日本内視鏡外科学会雑誌 20巻6号 (2015年11月)

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◆要旨:80歳以上の高齢者胃癌患者に対する腹腔鏡下胃全摘術の安全性について検討した.2006年1月〜2014年7月に胃癌に対して腹腔鏡下胃全摘術を施行した症例を対象に,80歳以上の31例(高齢者群)と80歳未満の158例(コントロール群)に分けて患者背景,手術成績,術後早期合併症を比較検討した.腹腔内合併症の頻度は,高齢者群とコントロール群の間で有意な差は認めなかった.全身合併症は,高齢者群で術後肺炎が12.9%と有意に多く(P=0.02),年齢が独立したリスク因子であった.筆者らは高齢者胃癌に対して腹腔鏡下胃全摘術を積極的に導入しているが,80歳以上の高齢者では術後の呼吸器合併症の頻度が高いことを念頭に置く必要がある.

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◆要旨:腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)における術前経口補水療法(PORT)の安全性,有用性について前向き比較研究を行った.2012年3月より2013年6月までにLCを施行した100例を対象として,単純ランダム割り付けにて輸液療法群(輸液群)とPORT群(補水群)に分けて検討した.LCは,気腹下で3ポートにて行った.患者満足度評価の目的で,アンケート調査を行った.輸液群と補水群で手術時間,出血量,術後在院日数に有意差を認めなかった.アンケートより補水群は,輸液群に比べて術前の口渇感が少なかった.LCにおけるPORTは,術前絶飲食下の輸液療法と同等の安全性が確認され,アンケート調査より患者の満足度も高かった.

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◆要旨:[目的]腹腔鏡下胃切除術(LG)において肝挙上法が術後肝機能に及ぼす影響について検討する.[方法]対象は2010年9月〜2013年5月に胃癌に対してLGを施行した277例.T字型ペンローズを用いた吊り上げ法,ペンローズの中点を横隔膜脚に固定する縫着法,牽引用リトラクターによるスネーク法の3種肝挙上法における術後AST,ALT,T-Bil値の変化率について比較検討した.[結果]AST,ALT変化率は縫着法・スネーク法で吊り上げ法より,T-Bil変化率は縫着法で他法より有意に低値であった.多変量解析では吊り上げ法,BMI高値が肝障害をきたす独立した因子であった.[結論]術後肝障害予防の観点からは,縫着法は3種挙上法のなかでは最も理想的である可能性が示唆された.

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◆要旨:[目的]手術難度の客観的な評価は腹腔鏡下肝切除術の安全な導入,展開に必要である.当科の腹腔鏡下肝切除術(HALS, Hybridを除く)の短期手術成績を用いてdifficulty scoring system(Banら.JHBPS, 2014)の妥当性を検証した.[方法]2004年12月〜2014年12月の腹腔鏡下肝切除術74例を対象とし,後ろ向きに検討した.[結果]総合点を3点以下と4点以上の2群に分けて検討すると,手術時間と開腹移行比率,術後合併症頻度に有意差を認めた.[結論]当科の症例においてもdifficulty scoring systemは手術難度を示す有効な指標と考えられた.

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◆要旨:患者は78歳,男性.35年前に遺伝性出血性毛細血管拡張症と診断された.5年前から胃出血を繰り返すようになり,内視鏡的止血術および輸血療法を繰り返していた.出血頻度の増加による外科的治療の適応に関して,当科に紹介となった.上部消化管内視鏡検査では,胃全域に拡張血管が存在し,体下部小彎側の拡張血管から出血を認めた.難治性再発性胃出血と判断し,腹腔鏡補助下幽門側胃切除術,Roux-en Y再建を施行した.術後出血などの合併症は認めず,経過良好で術後12日目に退院した.遺伝性出血性毛細血管拡張症の難治性出血例に対して腹腔鏡補助下胃切除術を施行した報告は極めて少ないが,外科的治療の選択肢の1つと考えられた.

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◆要旨:患者は35歳,男性.移動性盲腸の軸捻転にて入院となり,保存的に症状は改善したものの,便通異常を反復しており,外科的治療が選択された.腹腔鏡下盲腸固定術が施行され,術後経過は良好であった.移動性盲腸は,右側結腸が後腹膜へ固定されず,腹痛,腹部不快感,便秘,悪心・嘔吐など多彩な症状をきたす疾患である.保存的治療に抵抗性の場合,外科的治療が選択されるが,腹腔鏡下手術の報告例はまだ少ない.今回筆者らは,腹腔鏡下盲腸固定術を施行し,良好な結果が得られた移動性盲腸の1例を経験したため,本邦報告例の検討とともに,文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis:IMP)は腸間膜静脈硬化に起因した血流障害による慢性虚血性大腸病変とされ,自己免疫疾患や漢方薬の長期内服が原因の1つとされている.腹痛やイレウスを起こし持続する場合には原因腸管の切除が必要となる.当院では2006年から2014年の間に3例のIMPに対し手術を施行した.症例はすべて女性で,それぞれ56歳,78歳,54歳であった.全例イレウス症状をきたしており,盲腸から左半結腸まで病変が拡がっていたため腹腔鏡補助下結腸亜全摘術を施行した.全例とも術後経過は良好で,現在も再発することなく存命中である.IMPは良性疾患であるが病変が広範囲にわたることもあり,腹腔鏡下手術のよい適応であった.

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◆要旨:妊婦に対する虫垂切除の術式は,分娩時の腹圧上昇や妊婦・胎児への負担軽減を考えると腹腔鏡下手術が望ましいが,その報告例は少ない.今回筆者らは,妊娠15週の妊婦に対し腹腔鏡下虫垂切除術を安全に施行できた.患者は37歳,女性.妊娠15週に増悪する腹痛に対して,腹部CT検査で急性虫垂炎と診断し手術を行う方針とした.出産時の影響を考慮し,また妊娠15週で子宮底が臍下にあり視野確保可能と判断し,腹腔鏡下手術で虫垂を切除した.術後経過も問題なく,術後5日目に退院となった.今回の症例で,腹腔鏡下虫垂切除は妊婦に対して週数によっては十分安全に施行できると考えられた.

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◆要旨:腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)後,6年9か月を経て発症した遅発性メッシュ関連膿瘍の1例を経験した.抗菌薬投与や経皮的膿瘍穿刺術により,一時的には軽快を得られたが再燃を繰り返した.術後10年目にメッシュ除去術を施行した.下腹部正中切開による腹膜外アプローチで腹膜前腔に到達し,メッシュと固定具を摘出した.除去術後1年が経過し,膿瘍の再燃およびヘルニアの再発を認めていない.遅発性メッシュ感染の原因特定は困難であり,保存的治療は奏効し難い.腹腔鏡下手術は鼠径部切開法に比べて感染が起こりづらいとされているが,膿瘍形成が明らかになった際には,メッシュと固定具の摘出が最も有効な治療法と考えられた.

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◆要旨:後腹膜から発生するリンパ管腫は比較的稀といわれており,閉鎖孔に発生した報告はない.今回,閉鎖孔に発生したリンパ管腫に対し腹腔鏡下切除を行った1例を経験したので報告する.症例は27歳,男性.左下肢の痛みやだるさ,しびれを主訴に受診した.CT,MRIにて左閉鎖孔内に55mm大の単房性囊胞腫瘤を認め,リンパ管腫が疑われ,腹腔鏡下腫瘍切除術を行った.腫瘍は左閉鎖孔を占拠し,閉鎖神経を背側に圧排していた.神経,血管を温存し腫瘍を摘出した.切除後,下肢の症状は改善した.病理組織学的にD2-40抗体陽性でリンパ管腫と診断した.脈管,神経が複雑な閉鎖孔の腫瘍に対しても,腹腔鏡下手術は有用であった.

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◆要旨:喉頭切除後に生じた胸部食道癌に対して胸腔鏡下に切除,胸腔内再建を行った症例を経験したので報告する.患者は76歳,男性.喉頭癌で8年前に放射線治療と喉頭全摘術を受けていた.術後フォロー目的に行われた上部消化管内視鏡検査で胸部食道癌が発見された.Lt, cT1b, N0, M0, cStage Iの術前診断で,胸腔鏡下食道切除および胸腔内吻合を施行した.術後経過は良好で合併症はなく,再発なく生存中である.胸腔鏡下食道切除の再建は頸部創から行われることが多いが,喉頭癌の治療後では頸部操作が困難なことが予想される.胸腔鏡下オーバーラップ法による胸腔内食道胃管吻合は低侵襲で有用と考えられた.

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◆要旨:患者は72歳,男性.既往に陳旧性心筋梗塞と完全内臓逆位症があり外来フォローされていたが,ふらつき・黒色便の出現とともに著明な貧血(Hb 6.1g/dl)を指摘された.上部消化管内視鏡検査にてびまん性胃前庭部毛細血管拡張症と診断され出血源と考えられた.APC焼灼術を繰り返し行ったが出血コントロール困難で,外科的切除の方針となった.術前3D-CT画像から血管亜型と温存すべき心臓へのバイパス血管の走行を把握し,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.冠動脈バイパス術の既往がある完全内臓逆位症を伴った症例に対してグラフト血管を温存した腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した報告例はなく,文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:縦隔神経鞘腫に対する手術では,神経切断に伴う神経障害が起こると患者の生活の質は低下する.今回,縦隔神経鞘腫に対して,胸腔鏡下被膜内核出術を施行し,良好な結果を得た.症例は男性3例,女性2例,平均年齢44.4歳であった.いずれも術前の胸部CT,MRIで神経鞘腫と診断し,手術を施行した.腫瘍の被膜を切開し,腫瘍を露出させた.腫瘍と被膜との剝離の際は神経の電気,熱損傷を避けるために,極力電気メスを使用せずに鈍的に剝離することで,神経障害を残すことなく完全摘出可能であった.胸腔鏡下被膜内核出術は,腫瘍摘出後の被膜からの出血量が多くなるなどの問題点があるが,神経機能温存が期待できる低侵襲な手術である.

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日本内視鏡外科学会への入会について

EVENT NEWS

投稿時のチェックリスト

編集後記 小澤 壯治
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 私は平成16年から平成27年までの12年間にわたり本誌の編集委員を務めさせていただきました.担当いたしました第9巻から第20巻を振り返ってみますと,第9巻から第14巻までは「特集」が組まれていました.1年間に出版する6号のうち,最多は5回に「特集」が企画されましたが,第14巻の1回を最後に「特集」は誌面からなくなりました.「原著」,「症例報告」,「手術手技」,「私の工夫」,これら4種類の論文の合計本数を計算すると,第13巻までは41本から58本でありましたが,第14巻以後では66本から89本と増加しました.採用論文数からみましても「特集」以外の論文数の増加は,本誌への投稿論文数の増加すなわち会員からの認知度の上昇を意味して喜ばしい現象ですが,編集委員の編集作業量が膨張して嬉しい悲鳴をあげることにもなりました.

 投稿された論文はどれも興味深い内容で拝読するのが楽しみでした.論文を書き慣れた先生,またはしっかりと上級医に指導されたと思われる先生が執筆した原稿はすらすらと読むことができて査読者としては楽でした.一方,投稿規定から逸脱した原稿,新知見が乏しい原稿,研究方法や解釈が正しくない原稿などは査読者泣かせでした.忙しい臨床の合間に論文執筆をした執筆者の努力になるべく報いたいという思いと,科学的であるべき大原則を維持すべしという考えの狭間で心を落ち着かせながら評価をしてきました.

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第28回日本内視鏡外科学会総会を以下の通り開催いたします.会員の皆様には多数ご参加いただきますようお願い申しあげます.

第28回日本内視鏡外科学会総会

会長  松田 公志

会 期:2015年12月10日(木)〜12日(土)

     (10日朝からプログラム開始します)

会 場:大阪国際会議場

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
20巻6号 (2015年11月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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