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身体活動不足は,肥満や生活習慣病の危険因子であり,健康寿命を縮める要因となります.ゆえに,日常生活における身体活動量の増加を目指した取り組みは重要であり,厚生労働省は2013年に「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド+10)」を発表しました1).その内容は,いまよりも10分多く身体を動かすことで,糖尿病,心臓病,脳卒中,がんなどのリスクを下げるというものです.日常生活で10分上乗せした身体活動を行うことは,エネルギー消費量を増やすことができ,窓拭きやモップを使った床拭きなど,生活のなかでの身体活動(3 METs以上)を積み重ねていくと,ウォーキングなどのプログラムされた運動をまとめて行うのと同じような効果があるといわれています.それぞれの身体活動の度合いや運動習慣の有無によって,①気づく,②始める,③達成する,④つながる,という4つの目標設定がされており,ちょっとした工夫をすることで,健康のための一歩を踏みだしていけるように工夫されています(図1).これは,仕事や家事などが忙しく,運動のための時間がなかなかつくれない人でも活動量を増やすのに実行可能な方法であると考えられます.
中強度の運動や日常生活での活動量の合計時間が増えてきたら,次に運動の強度を高めていくことも必要です.強度の高い運動ほど,運動中の糖質利用が増えるので,体内の糖質の貯蔵が減少し,運動後は燃料切れで時間の経過とともに脂肪がどんどん利用されるようになります.特に肥満を伴う糖尿病の場合,減量によりインスリンの感受性の回復,インスリンの分泌量の正常化,血糖コントロールの改善,血中脂質異常の正常化などの効果が期待できます.ただし,いきなり強度の高い運動を行ったり,長時間続けることは,整形外科的傷害や心血管事故に遭遇するリスクが高くなるため,徐々に強度を上げていくというステップを踏んでいくことも必要となります.また,週末に“ここぞ”とばかり運動しまくる人を週末戦士(weekend warrior)といいます.週末のみの運動効果について,ハーバード大学公衆衛生学部の疫学者アイミン・リー博士らの研究チームが「ハーバード大学卒業者健康調査」の一環として,男性8,000人を対象に調べたところ,週末だけ運動をする人は,全く運動しない人よりも明らかに長生きだったという結果が得られました2).ただし,「週末だけ運動を行う人は,毎日運動を行っている人よりは,体重が重かった」との報告もされており,週末だけではなく,毎日の日常生活において運動量を上げることを優先し,その不足している分を週末に補い,トータルの身体活動量を上げていくことをお勧めします.
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