日本内視鏡外科学会雑誌 26巻5号 (2021年9月)

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◆要旨:症例1は70歳,男性.半年前より上腹部膨隆が出現し当科受診となった.上腹部正中に直径3cmのヘルニア門を認め,CT検査にて白線ヘルニアと診断した.症例2は51歳,男性.20年前より上腹部に膨隆を自覚していたが徐々に増大し,疼痛と熱感を伴うようになった.また両側鼠径部に膨隆も出現したため当科受診となった.上腹部正中に直径3cmのヘルニア門を認め,CT検査にて白線ヘルニアと両側鼠径ヘルニアを認めた.いずれもtransabdominal preperitoneal approach(以下,TAPP法)で修復し,現在まで問題なく経過している.TAPP法はメッシュ関連合併症を避けうる点で非常に有用な術式と思われる.

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◆要旨:15歳,男児.肝機能障害,電解質異常,および嘔吐に伴う体重減少で精査入院となった.絶食にも関わらず胆汁性嘔吐が続き,上部消化管閉塞が疑われ当科に紹介となった.腹部CTおよび上部消化管造影検査では上部空腸で途絶を認めるものの,Treitz靱帯の形成が示唆され,結腸の走行異常を認めないことから腸回転異常症は否定的であり,傍十二指腸ヘルニアなどの内ヘルニアや空腸起始部でのバンド形成などの機械的閉塞を疑い手術を施行した.

 手術所見では,Treitz靱帯に相当する部位で異常に拡張した十二指腸を認めた.回腸間膜背側で腸間膜を貫くように癒着した空腸が閉塞起点を形成し,閉塞起点口側の空腸は著明に拡張していた.腹腔鏡下に拡張した十二指腸の周囲,閉塞起点口側から閉塞起点肛側まで腸間膜の背側を剝離し,屈曲した空腸を上行結腸の右側へ引き出し閉塞を解除した.術後1年経過するが再発を認めていない.

 本症は右傍十二指腸ヘルニアに類似する病態で発生したものと考えられたが,①空腸を跨ぐように走行する回盲部の腸間膜が空腸に癒着して閉塞起点を形成し,その口側と肛側に空腸が存在する形態である点,②ヘルニア囊を形成することなく生理的癒着による異常屈曲を生じている点で,典型的な腸回転異常症の分類には該当せず,特殊型と診断した.

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◆要旨:患者は64歳,男性.自己免疫性膵炎による閉塞性黄疸に対して内視鏡的逆行性胆道ドレナージ術(ERBD)を施行した.3か月後に腹痛が出現し,症状は数日で改善したが,1か月後の腹部CTでERBDステントの不完全逸脱と十二指腸穿通を認めたため,腹腔鏡手術を施行した.腹腔鏡下結腸右半切除術の後腹膜アプローチに準じて結腸間膜と後腹膜を剝離して十二指腸部穿通部に到達した.穿通部は後腹膜内でステントに沿って瘻孔を形成しており,ステント抜去したのちに瘻孔の閉鎖を行った.ERBDステントの不完全逸脱による十二指腸穿通に対して腹腔鏡下でのステント抜去術と閉鎖術を施行した稀な症例であり報告する.

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◆要旨:症例は成長発達に問題のない6歳,男児.ペダルなし自転車で転倒した際にハンドルで心窩部を強打し受傷.同日より腹痛と嘔吐を認めた.CTでTreitz靱帯近傍の空腸の壁内に血腫を認め,それに伴う通過障害をきたしていた.禁食で経過をみていたが水分摂取でも嘔吐があり,保存的治療継続困難と判断し第11病日に手術を行った.腹腔鏡下に空腸を切開して血腫の吸引を行った.術中に内腔の通過障害の有無を確認し,切開部位を縫合して手術を終了した.術後は12日目に退院となった.保存的治療を選択した場合でも手術時期を逸することのないよう,慎重な経過観察が必要であると考えられた.また,腹腔鏡下に血腫除去を行い,良好な結果を得ることができた.

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◆要旨:症例は73歳,男性.22年前にメッシュプラグを用いたヘルニア根治術が施行されていた.左鼠径部の痛みと腫脹を訴え,精査目的に行ったCTや下部消化管内視鏡にてメッシュプラグによるS状結腸穿通,腹壁膿瘍の診断となり手術の方針となった.手術では腹腔鏡操作と鼠径部からの前方アプローチにてメッシュプラグを含んだS状結腸を腹壁から離断した.その後,鏡視下にS状結腸を脱転し,メッシュプラグを含んだS状結腸を部分切除した.ヘルニア手術で使用されるメッシュの腸管への穿通はしばしば報告されている.このような症例に対し,腹腔鏡手術は骨盤壁の解剖を拡大視でき,異物を含んだ腸管を腹壁から安全に剝離することが可能と考えられた.

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◆要旨:症例は41歳,男性.健診の胃透視で食道粘膜下腫瘍を指摘され,当科紹介となった.境界明瞭な6.0×2.5cmの腫瘍で,精査の結果,平滑筋腫または神経鞘腫が疑われた.腫瘍径は大きいが,機能温存を目的として胸腔鏡下腫瘍核出術の方針とした.術中,腫瘍と粘膜層との境界の判別が困難だったため,消化管内視鏡下に色素を混じた局注を粘膜下層に行うことで,核出術が施行可能となった.術後経過は良好だった.平滑筋腫の病理診断であった.巨大食道粘膜下腫瘍に対する核出術は手技困難であり報告は少ないが,本例では粘膜下層への局注を併用することで,胸腔鏡下核出術が安全に施行可能となった.

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◆要旨:症例は32歳,女性.腹部違和感,食欲不振を主訴に近医を受診した.腹部超音波検査で上腹部に囊胞性病変を指摘され,当院を紹介された.腹部CT検査で肝左葉,膵上縁および胃小彎に囲まれた領域に約10cm大の囊胞性病変を認めた.内部は均一な低吸収域を呈し,充実成分は認めなかった.MRI検査で膵管との交通はなく,超音波内視鏡検査で多囊胞性成分を認めた.以上の所見より小網由来の囊胞性リンパ管腫と診断し,腹腔鏡下小網腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的には囊胞性リンパ管腫の像を呈していた.小網由来の囊胞性リンパ管腫は稀であり,また腹腔鏡下に安全に切除しえたため,文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:症例は65歳,女性.直腸癌に対して骨盤側方リンパ節郭清を伴うロボット支援下直腸切除術を施行した.術後3日にドレーンを抜去した.術後経過で嘔吐が出現し,術後7日の造影CTでドレーン抜去部の皮下に小腸の嵌入を認め,ポートサイトヘルニア(PSH)による術後腸閉塞と診断した.用手的に還納困難であったため,同日緊急手術を施行した.ドレーン抜去部で開腹し,脱出腸管の還納と腹壁の縫合閉鎖を行った.腸切除は不要であった.PSHの要因として,ドレーン抜去部では筋膜縫合を付加していないことに加え,長時間手術およびロボットアームの着脱を複数回行ったことでポートサイトに負荷がかかり,ポート孔が開大していた可能性が考えられた.

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投稿時のチェックリスト

編集後記 辻仲 眞康
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 2021年1月から編集委員を拝命いたしました,自治医科大学附属さいたま医療センターの辻仲眞康と申します.わが国を代表する領域横断的かつ先駆的な日本内視鏡外科学会の編集委員会のメンバーに加えていただいたことは,身に余る光栄です.しかし,同時に本学会を支える和文誌の査読編集を行うということに責務の重大さを認識しております.隔月に開催される本誌編集会議(web方式)では,自身の専門領域の諸先輩方や他領域の先生方を交えて討論が行われます.その場では,今まで自分が考えもしなかった切り口や視点に基づく活発な議論が展開されており,投稿された論文の評価を行うことにとどまらず自身の思考が研ぎ澄まされていくことを実感しています.

 本号は,8編の症例報告を掲載しております.稀な疾患や困難症例に対して創意工夫に富むアプローチで腹腔鏡下手術を行った報告,治療関連合併症や複雑な病態に対して腹腔鏡下で修復した報告,およびロボット支援下手術後早期に発生した合併症の報告など,いずれも臨床的に有用性が高く日常診療に直結した内容となっています.ぜひ一読していただきたく存じます.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
26巻5号 (2021年9月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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