Heart View 22巻7号 (2018年7月発行)

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特集　脂質代謝異常と循環器疾患

企画にあたって山下　静也 22巻7号 , 2018年7月 , pp.611-611

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診る　脂質異常症と冠動脈疾患　わが国の疫学研究から平田　あや , 岡村　智教 22巻7号 , 2018年7月 , pp.612-618

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＜Point＞1 低比重リポ蛋白(low density lipoprotein:LDL)コレステロール140～160mg/dL以上から冠動脈疾患のリスクが上昇する。スタチンなどでLDLコレステロールをコントロールできたら、次の管理目標はnon-HDLコレステロールとなり、トリグリセライド(triglyceride:TG)の管理を検討する。2 高比重リポ蛋白(high density lipoprotein:HDL)コレステロールの低値は動脈硬化性疾患のリスクを上昇させるが、治療のターゲットとすべきかどうかは明確ではなく、並存するLDLコレステロールやTGの値に着目して治療方針を決定する。高HDLコレステロール血症の一部には機能低下型のものが混在している可能性があり、既往歴や家族歴を慎重に聴取し、動脈硬化が進展している徴候がないか確認する。3 LDLコレステロールや総コレステロール(total cholesterol:TC)が低い群で冠動脈疾患以外のいくつかの疾患の死亡率が高くなることが観察されるが、多くはコレステロール測定時に保有していた疾患の影響による｢因果の逆転｣で説明できる。

診る　脳血管疾患と脂質　疫学研究から高橋　務 , 松本　昌泰 22巻7号 , 2018年7月 , pp.620-625

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＜Point＞1 スタチンによるLDL コレステロール低下療法は，アテローム血栓性脳梗塞の発症を低下させる。2 スタチンによるLDL コレステロール低下療法は，脳出血発症を増加させない。3 スタチン＋エゼチミブやPCSK9 阻害薬によるLDL コレステロール低下療法は，脳梗塞発症を低下させる。

診る　動脈硬化惹起性リポ蛋白と動脈硬化促進のメカニズム石井　秀人 , 吉田　雅幸 22巻7号 , 2018年7月 , pp.626-632

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＜Point＞1 糖尿病やメタボリックシンドロームの血液中ではsdLDLやレムナントが増加する。2 sdLDLは酸化LDLのよい材料となる。3 レムナントは酸化されなくともマクロファージに取り込まれる。

診る　オメガ3系多価不飽和脂肪酸およびその代謝産物の抗動脈硬化作用篠原　正和 , 平田　健一 22巻7号 , 2018年7月 , pp.633-638

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＜Point＞1 観察研究において、オメガ3系多価不飽和脂肪酸摂取量が多い集団において、動脈硬化疾患が少ない。2 わが国で実施されたオメガ3系多価不飽和脂肪酸を用いた介入試験では抗動脈硬化作用が証明され、不安定プラークの安定化も確認されるが、海外での研究では抗動脈硬化作用に関して明瞭な結果が得られていない。3 オメガ3系多価不飽和脂肪酸から炎症収束性脂質メディエーターが産生され、炎症収束プロセスを制御している。

識る　家族性高コレステロール血症などの原発性高脂質血症と動脈硬化石橋　俊 22巻7号 , 2018年7月 , pp.639-643

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＜Point＞1 家族性高コレステロール血症は低比重リポ蛋白(low density lipoprotein:LDL)受容体かその関連遺伝子の異常に起因し、未治療のホモ接合体は幼少時から冠動脈疾患を発症し、ヘテロ接合体も男性で30歳代、女性で50歳代から冠動脈疾患を発症する。2 家族性III型高脂血症はアポEの異常にほかの要因が加わって発症し、冠動脈疾患以外に頸動脈硬化症、腎動脈硬化症、末梢動脈疾患を合併しやすい。3 家族性複合型高脂血症はLDLコレステロール(cholesterol:C)とトリグリセリド(triglyceride:TG)がともに増加するIIb型高脂血症を呈する場合が多く、冠動脈疾患の発症リスクが高い。

識る　続発性脂質異常症と動脈硬化柳内　秀勝 , 吉田　博 22巻7号 , 2018年7月 , pp.644-648

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＜Point＞1 続発性脂質異常症の治療の基本は、原因となる病態の診断と治療である。2続発性脂質異常症の約1/3は、アルコール摂取を控えるなど、生活習慣の是正により改善可能である。3内分泌疾患、自己免疫疾患、薬物による続発性脂質異常症の診断は、それらを疑い、それに基づく特別な検査や問診を行わないと診断できない。

識る　HDL代謝異常症と動脈硬化杜　隆嗣 , 石田　達郎 22巻7号 , 2018年7月 , pp.649-656

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＜Point＞1 続発性脂質異常症の治療の基本は、原因となる病態の診断と治療である。2 続発性脂質異常症の約1/3は、アルコール摂取を控えるなど、生活習慣の是正により改善可能である。3 内分泌疾患、自己免疫疾患、薬物による続発性脂質異常症の診断は、それらを疑い、それに基づく特別な検査や問診を行わないと診断できない。

識る　高トリグリセライド血症　食後高脂血症と動脈硬化増田　大作 22巻7号 , 2018年7月 , pp.657-661

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＜Point＞1 残余リスクとしての高トリグリセライド血症は食後において、より心血管イベントと相関する。2 実際に動脈硬化プラークを形成するのはトリグリセライドではなくレムナントであり、レムナントコレステロールやアポB-48濃度など定量的な評価が可能となりつつある。3 レムナントの蓄積を改善する観点からの新たな治療法が考えられつつあるが、いまだ十分に検討されておらずその開発が望まれる。

識る　長鎖脂肪酸代謝異常と動脈硬化中谷　和弘 22巻7号 , 2018年7月 , pp.662-667

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＜Point＞1 長鎖脂肪酸代謝異常を、細胞内への長鎖脂肪酸取り込み障害をきたす疾患と細胞内での長鎖脂肪酸利用障害を呈する疾患群に分けて概説する。2 長鎖脂肪酸のトランスポーターの1つであるCD36を欠損するCD36欠損症では、長鎖脂肪酸の細胞内への取込み障害を呈し、インスリン抵抗性を背景とし糖尿病、高血圧、脂質異常症の罹患率が高く、動脈硬化性心血管疾患、心筋症の発症頻度が高いとされている。3 細胞内での長鎖脂肪酸の利用障害を呈する疾患として、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症、三頭酵素欠損症、カルニチントランスポーター異常症、カルニチンサイクル異常症、グルタル酸血症II型などが存在し、新生児期に急性脳症症状や乳幼児突然死症候群(SIDS)、横紋筋融解、心筋症、高アンモニア血症がみられる症例から、小児期あるいは成人以降に発症する症例まで臨床像は幅広い。動脈硬化性疾患との関連を示す報告はない。

識る　食品と生体内に存在するオキシステロール市　育代 22巻7号 , 2018年7月 , pp.668-672

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＜Point＞1 酵素的に産生されるオキシステロールは、細胞内のコレステロール量の制御にかかわっている。2 動物性食品に含まれるコレステロールの一部は、調理、加工、貯蔵中の酸化反応によってオキシステロールになる。3 食事由来のオキシステロールも生体内に蓄積し、一部のオキシステロールは動脈硬化や糖尿病患者で高値である。

識る　オキシステロールと動脈硬化小関　正博 22巻7号 , 2018年7月 , pp.673-678

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＜Point＞1 オキシステロールの蓄積と動脈硬化の関わりが明らかになってきた。2 27-hydroxycholesterolと動脈硬化の関わりが明らかになった。3 7-ketocholesterolと動脈硬化の関わりが明らかになった。

治す　動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017 木下　誠 22巻7号 , 2018年7月 , pp.679-685

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＜Point＞1 動脈硬化性疾患予防には、個々の動脈硬化のリスクを評価し、介入可能な因子を適切に管理することが重要である。2 低比重リポ蛋白コレステロール(low density lipoprotein-cholesterol:LDL-C)の管理には、スタチンを第1選択薬とするのが妥当と考えられる。3 LDL-C管理目標値としては、一次予防高リスク患者では120mg/dL未満を、二次予防患者では発症後早期から少なくとも100mg/dL未満を目指した積極的治療を行うこととする。

治す　LDLコレステロール低下療法のエビデンス船水　岳大 , 宮内　克己 22巻7号 , 2018年7月 , pp.686-691

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＜Point＞1 LDL-Cを下げれば、動脈硬化の進展は抑制され、イベントが減少する。2 日本初のスタチンの大規模臨床試験:REAL-CAD。3 日本のガイドラインも二次予防ハイリスク患者ではLDL-Cの達成目標値が70mg/dLに引き下げられた。

治す　新しい作用機序の選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα) 荒井　秀典 22巻7号 , 2018年7月 , pp.692-697

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＜Point＞1 PPARαは、アポAI、AII、AVおよびCなどの標的遺伝子の発現を制御することにより、高比重リポ蛋白(high density lipoprotein:HDL)を上げ、超低比重リポ蛋白(very lowdensity lipoprotein:VLDL)を低下させる。2 ペマフィブラートは、ヒトPPARαに対して非常に高い選択性を有するアゴニストとして同定された。3 ペマフィブラートは既存のフィブラートと同程度の効果を示し、安全性が高いSPPARMαである。

治す　HDLをターゲットとした治療法の最新情報大濱　透 22巻7号 , 2018年7月 , pp.698-701

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＜Point＞1 HDLを選択的に上昇させることにより心血管イベントを抑制する治療法は、現在のところ存在しない。2 コレステロールエステル転送蛋白(cholesteryl ester transfer protein:CETP)阻害薬はHDL-C濃度を大きく上昇させ、LDL-C濃度も低下させたが、心血管イベントの十分な抑制効果は認めなかった。3 プロブコールやアポA-I MilanoはHDL-C濃度を低下させるが、HDL機能改善を介して動脈硬化抑制効果をもつものと考えられている。

連載

責任冠動脈を追え!PCIエキスパートになるための25ヵ条　ガイドワイヤー(GW)を使いこなすべし小川　崇之 22巻7号 , 2018年7月 , pp.702-707

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ガイドワイヤー(guide wire:GW)を使いこなすことなくして、バルーン･ステントは使用できない、つまり経皮的冠動脈インターベンション(percutaneouscoronary intervention:PCI)は成り立たない。本稿では、GWをいかに使いこなすかを概説する。

魅せる！聴かせる！学会発表プレゼンテーション技法　6　グラフの強調は明確に渡部　欣忍 22巻7号 , 2018年7月 , pp.708-717

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グラフでは，強調したい部分を明確にすることが大切です。そのためには，強調したい部分以外を地味にしておくのがよい方法です。また，折れ線グラフは多色のグラフになることが多いのですが，各線が何を示すものかの凡例がグラフから離れていると一目でわかりづらいことがあります。折れ線の近くに凡例を示すことが大切です。さらに，グラフのスライドでは，タイトルの代わりにグラフで伝えたいメッセージを入れるという手法を用いてもよいです（度が過ぎると，少々下品にはなりますが……）。

基本情報

Heart View
22巻7号
(2018年7月発行)

電子版ISSN：2423-964X 印刷版ISSN：1342-6591 メジカルビュー社

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