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I.はじめに
『図説わが国の慢性透析療法の現況』1)によると,慢性透析患者数は2014年末には32万448人と年々増加傾向にある.透析患者では,腎性貧血,尿毒症性低栄養,骨格筋減少・機能異常,運動耐容能の低下,易疲労感,活動量減少等により,生活の質(quality of life:以下,QOLと略す)の低下が認められる.長期透析によって心不全や低血圧などの合併症が発生し,患者のQOLをさらに低下させると指摘されている2).上月3)は,「透析患者は,4〜5時間の透析療法を週3回実施している.そのため,透析療法による時間的拘束や疲労感などの身体的制限により,透析療法実施日の身体活動量が低下してしまうことが多いと考えられる」と述べている.
このような問題に対処するため,近年,腎臓リハビリテーション(以下,腎リハと略す)という概念が提唱されてきた.腎リハとは,腎臓障害者に対して行う新たな内部障害リハビリであり,運動療法,薬物療法,栄養療法,教育,精神的ケアなどを要素とする包括的リハビリの1つである2).包括アプローチのなかでも,「運動療法」は重要な要素となる.上月3)は,「透析患者における運動療法の効果は,最大酸素摂取量の増加や透析効率の改善や運動耐容能の改善や筋力の増加」と述べている.また,日本透析医学会の「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」4)は,透析効率改善によると生命予後良好であることを示している.よって,運動療法を実施することで,日常生活における諸症状が改善し,日常生活動作(activities of daily living:ADL)のみならずQOLの改善が期待できる.
A病院では,今まで透析患者に推奨されていた運動療法は,非透析日に無理をしない程度に歩くなどの運動とされており,計画や実施されているかは個人に任せられていた.A病院の維持透析患者のなかには,高齢で活動量が低下傾向にあり,透析後半の血圧低下や下肢攣れ等の症状がみられる者も多い.そこで,2015年9月より,維持透析患者のQOL改善,身体機能の維持・向上を目指すことを目的に,透析中の循環動態の安定している患者4名に運動療法を1か月試みた.その結果,身体的評価では身体機能の改善がみられたが,透析効率は期間が短かったため改善がみられなかった.そこで,今回は対象患者を増やし,QOL・身体機能の維持および透析効率の改善に焦点をあて,運動療法継続を試みた.
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