日本内視鏡外科学会雑誌 26巻4号 (2021年7月)

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◆要旨:【目的】高度肥満症に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術におけるVeress needle(気腹針)による第一トロッカー挿入の安全性について検討する.【方法】当院にて行われた同手術について先行気腹の成功率,気腹針に起因する合併症の発生率などについて検討した.【結果】2014年6月から2020年9月までに138例に同手術を施行した.執刀医として11名の外科医が経験者の指導の下で気腹針挿入を行った.先行気腹の成功率は99.3%(137/138例)であった.気腹針に起因する損傷などの合併症はみられなかった.【結論】気腹針を用いた高度肥満症に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は,経験者の指導の下では安全性が高く安定した手術手技であると考えられた.

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◆要旨:患者は42歳,男性.下腹部痛,発熱の精査で当科を紹介され受診となる.CTで多発S状結腸憩室と骨盤内の直腸周囲に膿瘍形成を認めた.S状結腸憩室炎穿通に伴う直腸間膜膿瘍と診断し,超音波内視鏡下経直腸的ドレナージを施行し内瘻チューブを留置した.炎症所見の改善,膿瘍腔の縮小を確認し,処置後35日目に根治目的に鏡視下手術の方針とした.直腸S状部の直腸間膜と骨盤内左側腹膜が強固に癒着し,骨盤内腹膜も炎症性に肥厚,硬化し易出血性であったが,腹腔鏡下低位前方切除術を施行しえた.術後合併症なく経過し軽快・退院した.現在,退院後5か月経過しているが,直腸周囲膿瘍の再燃や排便機能障害は認めていない.

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◆要旨:65歳,女性.20XX年子宮平滑筋肉腫の診断で子宮全摘および両側付属器切除,補助化学療法としてドセタキセル+ゲムシタビン療法を4コース施行した.術後10年目に左腎転移に対して左腎摘出,11年目に右肺転移に対して右肺上葉切除,12年目に右下葉部分切除を施行した.13年目の腹部CTで膵尾部に25mm大の腫瘤を認め,精査にて子宮平滑筋肉腫膵転移と診断した.他部位への転移や周囲組織への浸潤所見を認めなかったため,脾動静脈温存を伴う腹腔鏡下脾温存尾側膵切除術(LSPDP)を施行した.子宮平滑筋肉腫はしばしば遠隔転移を認めるが,膵転移はきわめて稀である.LSPDPは低侵襲かつ臓器機能温存可能な術式であり,よい適応と思われた.

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◆要旨:患者は83歳,女性.前医で下部直腸癌に対し,術前補助放射線化学療法後に腹腔鏡補助下括約筋間直腸切除術(Lap-ISR)・左側方リンパ節郭清が施行された.術後1年で直腸脱を認めたため,Gant-三輪法-Thiersch法による治療が行われた.しかし,その術後3年で直腸脱が再発したため当院に紹介となった.経会陰手術後の再発であり,腹腔鏡手術を行う方針とした.術中所見からsuture rectopexyを選択し,癒着剝離のうえでintersphincteric spaceに滑脱した腸管を引き抜き,挙肛筋上間隙より頭側で仙骨前筋膜と縫合固定した.術後8日で退院し,術後約5か月間再発なく,便失禁も改善している.Lap-ISR後の直腸脱再発に対して確立した治療法はないが,本症例では腹腔鏡手術で安全に治療を遂行できた.

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◆要旨:症例は86歳,女性.主訴は直腸脱.受診時,直腸脱に加えて子宮脱,膀胱瘤の骨盤臓器脱を合併していた.同時手術を行う方針とし,院内の高難度新規医療技術等審査委員会で「ロボット支援下仙骨腟固定術と同時に行う場合に限ってのロボット支援下直腸挙上固定術」の実施承認後に本人および家族からインフォームド・コンセントを得た.全身麻酔下砕石位とし,当院婦人科と合同でda Vinci Siを用いた仙骨腟固定術と直腸挙上固定術(Wells変法)を同時に行った.手術時間6時間5分,出血量は18gであった.術後排尿時に迷走神経反射と思われる一時的な意識消失を認めたが保存的加療で軽快し,第14病日に自宅退院した.本邦で初めて骨盤臓器脱合併直腸脱に対してロボット支援下に仙骨腟固定術と直腸挙上固定術を同時に行った報告であり,安全に手術を完遂できた.

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◆要旨:症例は79歳,男性.貧血の精査目的に大腸内視鏡検査を施行したが挿入困難であったため,後日ダブルバルーン内視鏡を行い盲腸癌と診断した.身長168cm,体重93.8kg,BMI 33.7.腹部CT検査で,小腸は腹腔内右側,回盲部は左側へ変位し,SMV rotation signを認めた.腸回転異常症に合併した盲腸癌の診断で,腹腔鏡下に回盲部切除術を施行した.手術所見はmalrotation typeの腸回転異常症で,肥満により腸間膜脂肪織が肥厚していたが,3D-CT angiographyをもとに上腸間膜動静脈から回結腸動静脈を露出し,安全に血管切離,リンパ節郭清を施行しえた.近年,腸回転異常症を伴った大腸癌症例に対しても腹腔鏡手術を行う報告が増えてきている.今回,腸回転異常症を伴う盲腸癌に対する腹腔鏡手術において,術前3D-CT angiographyが非常に有用であった.

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◆要旨:上腸間膜動脈症候群(以下,SMA症候群)に対する腹腔鏡手術においてトロッカー配置の工夫を行った1例を報告する.【症例】85歳,男性.嘔吐を主訴に受診した.SMA症候群による誤嚥性肺炎の診断で入院し,保存的治療で軽快・退院した.2か月後に症状が再燃したため,腹腔鏡下十二指腸空腸吻合術を施行した.患者右頭側に置いたモニターと左下腹部の腹腔鏡用トロッカーを結んだ腹腔鏡の光軸を中心として,十二指腸をターゲットとした逆台形のトロッカー配置を行うことにより,良好な術野と操作性が得られた.【結語】SMA症候群に対する腹腔鏡下十二指腸空腸吻合術において,十二指腸をターゲットとしたparaxialセットアップのトロッカー配置が有用であった.

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◆要旨:症例は70歳,男性.C型慢性肝炎治療後の定期CT検査で下腹部正中に4cm大の腫瘍を指摘された.腸間膜由来の腫瘍を疑い,診断的治療として腹腔鏡下に手術を施行した.腫瘍は腸間膜血管に強固に癒着しており浸潤が疑われたが,腸管合併切除を行わずに腫瘍を摘出し,デスモイド型線維腫症の病理診断を得た.腹腔内デスモイド型線維腫症は非常に稀な腫瘍で標準治療は確立されていない.局所浸潤傾向が強いため,しばしば開腹下に他臓器合併切除を伴う広範切除が行われてきたが,近年では腹腔鏡手術や非手術療法の有効性も報告されている.腹腔内デスモイド型線維腫症の治療戦略について文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:非常に稀な盲腸に限局した腸管壊死を経験したため報告する.症例は61歳の女性で,前日からの右下腹部痛のために当院を受診した.急性虫垂炎と診断し,腹部症状が強かったため同日緊急手術を行った.肉眼的に虫垂は正常で,盲腸を中心とした虚血壊死を認めた.盲腸壊死と診断し,腹腔鏡下回盲部切除術を行い,術後22日目に自宅退院した.大腸で虚血を起こしやすい領域は脾彎曲部やSudeck's critical pointであるが,右側結腸でも虚血性腸炎を起こすことがあり,その場合は壊死型が多いと報告されている.血管リスクを伴う右下腹部痛では虚血性腸炎を鑑別に入れるべきであると思われた.

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◆要旨:われわれが行っている腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)における効率的手術室運営の取り組みと経済的有用性について報告する.【方法】LCは医師2人で施行し,看護師は器械出しは入らず外回り1人とした.また,急性胆囊炎は発症早期のLCを第一選択としている.これらの取り組みの経済的な評価として,外保連試案による人件費の検討を行った.【結果】1つの手術室で3例/日のLCを施行することが可能となった.また,LC1例につき54,180円の人件費削減となり,年間10,565,100円(平均195例)の削減となる計算となった.【結論】LCにかかわる人員・手術機器を必要最低限とすることで,手術室を効果的に運営し経済的有用性がある可能性が示された.

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◆要旨:【目的】胸腔鏡下心膜開窓術において,より有効な心囊ドレナージとなるために当科で試行している手技の工夫について概説する.【方法】3ポート左胸腔鏡下でアプローチする.効率よく心囊液が心囊外に排出されるよう横隔神経背側と心囊底面の2か所に孔を作成している.また,その際には出血や肉芽形成による開窓孔閉鎖を予防するためにベッセルシーリングデバイスを用いている.【成績】これまで心タンポナーデの2症例に施行し,術後早期の合併症や長期経過における心囊液の再貯留はみられていない.【結論】本術式症例をさらに積み重ねて短期,長期成績を評価し,向上させられるようなさらなる創意工夫を続けていくことが重要であると考える.

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目次

欧文目次

投稿時のチェックリスト

編集後記 坂井 義治
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 本誌の編集委員長は理事長が務めることになっているため,2020年12月に渡邊昌彦前理事長から編集委員長を引き継ぎました.どうぞ宜しくお願い致します.

 北野正剛名誉理事長の下で編集委員を5年間経験していますが,久しぶりに査読を担当することになり,貴重な症例報告を新鮮な気持ちで読んでいます.本号には原著1編,症例報告8編,私の工夫2編が掲載されています.これまでも多くの編集委員が症例報告の重要性を繰り返し指摘されています.症例報告の論文投稿にあたっては,以下の3点に留意してください.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
26巻4号 (2021年7月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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