糖尿病診療マスター 13巻2号 (2015年2月)

特集 必携! 糖尿病患者の意識障害

Ⅰ 糖尿病患者の意識障害と救急医療

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POINT

・救急外来を受診する意識障害患者は多岐にわたる.初期診療にあたっては,まず蘇生処置必要性の判断を速やかに行うことと血糖測定が重要である.

・糖尿病患者の意識障害は血糖異常による意識障害だけとは限らない.他の意識障害を伴う疾患の合併を常に念頭に置く必要がある.

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POINT

・意識障害の時間が短く,かつ意識が自然に回復するものを一過性意識障害(transient loss of consciousness : T-LOC)という.

・一過性意識障害は,失神と非失神発作(「てんかん」など)に分類される.

・失神の原因はさまざまであり,高リスクの失神(心原性失神)を見逃さないことが重要である.

脳血管障害 矢澤 由加子
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POINT

・神経局所症状を伴わない意識障害で発症する脳血管障害は稀である.

・意識障害の原因として脳血管障害を疑った場合には,速やかに専門医療機関へ相談すべきである.

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POINT

・糖尿病患者さんの意識障害を診た時に,Japan Coma Scaleを用いて意識障害の程度,意識水準を判定します.

・緊急手術が必要な頭部外傷を把握しておきましょう.

・糖尿病を合併する高齢者では,つまずき転倒など日常生活動作に頭部外傷の危険が潜んでいます.

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POINT

・冠動脈に狭窄がないのは安心につながらない.

・冠動脈の一過性の異常収縮が意識障害を生じる.

・冠動脈の攣縮誘発負荷試験を受ける.

・意識障害をみたら心室細動を鑑別にあげる.

低ナトリウム血症 吉田 篤博
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POINT

・補液,血液,尿は張度で考えよう.

・低Na血症では体液量の変化に気をつけよう.

・低Na血症の補正は急がず,あわてず.

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POINT

・糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧症候群(HHS)の鑑別

・生理食塩水による補液とインスリン持続静注

・治療中の脳浮腫や低カリウム血症に注意

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POINT

・低血糖の有無を確認することはすべての意識障害の入口である.

・神経脱落症状が明らかではない軽い意識障害を見逃さないように.

Ⅱ 知っておきたい知識の補強

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POINT

・てんかん≠痙攣

・複雑部分発作と欠神発作の判別は時に困難

・ビデオ脳波モニタリングは有用

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POINT

・せん妄が存在しても診断されていないことが多い.

・低活動型せん妄はうつ病や認知症との鑑別が重要.

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POINT

・呼吸不全による呼吸性アシドーシスでは,意識障害から昏睡に至ることがある.

・睡眠時無呼吸症候群の症状として認知機能の低下があげられる.

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POINT

・意識障害は肝不全時の肝性脳症が大多数

・肝不全には急性と慢性があり,急性では身体所見,慢性では病期,アルコールでは飲酒習慣の把握が重要

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 糖尿病は一見,変化の少ない疾患のようにみえるかもしれない.しかし,長年診ている患者にいきなり意識障害の起こることは決して少なくない.意識がない!? と電話が来れば,担当医の心臓は高鳴る.低血糖でなければ大変だ…….さまざまな思いが胸をよぎる.

 実習で回ってくる医学部5年次の学生に,意識を失った糖尿病患者を診た時あげるべき鑑別疾患を尋ねると,不意打ちに黙ってしまう学生も少なくない(びっくりさせてごめんね……).“糖尿病性昏睡,脳卒中……”,ここまでは出てくる,OK.研修医になるとその経験から“低血糖昏睡,ショック……”などをあげてくる(よしよし).それでは,一時的な意識障害から覚醒して病院に到着した場合は? “シックサイナス シンドローム,……,徐脈性不整脈? ……”(なかなかよろしい).糖尿病性神経障害が進んでくると起立性低血圧や排尿失神など,糖尿病特有の失神もある.意識がもうろうとなって受診した患者で家族に問うと,数日間タール便があったことがわかる.糖尿病とは直接関係ない疾患であっても,抗血小板薬により貧血が重症化して意識障害を起こすこともあるわけである.

糖尿病患者の足を守る〔Basic 編〕—足をみる・きく・ふれる・2

足を聞く 仲村 直子
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この足を見て,何が気になりますか.何を聞こうと思いますか.

症例  C氏 60代後半 男性

●爪が短い.深爪している.

 →爪切りの習慣は? なぜ短く切っているのかな.短いのが好きなのかな.

●右踵の角化と胼胝(両外側足底と左第1足趾,両外踝)が多い

 →痛みはあるのかな.手入れの習慣はあるのかな.歩くことが多いのかな.どんな靴を履いていたのかな.

●足の色が少し右のほうが悪そう.静脈の血管走行も右は見えない.

 →もしかすると右足の血流障害があるのかも.間歇性跛行の症状はないのかな.

作って食べて学ぶ! 糖尿病食・2

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主  食:発芽玄米入りごはん

主  菜:ロール白菜

副  菜:白菜サラダ,わかめとしょうがの炒め物

デザート:さつま芋のシナモンスティック

“目からウロコ”の糖尿病運動療法・8

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 身体活動不足は,肥満や生活習慣病の危険因子であり,健康寿命を縮める要因となります.ゆえに,日常生活における身体活動量の増加を目指した取り組みは重要であり,厚生労働省は2013年に「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド+10)」を発表しました1).その内容は,いまよりも10分多く身体を動かすことで,糖尿病,心臓病,脳卒中,がんなどのリスクを下げるというものです.日常生活で10分上乗せした身体活動を行うことは,エネルギー消費量を増やすことができ,窓拭きやモップを使った床拭きなど,生活のなかでの身体活動(3 METs以上)を積み重ねていくと,ウォーキングなどのプログラムされた運動をまとめて行うのと同じような効果があるといわれています.それぞれの身体活動の度合いや運動習慣の有無によって,①気づく,②始める,③達成する,④つながる,という4つの目標設定がされており,ちょっとした工夫をすることで,健康のための一歩を踏みだしていけるように工夫されています(図1).これは,仕事や家事などが忙しく,運動のための時間がなかなかつくれない人でも活動量を増やすのに実行可能な方法であると考えられます.

 中強度の運動や日常生活での活動量の合計時間が増えてきたら,次に運動の強度を高めていくことも必要です.強度の高い運動ほど,運動中の糖質利用が増えるので,体内の糖質の貯蔵が減少し,運動後は燃料切れで時間の経過とともに脂肪がどんどん利用されるようになります.特に肥満を伴う糖尿病の場合,減量によりインスリンの感受性の回復,インスリンの分泌量の正常化,血糖コントロールの改善,血中脂質異常の正常化などの効果が期待できます.ただし,いきなり強度の高い運動を行ったり,長時間続けることは,整形外科的傷害や心血管事故に遭遇するリスクが高くなるため,徐々に強度を上げていくというステップを踏んでいくことも必要となります.また,週末に“ここぞ”とばかり運動しまくる人を週末戦士(weekend warrior)といいます.週末のみの運動効果について,ハーバード大学公衆衛生学部の疫学者アイミン・リー博士らの研究チームが「ハーバード大学卒業者健康調査」の一環として,男性8,000人を対象に調べたところ,週末だけ運動をする人は,全く運動しない人よりも明らかに長生きだったという結果が得られました2).ただし,「週末だけ運動を行う人は,毎日運動を行っている人よりは,体重が重かった」との報告もされており,週末だけではなく,毎日の日常生活において運動量を上げることを優先し,その不足している分を週末に補い,トータルの身体活動量を上げていくことをお勧めします.

どうする?! 糖尿病患者のCommon Disease対応

睡眠時無呼吸症候群 佐藤 利昭
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 糖尿病の9割以上が2型糖尿病であるように,睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome : SAS)の大多数が閉塞性SASである.本稿での糖尿病は2型糖尿病を,SASは閉塞性SASを指している.

 肥満は,糖尿病とSASの両方の強いリスク因子であることから,SASが糖尿病の独立したリスクであるか否かについては,従来疑問視されていた.近年,両者の独立した関連性を示す研究が,次々に報告されるようになり,2008年International Diabetes Federation(IDF)は,SAS患者における耐糖能の評価および糖尿病患者における睡眠時障害の評価を推奨するステートメントを出すに至った1)

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諸言

 2型糖尿病の治療で運動療法が有効であるのは,全員が認めることだと思います.しかしながら,運動の種類,時間,強度,頻度について,どれだけの期間,監視下で行っていたか否かによって運動の効果は変わります.アメリカ糖尿病協会とアメリカスポーツ医学学会はレジスタンス運動(resistance training : RT)と有酸素運動(aerobic exercise : AET)の組み合わせを中等度の強度で少なくとも週3回行うのが,どちらか一方の運動のみ行うよりも血糖コントロール改善に有効であると述べています.(エビデンスカテゴリーB).RT単独,AET単独,両者を組み合わせるcombined training(CT)の3種類の運動の心血管代謝面に及ぼす影響のメタ解析は2006年Snowlingらと2011年Chudykらによって発表されています.両研究ともにHbA1c低下効果,空腹時血糖低下,収縮期血圧,ウエスト周囲,HDLコレステロール,中性脂肪改善効果はAET,CT,そしてRTの順に優れていたと報告しています.しかしこれらの研究は,対象を安静群としています.いままで,直接,間接的に2型糖尿病患者の血糖脂質コントロールに与える影響を,この3種の運動を比較したシステマティックレビューはありませんでした.今回紹介する論文は,2型糖尿病患者においてAET,RT,CTの運動療法の血糖血圧脂質に及ぼす効果を客観的に分析する目的で行われた,システマティックレビュー,メタ解析です.監視下で行う必要性が報告されているため,このメタアナリシスでは監視下トレーニングのもののみを対象としています.

 文献検索はMEDLINE,EMBASE,Cochrane Libraryから行われました.成人(19歳以上)2型糖尿病患者で,監視下で,最低8週間のランダマイズ研究を抽出しました.トレーニングは直接トレーナーによって,トレーニング教室や病院,ジムで行ったものを選択しており,家庭運動のものは除外しています.

糖尿病診療トレーニング問題集

内科医レベル 江口 透
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症例 73歳,女性.

主訴 意識障害

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 私たちは誰もが人生の折々にスピリチュアルな苦悩に直面する.患者のスピリチュアルな苦悩は医療者は当然対応すべきものであるが,適切なアプローチが取られず,時には睡眠薬や抗不安薬などで,患者はその苦悩に向き合うことすらできずに最期を迎えることさえある.著者が言うように「スピリチュアルペインは人間にとって成長の痛み」であるにも関わらず.

 本書はスピリチュアルケアについて,丁寧に,丁寧に解きほぐしている.すなわち,「スピリチュアリテイ」「スピリチュアルケア」「スピリチュアルペイン」「スピリチュアルな経験」について,医療の実践家にわかりやすく(時には哲学的表現で)丁寧に説き,結局「目の前の相手を人格として大切に遇せよ」という結論に導いてくれるのだ.読者は読み進むうちに医療者としての自分自身の原点に立ち返り,「人を大事にする」という姿勢に立脚することが,最も大切なケアであることはもちろん,そのプロセスを通して自分自身の成長につながっているのだと気付いていく.医療・ケアの対象は,かけがえのない存在としての“個”であり,それをどれだけ尊重できるかが,その質に大きく影響することをあらためて確認した.

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糖尿病診療マスター
13巻2号 (2015年2月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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