CLINICAL CALCIUM 27巻12号 (2017年11月)

特集 骨リモデリング制御と疾患 Review

骨リモデリングの基礎知識 山本智章
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 骨のリモデリングとは,破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が連動して骨の代謝を営んでいる,いわゆる骨組織の置き換え現象である。カルシウム代謝を調節し,骨格の力学的強度を維持する基本的な代謝メカニズムである。骨形態計測によってリモデリングは直接的に観察され,定量的な評価がなされる。近年は骨リモデリングにおける骨細胞機能やキャノピーの研究が報告されている。

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 骨リモデリングは,破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成サイクルから成り,骨量とカルシウムの恒常性の維持に重要である。骨吸収と骨形成は密接な関係を保つが,これら2つのバランスが崩れると骨量の増加や減少が生じる。破骨細胞は生理的,または病的骨吸収に関わる多核巨細胞であり,破骨細胞による骨吸収はさまざまなサイトカイン,カルシウムシグナルや転写因子によって制御されている。近年では遺伝子欠損マウスの結果から破骨細胞による骨吸収を制御する新たな分子の重要性が証明されている。本稿では,骨リモデリングを制御する破骨細胞の骨吸収に関する分子機構について最近の知見を概説する。

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 骨リモデリングによる骨組織の作り替えは,骨組織の支持器官やミネラルの貯蔵庫としての役割に重要である。骨細胞は骨にかかるメカニカルストレスを感知し,骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収を制御しているが,その詳細なメカニズムは不明である。本稿では骨細胞のメカニカルストレス感知メカニズムの概略と骨リモデリングを制御する因子の1つとしてメカニカルストレスによって骨細胞から産生されるCCN family protein 2/結合組織成長因子(CCN2/CTGF)の骨リモデリングファクターとしての可能性について概説する。

特集 骨リモデリング制御と疾患 Seminar

骨吸収と骨形成のカップリング 竹下淳
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 成長後にみられる骨芽細胞による骨形成には必ず破骨細胞による骨吸収が先行し,骨吸収された部分は正確に新しい骨に置換されることで一定の骨量と骨強度が維持される。これが骨リモデリングであり,中でも骨吸収から骨形成へのリレーをカップリング(共役)という。すなわち,骨リモデリングにおいて骨吸収活性や破骨細胞自身は引き続いて起こる骨形成を誘導する。近年,カップリングの制御機構が分子レベルで明らかになりつつあり,骨粗鬆症などの骨疾患を理解する上で重要なメカニズムの解明につながることが期待される。

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 ヒトの発生期や成長期では骨の形づくりであるモデリングが主に認められるが,成人では骨の置き換えである骨リモデリングが優位を占める。また,モデリングは骨全体の形づくりであるマクロモデリングと顕微レベルでの形づくりであるミニモデリングに分けて考えることができる。ミニモデリングとは,破骨細胞の骨吸収に依存せず,休止期骨芽細胞が活性化し活性型骨芽細胞となって,既存骨の上に新しい骨を添加してゆく現象である。骨粗鬆症治療薬であるエルデカルシトール(ビタミンDアナログ製剤)とテリパラチド(遺伝子組換えヒト副甲状腺ホルモン1-34)はミニモデリングを誘導することが知られている。ミニモデリングを組織学的に観察すると,基質合成を盛んに行う活性型骨芽細胞が新生骨の表面に局在するが,その周囲では,前骨芽細胞の厚い細胞性ネットワークの発達が悪く,また,破骨細胞もあまり誘導されない。  ここでは,骨リモデリングとモデリング・ミニモデリングにおける組織学的特徴を述べたい。

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 骨への生理的な力学刺激は,骨の量と構造を維持する上で必要不可欠である。長期臥床,脳卒中による片麻痺や骨折後のギプス固定などの不動は骨量を著しく減少させる。不動化により骨リモデリング異常が生じ,骨形成は低下,骨吸収は亢進する。また,その分子制御メカニズムは,徐々に明らかになってきている。不動性骨粗鬆症は,一度生じると元の状態まで改善させるためには多大な時間を要する。したがって,不動性骨粗鬆症は予防が大切であり,不動時の骨代謝動態をよく理解した上で適切な薬剤を選択し,可能な限り早期治療介入を試みるべきである。

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 合成グルココルチコイド(副腎皮質ステロイド薬)は,強力な抗炎症作用と免疫抑制作用から多くの疾患の治療に汎用される。ステロイドはコルチゾールと共通の核内受容体に結合して,骨代謝異常症,ステロイド性骨粗鬆症を生じる。過剰なステロイドは間葉系幹細胞から骨芽細胞や骨細胞への分化を抑制してアポトーシスを誘導し,破骨細胞の細胞寿命を延長して増殖,分化,活性化を増強する。その結果,骨形成の阻害,骨微細構造の損傷,骨吸収の助長などにより骨リモデリング,骨モデリングの異常を引き起こして骨代謝異常をもたらす。すなわち,骨芽細胞や骨細胞を抑制し,破骨細胞を活性化し,さらに生体内の内分泌・代謝系に悪影響を及ぼすことにより顕著な骨代謝異常,ステロイド性骨粗鬆症を引き起こす。ステロイド性骨粗鬆症は処方された薬剤による副作用であり,高い脆弱性骨折率を呈し,的確な管理と治療が必要である。

特集 骨リモデリング制御と疾患 Topics

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 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者では発症早期より起こる骨代謝回転の亢進と骨量減少がその後の骨折率の上昇や関節破壊の進行と相関することより,早期からの骨リモデリング制御が骨折・関節破壊進行抑制のために重要と考えられる。関節病変部に浸潤した炎症細胞により産生されるIL(interleukin)-17・TNF-α(tumor necrosis factor alpha)・IL-1・IL-6などの炎症性サイトカインは,滑膜繊維芽細胞などの間葉系細胞から破骨細胞誘導因子であるRANKL(receptor activation of nuclear factor κB ligand)の発現を促進し,全身の骨量を減少させるだけでなく,関節局所の骨びらんを惹起する。抗RANKL抗体であるデノスマブがRAに伴う骨びらんの進行予防に対して保険適応拡大となり,更なる治療成績の向上が期待される。

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 リンは骨に貯蔵されるミネラルの中でカルシウムに次いで多いもので,その制御機構の破綻は低リン性くる病などの病態をもたらす。リンは食事性に摂取され腸管から吸収されたのち血中に入り,腎近位尿細管での再吸収などの制御により血中濃度が調節される。リンの血中濃度の調節因子として,ビタミンDは小腸からのリンの吸収を増やし濃度を高める方向に働くが,リンは骨細胞からFGF23の分泌を促し,FGF23は腎臓でのFGF受容体・Klothoのコンプレックスを介して,活性型ビタミンDである1,25(OH)2D3の合成酵素であるCyp27b1の発現を抑制することで,ビタミンD経路の抑制をかける。本稿では膜貫通型タンパク質であるEnpp1が,この制御機構に必須の役割を担うことで,骨の制御をも担うことを紹介する。

自然免疫細胞によるOsteoimmunology 片山義雄
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 造血の場である骨髄は骨組織に包含されており,造骨と造血両システムの機能的つながりが近年になって徐々に解明されてきている。骨芽細胞による造血微小環境形成については盛んに研究がなされ,大きな研究ジャンルに発展した。一方,血液細胞による骨芽細胞制御についても徐々に知見が積み重なって来ている。本稿では,自然免疫を担うマクロファージと好中球が骨代謝に果たしている役割を概説する。

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 細菌感染から引き起こされる重篤な炎症が全身に及ぶ敗血症は,治療法の発展により発症初期の死亡率の減少が達成されているものの,免疫抑制による二次感染のリスクは残っている。この易感染性の一因に,リンパ球減少症に陥ることが挙げられているが,このリンパ球数減少が長期間続くのはなぜか不明であった。著者らが敗血症の骨髄を観察すると,骨リモデリング異常を認めるとともに,リンパ球共通前駆細胞数が減少しているという興味深い知見を得た。マウスにおいて,骨芽細胞を除去,あるいは骨芽細胞由来のIL-7を誘導的に欠失すると,敗血症で観察されるようなリンパ球共通前駆細胞数の減少が見られた。急性炎症によって,骨構成細胞がダメージを受けると,リンパ球数維持の破綻を誘発し,リンパ球数の減少による免疫不全を引き起こしうることが明らかとなった。

特集 骨リモデリング制御と疾患 Therapy

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 骨形成促進薬に分類される薬剤は,現時点ではテリパラチドのみである。本薬剤は副甲状腺ホルモンのフラグメントであり,骨代謝に関する作用は,主にその骨芽細胞に対する影響を介して発現される。テリパラチドの直接作用は骨芽細胞数の増加や基質蛋白合成の促進であり,骨形成を活性化する。一方,骨芽細胞を介して破骨細胞の分化や活性化にも影響するため,テリパラチドは総合的には骨リモデリングの活性化をもたらす。現在開発中の抗スクレロスチン抗体製剤であるロモソズマブは,骨芽細胞および骨細胞に対するスクレロスチンの直接作用を阻害することにより,一過性の骨形成促進と持続的な骨吸収抑制をもたらす。従って,ロモソズマブの骨リモデリングに対する影響は,テリパラチドとは異なるものと考えられている。

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 ビスホスホネートなど,従来の骨吸収抑制薬はリモデリング抑制薬であり,臨床的には骨吸収マーカー,骨形成マーカーの両者を低下させる。マーカーの抑制は,骨密度増加や骨折抑制効果の予測にある程度有用である。一方,最近のデノスマブやOdanacatibは,分類上は骨吸収抑制薬と言えるが,モデリング効果や不均等なリモデリング抑制効果などユニークな作用を有する。本稿ではリモデリングという観点から骨吸収抑制薬の作用について概説する。

理解を助けるトレーニング問題

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(2017年12月号特集:「骨リモデリング制御と疾患」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい)

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(2017年12月号特集:「骨リモデリング制御と疾患」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい)

連載 Ⅰ.ゲノム編集~最新の遺伝子改変技術の原理と可能性~

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 ゲノム編集技術は,ゲノム配列を任意に改変できることから,遺伝性疾患やがんのモデル細胞・モデル動物の作製や,疾患関連変異を修復したex vivoの再生医療用iPS細胞の作製に利用する試みが進められている。また,ゲノムワイドCRISPRスクリーニングによる創薬への展開や,エピゲノム修飾のみを改変するエピゲノム編集技術を用いたがんの抑制など,新たな利用法の開発も進んでいる。本稿では,これらのゲノム編集の医学応用に関する最新情報と今後の展望について概説する。

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1.局所での老化細胞の除去が外傷後変形性関節症の進展をおさえ,再生に向けての環境を整える 2.低骨量患者における骨折予防治療:米国内科学会の臨床ガイドラインアップデート 3.欧州対リウマチ連盟/欧州整形外傷学会連合による50歳以上の脆弱性骨折を有する患者の管理と再骨折予防

特集予告(2018年1月号、2月号)

基本情報

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CLINICAL CALCIUM
27巻12号 (2017年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0917-5857 医薬ジャーナル社

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