病日以内に飲水評価に合格した群(合格群)と合格できなかった群(不合格群)を比較すると,合格群は有意に経管栄養離脱の比率が高かった.その他の評価項目では有意差を認めなかった.延髄外側虚血性病変による嚥下障害において,急性期の飲水評価の合否が比較的早期に経口摂取に移行できることを予測する指標になる可能性が示唆された.

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 2016年4月14日,16日に発生した熊本地震におけるJRAT(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team:大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会)支援活動を通し,災害時の言語聴覚士(以下,ST)の役割と現状について報告した.

 本部活動(JRAT東京本部,熊本活動本部)と避難所支援に従事したものの,マンパワー不足が目立つ結果となった.避難所支援においては,避難所アセスメントやリスク対象者の選別を行い,ST視点での対応を要請されることもあり,嚥下障害のスクリーニングから個別評価,必要に応じた個別指導を行った.また,STの発災後早期からの活動の必要性が提言され,チーム内の役割が明確になった.

 今後の課題として,①災害時にSTができることの明文化,②本部支援員登録制の導入,③都道府県士会の地域JRAT活動への積極的な参加,④避難所活動の具体化およびその明文化と共有が挙げられ,マンパワー不足を解消するための災害研修プログラムの整備と実施体制の構築が急務といえた.

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 愛知県内の言語聴覚士有志(以下,ST)は10年以上,会話パートナー(以下,パートナー)養成を行ってきた.パートナーらはNPO団体を結成し,主に失語症友の会活動を支援してきた.パートナーと失語症者の支援活動の現状について2つの調査を行った結果,両者ともに支援活動の意義を認めていることが明らかとなった.友の会活動の中で自分の思いをパートナーに伝えることを通して失語症者には帰属感と自己効力感が生まれた.しかし,活動に悩みを抱えていたパートナーがあった一方,失語症者はパートナーに個人支援を依頼することには消極的であった.どちらに対しても系統的かつ継続的なSTによる支援相談システムの提供が必要と思われた.これからのSTには言語機能の改善への働きかけにとどまらず,失語症者のエンパワメント拡大にも率先してかかわり,失語症者が住みやすい社会を実現させていく役割を期待したい.

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 近年,わが国ではへき地医療の充実が求められている.今回われわれは,遠隔医療システムを使用して,へき地の失語症者への遠隔言語療法を試みた.対象は,87歳女性,心原性脳塞栓症後の中等度失語症者で,介入は3か月間,効果測定として,標準失語症検査(SLTA)より抜粋した言語検査と,自由会話評価,Communicative Activity Log(CAL)を介入前後に実施した.対面で行う訓練に比べ制限はあるが,方法や対象者の条件を考慮し,現地スタッフの協力を得ることで実施が可能であった.その結果,上記のいずれの検査も改善がみられた.遠隔言語療法はへき地における失語症者支援の一助になりうると考える.

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目次

投稿規定

執筆要綱

投稿誓約書

編集後記 藤田 郁代
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 春は光から来ると言いますが,陽の光が明るさを増してくる候となりました.

 今号には,総説として,熊倉勇美氏の「発話障害の評価と訓練—言語聴覚士に何ができるか,何をすべきか—」が掲載されています.発話障害は,問題を行動面と生理学的側面からとらえ,その発生メカニズムを検討し各問題に対応した訓練を考案することが求められます.臨床および研究の業績を積まれた熊倉氏の総説は臨床的示唆に富んでいますので,ご一読ください.

基本情報

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言語聴覚研究
15巻1号 (2018年3月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1349-5828 日本言語聴覚士協会

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