日本看護医療学会雑誌 21巻2号 (2019年12月発行)

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オリジナル・アーティクル

看護学実習における指導者・教員との相互作用で学生の学びの意欲が高まる様相鈴木　由紀子 , 佐藤　直美 21巻2号 , 2019年12月 , pp.1-12

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要　　旨

　目的：看護学実習において、学生が指導者や教員との相互作用で学びの意欲が高まる様相を明らかにする。

　方法：4年制の看護系大学で領域実習を1つ以上経験した学生15名を対象にグループインタビューをし、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。

　結果：以下は【カテゴリー】≪概念≫を示す。【指導者・教員との双方向の関わりによる学ぶ意欲向上】は、【努力を認められ意欲がわく】および≪丁寧な関わりを受け安心することで意欲がわく≫ことによって、≪看護の効果を認められてやる気になり自ら意欲的に行動する≫という、自発的な行動が取れるレベルに至っていた。

　結論：指導側が学生のできたところを認める関わりや丁寧な関わりで学ぶ意欲が高まっていた。つまり、状況によってたとえ厳しい指導をしたとしても、その後の学生の行動や努力の事実を認めることが重要であった。

資料

Partnership Nursing System^®を採用する精神科病棟に勤務する看護師のやりがい川口　めぐみ , 長谷川　美香 , 平井　孝治 21巻2号 , 2019年12月 , pp.13-21

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要　　旨

　PNS^®を採用する精神科病棟に勤務する常勤看護師12名に半構造化面接を実施し、看護師のやりがいから離職防止のための支援を検討することを目的とした。

　面接調査の内容を分析した結果、看護師のやりがいとして、8カテゴリーが抽出された。やりがいは、中心に【チームに必要とされる自分への自信】があった。また、【判断の迷いを解決できる安心】【患者・看護師お互いの安全を守り合える】【業務と責任の集中からの解放】は、看護提供方式が関係していた。残りの【自己研鑽へのやる気】【患者との信頼関係構築の満足感】【看護ケアの成果に対する充実感】【感情をコントロールできる心の強さ】を含め8つのやりがいは、お互いに関係しあい看護師の仕事へのやりがいを高めていた。

　精神科病棟に勤務する看護師の離職防止のためには、看護ケア提供時の看護提供体制整備および看護師の感情コントロール支援が重要であると考える。

介護老人保健施設で働くケア職員の転倒リスク因子に対する認識とその関連要因井上　菜緒 , 渕田　英津子 21巻2号 , 2019年12月 , pp.22-30

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Ⅰ．緒　　言

　我が国の総人口は、令和元年（2019）6月20日現在、126,237千人であり、そのうち65歳以上の高齢者人口は3,562万人、総人口に占める割合（高齢化率）は28.2％となっている（総務省統計局，2019）。高齢者は、加齢による身体機能の低下、認知機能の変化といった内的要因、運動機能に影響する疾患や薬物、屋内外での生活環境などの外的要因から転倒しやすい（水谷ら，2019）。実際に高齢者の転倒発生率は入院患者や施設入所高齢者では年間30〜60％であり（上内，2010）、転倒に伴う外傷は寝たきりの原因になる（水谷ら，2011）ことが報告されている。また、65歳以上の転倒は「不慮の事故」による死亡原因の20.7％を占め（厚生労働省， 2018）、骨折・転倒は要支援・要介護となる原因の12.1％を占めている（厚生労働省，2017）。転倒経験者は転倒に対する恐怖心から日常生活動作の範囲を狭めてしまう危険性が高く、高齢者自身のQOLを著しく低下させる（濱田ら，2015）。このように、転倒は高齢者の自立した生活を阻む危険因子の一つと推察でき、高齢者の転倒リスク因子を考慮することは重要な課題であると考えられる。

　施設形態ごとの転倒者率は、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム（ユニット型）、グループホーム、特別養護老人ホーム（従来型）、ケアハウスの順に高いこと（河野ら，2012）が示されている。また、高齢者の転倒事故の発生状況に関する研究では、居室や廊下での転倒発生率が高いこと（田中ら，2016）が明らかにされている。一方、認知症高齢者の転倒予防に関する看護職・介護職の認識に焦点をあてた研究では、病院における看護職と介護職の認知症高齢者の転倒予防に関する認識の相違点として、介護職は看護職に比べて、「どのような患者でも転倒は予防できる」や「状況に応じて身体拘束を行うことも必要だ」という回答者が多いことが示されている（杉山ら，2014）。

　しかし、介護老人保健施設の介護職・看護職が転倒リスク因子をどのように認識しているのかに焦点をあてた研究は見当たらない。そのため、本研究では転倒者率の高い介護老人保健施設における介護職・看護職の転倒リスク因子に対する認識の実態を知り、それらに関連する要因を明らかにすることを目的とする。