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Ⅰ.緒言
喉頭摘出者は喉頭の切除に伴い突然に発声機能を喪失する。そればかりではなく嚥下障害、味覚や嗅覚の喪失、永久気管孔への水の流入、吸気の加湿や除塵ができないなど、様々な器質的・機能的障害を併せ持つ。これらの障害は喉頭摘出者の手術前までの生活や自己像を脅かし、QOLを著しく低下させる1)〜4)。喉頭摘出者は代用音声の獲得や生活様式の変更などを必要とする。現在の発声に満足する者が手術後5年以上を経て5割を上回る5)、あるいは手術を受けて良かったと実感できるのは術後5年以上経ってからである6)という報告が示すように、その過程は前進と後退を繰り返し、数年単位の長い時間を要する。
このような喉頭摘出者に対する支援として期待されるのがセルフヘルプ・グループの活動である。セルフヘルプ・グループとは、なんらかの問題や課題を抱えている本人や家族が仲間同士で支え合う、自助・共助を軸としたグループである7),8)。セルフヘルプ・グループにおける支援の効用として、体験的知識に基づいているため具体的で実践的な情報が得られること、自分が他者を支援する力になることを知ることで自尊心を取り戻せること、体験を共有する当事者同士だからこそ可能な深い共感が得られることが言われている。セルフヘルプ・グループにおける支援は専門家による専門性に裏付けられた指導や教育の限界を超えたものである。これらの効用があることから、セルフヘルプ・グループは疾病や障害を持つ者のみならず、事故や犯罪の被害者、育児に悩んでいる親などさまざまな人々に対する支援として活用されている。喉頭摘出者もその例外ではなく、各県でセルフヘルプ・グループが活動を展開し、全国的にネットワークを形成している。
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