日本老年看護学会誌(老年看護学) 21巻1号 (2016年7月)

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 日本老年看護学会は1995年11月23日に設立され,野口美和子・初代理事長,中島紀惠子・第2代理事長,太田喜久子・第3代理事長,堀内ふき・第4代理事長へとバトンがつながれ,2015年に20周年を迎えた.本学会は,常に老年看護実践の質向上を視野に入れながら研究活動を推進し,学問としての「老年看護学」を体系化へと導き,制度・政策に関する意見を提言するなど,さまざまな学会事業を躍進的に行ってきた.現在,活躍する老人看護専門看護師や認知症看護認定看護師の教育カリキュラム作成に当たっても,本学会はその中心的役割を果たしてきた.

 中島紀惠子名誉会員は,学会活動を振り返り,1995〜2009年度までの15年間を「開花期」,2010年度からは「成長期」と記している(中島,2010).現在は,まさにその成長途上の最盛期にあるといえる.その一例として,老年看護施策検討委員会が進めてきた事業活動が,2016年3月の診療報酬改定で「認知症ケア加算1」「認知症ケア加算2」として認められたことが挙げられる.周知の如く,診療報酬は社会的評価でもある.本学会としても支援してきた老人看護専門看護師と認知症看護認定看護師による活動が,社会的にも認められたことになる.また,厚生労働省から「認知症ケア加算2」の算定要件となる「認知症看護対応力向上研修」を本学会で担うことが認められた.これを受けて,生涯学習支援委員会が,2016年度に東京で開催予定の研修会をベースに,年度内に各地域でも研修会を開催することを企画中である.

2015年度生涯学習支援研修応用編「老年看護学と地域包括ケア」特別寄稿

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1.はじめに

 地域包括ケアシステム構築の目的は,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されることと説明されている(厚生労働省,2013).地域密着型サービス(以下,地域密着型)創設の目的は,要介護者の住み慣れた地域での生活を支えることであり(厚生労働省,2005),今後増え続ける認知症高齢者や独居高齢者を見越して制度化されたものである.このことから,地域密着型の制度化と地域包括ケアシステム構築は同じ目的をもつものであり,地域包括ケアシステムにおいて,地域密着型は,ケアの拠点として期待されていることがわかる.

 筆者らは,地域包括ケアシステムの構築には,「いまいる場所で最期まで」暮らすことの実現(エイジング・イン・プレイス)が求められていると考え,「いまいる場所」のひとつとしてケアを担うであろう地域密着型をフィールドとした研究活動を継続している.高齢者が,たとえ独居になったり認知症になったりしても,環境の変化による心身のダメージを極力受けることなく,「いまいる場所で最期まで」暮らすには,「いまいる場所」のサービス提供者が看取りまでを視野に入れたケアを提供することが強く求められると考えている.

 そこで本稿では,認知症対応型共同生活介護(グループホーム)と小規模多機能型共同生活介護(以下,小規模多機能)の2つの地域密着型に着目し,地域包括ケアシステムおよびエイジング・イン・プレイスで果たす地域密着型の機能と看護職の役割について述べる.

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抄録

 本研究の目的は,高齢慢性心不全患者のセルフケア状況を評価できる尺度を開発し,尺度の信頼性,妥当性を検討することである.作成した尺度原案について,慢性心不全看護認定看護師への質問紙調査とプレテストを実施し,その後,高齢慢性心不全患者340人を対象に質問紙調査を行い,尺度の信頼性・妥当性を検討した.その結果,本尺度は30項目4因子構造となり,第Ⅰ因子は「必要な知識と実践」,第Ⅱ因子は「生活のなかで獲得される管理の習慣化と継続」,第Ⅲ因子は「身体徴候の変化に対する認識と対応」,第Ⅳ因子は「自ら獲得する支援体制」と命名した.尺度全体のクロンバックα係数は0.84,下位尺度は0.55〜0.80であった.本尺度と相関があると想定されたSCAQ,Self-care confidenceとの間に有意な正の相関を認めた.開発した尺度は,内的整合性,構成概念妥当性がある程度確認された尺度であり,高齢者のセルフケア支援への活用可能性が示唆された.

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抄録

 マット型睡眠計を特別養護老人ホームに設置し,要介護高齢者の睡眠状態を1年間にわたって記録した.分析対象者は1年間継続してデータ収集ができた15人であった.平均年齢は85.4±8.6歳,性別は男性4人,女性11人であった.平均入所期間は4年0か月であった.要介護度は「1」が3人,「2」は8人,「3」は4人であった.

 1年間を通した平均では,入眠時刻は19時19分,起床時刻は6時23分,睡眠時間は11時間5分であり,夕食後すぐに就寝する例が多くみられた.浅睡眠率は66%,深睡眠率は4%,レム睡眠率は17%であった.季節差について分析したところ,冬季は夏季と比較して,入眠時刻が早く起床時刻は遅く睡眠時間が長かった.ただし,冬季は中途覚醒時間が多くレム睡眠が少なかったことから,睡眠時間は長いものの睡眠の質は低いと考えられる.以上から,夕食後の過ごし方の工夫や冬季における太陽光の取り込みおよび寝床内気候を整えるケアの必要性が示唆された.

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抄録

 本研究の目的は地域包括支援センターが把握した地域でひとり暮らしをしていた高齢者の孤立死の類型化を行い,地域包括支援センターの孤立死に対する活動について示唆を得ることである.2014年4月から6月にA県の全地域包括支援センター249か所の看護職各1人を対象に質問紙調査を行い,81部(回収率32.5%)を回収した.そのうち依頼に応じてくれた10人にインタビュー調査を行った.質問紙調査では,孤立死の相談が「ある」は51センター(63.0%)であった.相談者は,「民生委員」が最も多く31件(60.8%),「近所の人」20件(39.2%),「民間宅配業者」13件(25.5%)などであった.質問紙調査とインタビュー調査で得られた孤立死の事例は27事例で,【1週間以上前の旅立ち】【見守りによる旅立ち】【看取りによる旅立ち】に分類された.地域包括支援センターが行う活動として,高齢者への緩やかな見守りと孤立死発見時の初動対応の周知や,関わった人に対しては高齢者を見守る役割の明確化と事後のグリーフケアやエンパワメントの必要性が示唆された.

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抄録

 本研究の目的は,自力歩行が困難な高齢者の生きる意味,目的,いまを支えるものを明らかにすることである.対象は介護老人保健施設に入所している6人で,半構造化面接によってライフストーリーを聴き取り,逐語録に起こし,質的帰納的に分析し,6人のサブテーマを統合して5つのテーマを抽出した.地域高齢者のスピリチュアリティと一致する「頑張ったからこそある満足感」「過去・現在・未来の人とのつながり」「命はもらったもの,生かされている」のほかに「不自由でもできることは自分でしたい」「いまがいちばんいいとき」が抽出された.生きる意味,目的,支えを聴き取ることは,老健で生活する高齢者の自己の客観視を可能にすること,および看護が充実する可能性があり,そのような視点を取り入れたケアの必要性が示唆された.

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抄録

 本研究では,療養病床の看護師が急性期治療後の高齢患者の転入に関して困難を認識する状況と対処を明らかにするため,療養病床に所属する4人の看護師に半構成面接法によるインタビュー調査を実施した.

 困難を認識する状況は【療養病床の機能・特性に関する家族の理解不足と不満】【急性期病床での今後を見据えた家族への支援不足と家族の不満】【生活機能が低下した状態での患者の転入】【急性期病床での不要ととらえられる身体拘束の存続】【急性期病床との情報共有の不足】【事前情報不足による想定外の治療やケアの必要性の判明】の6カテゴリーにまとめられた.対処は≪転入初期の家族の理解や不満の探索と解決≫≪転入時の患者の状態に応じた回復に向けた支援≫≪転入時の患者の状態に応じた臨機応変な調整と対応≫≪他職種と連携した急性期病床との情報共有の促進≫の4カテゴリーにまとめられた.

 高齢患者が急性期治療後に療養病床で円滑な療養を開始するには,療養病床に関する理解と情報共有の促進,急性期治療によって低下した生活機能の回復を支援するケアの推進が課題と考えられた.

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抄録

 本研究は,施設入所の認知症高齢者14人を対象に4か月間で計8回の園芸活動を実施し,対象者の園芸経験の有無別に,園芸活動が認知機能面へもたらす効果を明らかにすることを目的とした.認知機能面の効果は,4か月間の園芸活動開始前(開始前),開始2か月後(中間),開始4か月後(終了後)の3時点で行ったファイブ・コグ検査(5cog)と園芸活動に伴う言動,日常生活状況から評価した.

 園芸経験の有無別に5cogをみると,経験者の平均素点は全項目で中間が最も高く,合計素点と位置判断の中間は開始前と終了後に比べ有意差がみられた.このことから,経験者への園芸活動は認知機能面に効果をもたらすが,中間以降の活動は認知機能への働きかけを持続できなかった可能性があり,経験者向けのプログラム検討の必要性が考えられた.

 一方,未経験者では合計素点,位置判断,時計描画,共通単語の平均素点は開始前が最も高く,中間および終了後に比べ有意差がみられた.しかし,単語記憶の平均素点は経時的に上昇し,有意差がみられたことや,園芸活動に伴う言動および日常生活状況から,未経験者への園芸活動は記憶・学習機能の賦活化に効果的である可能性が示唆された.

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 平成27年度の災害支援検討委員会活動において,大きなトピックスは9月9〜11日に発生した関東・東北豪雨災害への支援である.委員会では災害後のさまざまな情報を収集し,メールマガジンで会員に向け発信した.また,避難所での支援ができる看護職を求めているという情報から,支援できる会員を募った.このとき支援活動に参加した3人に,経験したこと,そのときに感じたことなどをまとめてもらった.

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 生涯学習支援委員会の目的は,「本会の事業の一つとして,老年看護に携わる実践者および老年看護学の教育者である会員に対し,基礎的,実践的および応用的な知識とスキルを獲得する機会の提供を通して,会員の生涯学習を支援すること」である.本稿では,本委員会の基盤づくりであった,平成25〜27年度の3年間(第1期)の活動を報告する.

 委員会の発足時に3年間の目標を,「生涯学習支援MAP(案)に基づき,基礎編,実践編,応用編の研修システムの構築と研修内容の充実を図る」ことを目標とした.生涯学習支援MAP案は,主に老年看護に携わる実践者を対象に必要な研修内容を整理したものであり,本委員会の前身である準備委員会が作成した.本委員会ではこれを改訂し「生涯学習支援MAP」として本学会ホームページで公開している(http://www.rounenkango.com/).

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Ⅰ.はじめに

 2013〜2015年度の政策検討委員会の活動は,身体疾患で入院する認知症高齢者等へのチーム医療の診療報酬化の提案に集約される.認知症高齢者等にとっての入院は,それまでの生活環境とは異なる場で行われる治療に伴う苦痛や制約のため,入院生活への適応が困難となることが多く,行動・心理症状(BPSD)といわれる行動が出現したり,意思疎通に困難が生じる場合など,看護上の課題を生じることがある.これらは「安全管理」という名のもと,身体拘束を行う要因のひとつにもなっていると考えられる.

 一方で,入院した認知症高齢者等の個別特性に応じた多職種ケアチームをつくり,多職種協働ケアにより,認知症高齢者等が落ち着いて入院治療できた等の成果も報告されている(日本老年看護学会老年看護政策検討委員会,2014).これらのことから,認知症ケアに専門的知識をもった多職種チームによる質の高いケアを提供し,認知症高齢者等が安心して,かつ安全に入院治療を受けられるための仕組みをつくることが必要であり,日本老年看護学会が特に推進すべき課題であると考える.

 当委員会では,平成28年度改定の診療報酬化を見据え,「入院した認知症高齢者等へのチーム医療加算」の提案を行い,それを実現することができた.本論では,時系列に沿って活動内容の概要を報告する.

基本情報

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日本老年看護学会誌(老年看護学)
21巻1号 (2016年7月)
電子版ISSN:2432-0811 印刷版ISSN:1346-9665 日本老年看護学会

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