日本内視鏡外科学会雑誌 25巻5号 (2020年9月)

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◆要旨:[目的]腹腔鏡下十二指腸潰瘍穿孔手術に対するERASパスの安全性と有用性を検討した.[方法]2005年〜2017年に外科治療を施行した十二指腸潰瘍穿孔例のうち,腹腔鏡下手術完遂後にERASパスを適応したものから,開腹移行例およびERASパス非適応例を除外し,術後食事開始日,在院日数,合併症,再入院,ERASパスの完遂率および,バリアンスを検討した.[結果]腹腔鏡下手術完遂例88例のうち,ERAS適応例82例を検討した.術後食事開始日は中央値2日,術後在院日数は中央値4.5日であった.手術関連死亡はなく,ERASパス完遂率は62%であった.[結論]腹腔鏡下手術にERASパスを使用することは早期経口摂取と早期退院につながる可能性が示唆される.

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◆要旨:症例は62歳の女性で,胃体下部の早期胃癌の診断で手術を施行した.膵上縁のリンパ節郭清で,総肝動脈頭側に広い範囲で膵実質を認めた.術前には門脈輪状膵の存在が念頭になく,膵実質を#8aリンパ節と捉えて郭清を進めていたが,途中で色調の違いにより膵実質と認識できた.膵実質の損傷はなく,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.CT画像を確認すると,門脈は完全に膵実質で包まれており,門脈輪状膵の所見であった.これまでに門脈輪状膵を伴う症例に対する胃癌手術の報告はないが,その存在は膵上縁リンパ節郭清の際に膵損傷に至る危険性を有すると考えられるため,その経験を報告する.

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◆要旨:傍ストーマヘルニアは人工肛門造設術において頻度の高い合併症の一つである.これに対し近年,腹腔鏡下Sugarbaker法の有用性が報告されている.しかし,これで多く用いられているParietexTM composite parastomal mesh Sugarbaker(indirect)法用:center band type (Covidien社)は,メッシュ破損の可能性があるとの理由で回収対象製品であり,現在使用できない.今回,われわれはMiles手術後の傍ストーマヘルニアに対して,通常は腹壁瘢痕ヘルニアに使用する,癒着防止のためのコラーゲンフィルムが付いたSymbotexTM composite mesh(Covidien社)を用いて腹腔鏡下Sugarbaker法を行ったので報告する.SymbotexTM composite meshを二つ折りに成形して使用することで強度が増し,さらにコラーゲンフィルムの効果で挙上腸管と腹腔内臓器双方への癒着防止が期待でき,有用な術式と思われる.

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◆要旨:症例は78歳,女性.労作時呼吸困難を主訴に当院を受診した.腹部造影CTでMorgagni孔ヘルニアおよび食道裂孔ヘルニアを認め,一期的に腹腔鏡下両ヘルニア修復術を行った.手術は5ポートで行い,Morgagni孔ヘルニアに対しては,ヘルニア囊を可及的に切除した後,ヘルニア門が7cm径と大きかったため,ヘルニアメッシュでの修復を行った.食道裂孔ヘルニアに関しては,ヘルニア門の開大は小さく,直接縫合閉鎖のみとした.Morgagni孔ヘルニアと食道裂孔ヘルニアの併存例は稀であり,同疾患に対する腹腔鏡下アプローチは,脱出臓器の還納やヘルニア囊の観察などが容易であり安全で低侵襲な治療法の一つと考えられた.

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◆要旨:症例は77歳の男性で,貧血精査目的に紹介された.精査の結果,右腎回転異常を伴う上行結腸癌と診断し,腹腔鏡補助下結腸右半切除術(D3郭清)を施行した.後腹膜アプローチを先行し,右側結腸間膜の授動を行った.術前CT検査より腎門部は腹側を向き,総腸骨動脈分岐部レベルに位置していたことがわかっていたので,副損傷を回避するため頭側にあたる十二指腸付着部から腸間膜根の切開を開始し腎前筋膜上を剝離した.腎回転異常は解剖学的変位を伴うことが多く,術前の十分な解剖学的検討が重要である.また,本症例では十二指腸付着部を腸間膜根切開開始の指標にすることで,安全な手術が可能であった.

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◆要旨:直腸腟瘻は直腸と腟の間に形成された瘻孔を介して直腸内容が腟へ漏出する病態である.直腸癌術後の直腸腟瘻は比較的稀な合併症ではあるが,治療に難渋することも多い.今回,直腸癌術後直腸腟瘻に対し,経会陰的アプローチに腹腔鏡を併用した薄筋弁充塡術を施行し,良好な転帰を得た2例を経験したので報告する.手術方法は経会陰的に直腸前壁と腟の間を剝離し,瘻孔を切除する.有茎薄筋弁を採取した後,腹腔鏡操作で腹膜翻転部を開放し,会陰操作の剝離層と連続させる.薄筋弁を腹腔鏡で腹腔側へ引き上げ,遠位端を腹膜に縫合固定する.腹腔鏡併用でより確実に瘻孔切離部に薄筋弁を留置・固定でき有用であった.

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◆要旨:症例は80歳男性で,腹腔鏡下胆囊摘出術の既往がある.CTで総胆管結石を指摘され,内視鏡的胆道結石除去術が施行された.経過観察画像で肝門部胆管に胆管癌を疑う腫瘤性病変を指摘され,胆管癌疑いの診断で腹腔鏡下胆管切除,胆道再建術を施行した.切除した総胆管に存在した腫瘤の内部には,非金属製非吸収性クリップ(NAPC: Hem-o-Lok®)を認め,クリップに起因する炎症性偽腫瘍と診断した.肝胆膵領域においてNAPCにより炎症性偽腫瘍を形成した報告は,われわれが検索し得た限りない.一方,腹腔鏡下肝切除術の普及に伴い,肝胆膵領域でもNAPCの使用頻度が増えている.腹腔鏡下手術既往のある患者では,NAPC等による炎症性偽腫瘍の可能性を考慮し診療にあたることが必要であると考えられた.

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◆要旨:患児は1歳7か月の男児で,心房中隔欠損症にて当院小児循環器科通院中であった.胸部造影CT検査にてMorgagni-Larrey孔ヘルニアと診断された.内径5mmのEZトロッカー3本を刺入したEZアクセスミニタイプ®(八光)を臍に装着し,単孔式腹腔鏡下に修復術を行った.ラパヘルクロージャー®(八光,以下LPEC針)を補助的に用いて非吸収糸による水平マットレス縫合4針と結節縫合3針にてヘルニア門を直接閉鎖した.術後3日目に退院となり,以後再発を認めていない.Morgagni-Larrey孔ヘルニアに対する単孔式腹腔鏡下修復術は,LPEC針を用いることで簡便で確実に施行可能であり,低侵襲かつ整容性に優れた術式と考えられた.

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◆要旨:症例は53歳男性.3日前から持続する右鼠径部痛と腫脹を自覚し,症状増悪のため近医を受診.右鼠径部ヘルニア嵌頓が疑われ当科を紹介受診した.腹部超音波検査,腹部CTで右大腿ヘルニア虫垂嵌頓(De Garengeot hernia)と診断し,緊急手術を施行した.嵌頓した虫垂に炎症所見と周囲腹水を認め,メッシュを留置した際の感染リスクを考慮し,腹腔鏡下虫垂切除と嵌頓腹膜の翻転結紮を施行した.術後28日目に待機的にヘルニア修復をTAPP(transabdominal preperitoneal repair)法にて行った.二期的腹腔鏡下ヘルニア修復術は,De Garengeot herniaの治療において,メッシュ感染や根治性の点で有用な治療選択肢と考えられたため報告する.

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◆要旨:症例は46歳女性,子宮筋腫増大の精査中に,単純CTで膵尾部腫瘤を指摘された.Dynamic CTで膵尾部の足側に突出し,造影効果を伴う28mmの辺縁平滑充実性楕円形腫瘤を認めた.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で中等度高信号であった.EUS-FNAでは複数回の腫瘍穿刺にても紡錘形細胞を伴う線維性間質組織を少量のみ認めた.術前診断は膵神経内分泌腫瘍疑いで,腹腔鏡下脾合併膵体尾部切除術を予定した.術中所見では,膵と1cm幅で連続するのみの有茎性腫瘍であり,腹腔鏡下膵部分切除術を施行した.術中迅速診断で悪性所見を認めず,最終病理診断は膵過誤腫であった.

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◆要旨:腹壁ヘルニアに対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術のTEP (totally extraperitoneal repair)の手技を応用した内視鏡下腹膜外修復法の周術期手術成績を報告する.2018年より計13例(男5/女8)の原発性腹壁ヘルニアまたは腹壁瘢痕ヘルニアに施行し,平均手術時間,出血量は,それぞれ212分,9.7mlであった.2例で術中開腹移行したが,術中術後に重篤な合併症はみられなかった.現在までヘルニア再発やメッシュ関連合併症,慢性疼痛などは認めず,短期手術成績は概ね良好と思われた.今後,臨床経験を蓄積し,本手術が腹壁ヘルニアの患者にとり,満足度の高い手術へと発展することが期待される.

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◆要旨:症例は72歳,男性.腹腔鏡下幽門側胃切除後臍創部の腹壁瘢痕ヘルニアに対する手術目的に紹介となり,腹腔鏡下手術を施行した.臍創部に6×7cmのヘルニア門を認め,transabdominal preperitoneal approach(以下,TAPP法)に準じて,Parietex ProGripTMを腹膜前腔に留置し,修復した.腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔鏡下手術は,多くが腹腔内留置型メッシュを用いた方法で施行されている.しかし,腹腔内へのメッシュ留置によるメッシュ感染や癒着に伴う腸閉塞,腸管皮膚瘻,またメッシュ固定に伴う急性,慢性疼痛などの合併症が報告され始めている.今回われわれは, 本邦では未施行の,Parietex ProGripTMを用いTAPP法で修復した腹壁瘢痕ヘルニアの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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編集後記 井上 貴博
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 世界中で蔓延をしているCOVID-19や日本全国をおそった豪雨など世の中では予期せぬ様々な現象が起きています.命を落とされた方のご冥福をお祈りするとともに,甚大な被害を受けられた方々が少しでも早く立ち直ってくれますよう祈っています.

 むかし中国では主権は天が把握しており,己に代わって君主に人民を統治させていたという考えがありました.そして天変地異が起きたのは天の仕業,つまり神様が怒ったからだとされていました.天は常に下界を見下ろしていて,君主が悪政を行うと,洪水や飢饉を起こして君主に警告を発していたとされています.もしかして今の世の異変は天が君主に警告を発しているのかもしれませんね.これはわが国のみならずお隣の国でもCOVI-19の感染や大洪水が起きており,政治のトップの交代時期になってきたのかもしれません.政治家は自分の足元をもう一度見直して,その姿勢を正してほしいと思います.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
25巻5号 (2020年9月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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