CLINICAL CALCIUM 23巻7号 (2013年6月発行)

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特集　骨構造特性と骨強度

Preface

巻頭言～神秘的な骨微細構造に魅せられて～伊東昌子 23巻7号 , 2013年6月 , pp.941-941

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Review

大腿骨近位部の骨構造と骨強度　－加齢変化と治療による変化－原田敦 , 若尾典充 , 根本哲也 23巻7号 , 2013年6月 , pp.943-950

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　骨強度を科学的に知るには骨片で材料強度を知る必要があり，骨の特定部位の骨強度を知るには，屍体骨を用いた破壊試験が必要である。これらは臨床では使えないため，大腿骨近位部の解剖学的骨構造を考慮した骨強度推定のための工学モデルをCTなどのデータが構築して，骨強度を推定する方法が開発され，先進医療の「定量的CTを用いた有限要素法による骨強度予測評価」技術による骨強度評価にまで発展して，現在，先進医療の制限はあるが実際の患者に臨床応用することが可能になっている。我々の施設での結果からも，大腿骨近位部は日常生活の立位荷重には強いが，非常時の転倒荷重に対しては弱く，その１/３ほどの大きさでも骨折すると予測されるような構造を持っている。

橈骨遠位部の骨構造と骨強度　－加齢変化と治療による変化－内山茂晴 23巻7号 , 2013年6月 , pp.951-958

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　橈骨遠位部は手関節の主要な構成部位であり，手根骨からの軸圧を受ける。生体力学の実験結果から，軸圧の伝達は舟状骨側よりも月状骨部の方が大であり，これは，高解像度末梢型定量CTによる解析結果からも説明できる。加齢により橈骨遠位部の骨密度は低下し，海綿骨部，および皮質骨の微細骨構造も劣化する。骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネートやPTHはこれらの劣化を予防し，デノスマブは改善させる。高齢者の脆弱性橈骨遠位端骨折は体重の約5.0±2.5倍の負荷で骨折するが，橈骨遠位端骨密度や骨構造解析から予測することが可能である。高齢者の増加により脆弱性橈骨遠位端骨折患者は増加するが，われわれは骨折治療のみでなく，骨粗鬆症検査と治療を行うことが重要である。

椎体の骨構造と骨強度　－加齢変化と治療による変化－岸本英彰 23巻7号 , 2013年6月 , pp.959-966

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　骨の強度は骨の量と質に依存し，骨の質は構造特性と材質特性により決定される。そしてこれらの特性は，骨の新陳代謝機構のなかでも主にリモデリングとモデリングによって制御されている。閉経後早期には，リモデリングの亢進によりまず海綿骨骨梁の微細構造が劣化し，つづいて骨皮質幅，皮質骨内多孔化が進行するため骨全体としての骨強度は低下する。また，閉経後女性ではモデリングによる代償機構が十分に作動しないため骨梁骨の強度低下に伴い骨梁骨折が多発し，ついには軽微な外力で容易に椎体終板の陥没骨折が生じる。　骨粗鬆症治療薬剤により海綿骨骨梁・皮質骨内骨膜面での吸収抑制，また骨梁幅の増大などが得られれば，海綿骨・皮質骨での骨強度改善により椎体骨折発生は減少する。

Seminar

非定型大腿骨骨折と骨構造の変化山本智章 , 島倉剛俊 , 高橋榮明 23巻7号 , 2013年6月 , pp.967-971

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　非定型大腿骨骨折の特徴は画像上皮質骨に現れるストレス性の変化であり，大腿骨のbowingなどマクロ形状の構造的問題によってメカニカルストレスの集中が生じるためのmicrodamageの増加と，骨代謝の低下によるmicrodamage修復能の低下が蓄積した結果，骨折に至ると考えられる。

変形性関節症と骨構造の変化千葉恒 , 尾崎誠 , 伊東昌子 , Sharmila Majumdar 23巻7号 , 2013年6月 , pp.973-981

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　変形性関節症（OA）をきたす骨形態異常には，臼蓋形成不全や femoroacetabular impingement（FAI），内反膝などがある。これらの骨変形は三次元的に複雑な形状をしており，正しい画像評価が困難な場合もあり注意を要する。近年，骨形態のバリエーションを統計学的に評価する手法であるstatistical shape model（SSM）が注目されている。　OAによる骨微細構造の変化には，骨硬化，骨嚢胞，骨棘などがある。軟骨下骨における種々の病的変化が，OAの発症や進行に関与していることがわかり，治療薬のターゲットにもなっている。multi detector-row CT（MDCT）や3TMRIを用いて，OA患者の軟骨下骨梁構造の変化を定量的に解析する手法が，近年模索されている。

関節リウマチと骨構造変化大野久美子 , 大橋暁 , 松本卓也 , 田中栄 23巻7号 , 2013年6月 , pp.983-991

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　関節リウマチ（rheumatoid arthritis：RA）は，慢性炎症を伴う免疫系の異常により破骨細胞が活性化され，その結果，傍関節性骨粗鬆症や関節局所の骨破壊が発生し，骨びらんや関節変形をきたす。加えてステロイドなどの薬剤や身体活動性の低下といった複数の要因により，全身の骨代謝回転が亢進し，骨密度や骨質の低下といった骨構造の変化をきたす全身性骨粗鬆症を引き起こし，骨折リスクが高くなる。このようなRA特有の骨構造変化を理解し，骨折の危険性を評価することはRAの治療において重要である。

Topics

ステロイド性骨粗鬆症における骨構造特性と骨強度宗圓聰 23巻7号 , 2013年6月 , pp.993-999

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　ステロイド性骨粗鬆症は若年成人における骨粗鬆症の主な原因であり，最も頻度が高い続発性骨粗鬆症でもある。グルココルチコイドの使用により急速な骨量減少と骨折リスク増加をきたす。しかし，ステロイド性骨粗鬆症の特徴は，骨密度値と骨折リスクとの乖離にあり，骨密度値から予測されるよりも高い骨折リスクを示す。そして，グルココルチコイドによる骨脆弱性の誘導は多因子性である。近年，ステロイド性骨粗鬆症における細胞レベルの変化，病態生理，骨構造のイメージングなどに関する多くの研究が報告されている。　本稿では，これらの成果を紹介し，近い将来の治療戦略に対する貢献を期待したい。

糖尿病における骨構造特性と骨強度岡崎亮 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1001-1006

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　糖尿病は，１型も2型も骨折リスクが上昇している。骨密度は１型では低下，２型では増加が見られ，いずれの病型においても骨密度から推定される以上に骨折リスクが上昇している。そのため，骨構造特性を含めた骨質の劣化が，骨折リスク上昇の主因であろうと考えられてきた。骨材質特性においては，最終糖化産物の蓄積によるコラーゲンの劣化の関与など，多くの検討がなされてきたが，機器の進歩に伴い構造特性についても最近報告が相次いでいる。１型における検討はまだ少数であるが，２型糖尿病においては，末梢骨皮質骨の多孔性の増大が注目を集めている。一方，腰椎海綿骨の海綿骨スコアが骨密度が増加しているにもかかわらず低下しているとの成績があり，糖尿病の骨折リスク上昇の一因となっている可能性が考えられ，興味深い。

CKDにおける骨構造特性と骨強度矢野彰三 , 杉本利嗣 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1007-1012

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　慢性腎臓病（CKD）患者では健常人と比較して骨折リスクが高く，その原因として骨量減少，骨質の劣化，筋・神経障害などが関与している。CKDの骨脆弱性には，材質特性および構造特性に基づく骨の変化が関与していると考えられる。CKD患者における骨構造変化の特徴は〈1〉皮質骨の菲薄化および多孔化，〈2〉海綿骨の不規則な肥厚や骨梁の結合性低下，に集約される。最近の報告から，CKDのかなり早期から骨構造変化が始まっている可能性があることが分かっている。

無荷重状態における骨構造特性と骨強度遠藤逸朗 , 松本俊夫 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1013-1019

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　微少重力や不動による力学的負荷の低下状態では，骨形成低下と骨吸収亢進を伴い，短期間で著明な骨量低下をきたすことが知られている。特に荷重骨では海綿骨および皮質骨の骨量低下と骨構造特性の劣化とともに，骨強度の低下がみられる。これらの病態の詳細な解析を行うことにより，不動性骨粗鬆症の新たな治療法の開発にもつながるものと期待される。

新規骨粗鬆症治療薬による骨構造特性と骨強度の変化曽根照喜 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1021-1026

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　骨粗鬆症の分子メカニズムに関する近年の基礎研究の進歩により，最近いくつかの新規骨粗鬆症治療薬が開発され，臨床試験にまで進んでいる。デノスマブは破骨細胞分化因子（receptor activator of nuclear factor-κB ligand）に対する抗体製剤で，国内でも製造承認が得られ，本年６月に発売された。その他に，カテプシンＫ阻害剤や抗スクレロスチン抗体の臨床開発が進められており，数年以内には日常診療での利用が始まる可能性がある。　本稿ではこれらの新規骨粗鬆症治療薬について，その骨構造特性や骨強度への効果を中心に紹介する。

Therapy

薬物療法と海綿骨微細構造の変化森諭史 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1027-1033

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　骨粗鬆症治療薬は骨の代謝を調節することで骨量，骨構造，骨質に変化を与えて骨強度を上げる。薬物投与において海綿骨の骨微細構造は最も早くから観察することができる。骨粗鬆症治療薬として骨吸収抑制剤であるビスホスホネートと骨形成促進剤であるテリパラチドの作用機序は異なるが，いずれも海綿骨微細構造を改善させる。

薬物療法と皮質骨微細構造の変化伊東昌子 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1035-1039

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　高齢者になると非椎体骨折の発生頻度が増加するが，それには皮質骨微細構造の変化が一因と考えられる。骨折リスクを増大させる皮質骨微細構造の加齢変化と骨強度との関係，またビスホスホネート，テリパラチド，活性型ビタミンD3，デノスマブの骨粗鬆症治療薬が皮質骨微細構造へ作用する効果について考える。

薬物療法と骨ジオメトリーの変化髙田潤一 , 射場浩介 , 山下敏彦 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1041-1048

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　Dual-energy X-ray absorptiometry（DXA）によるhip structure analysis（HSA）は，CTにより計測された構造指標と高い相関性を示した。骨吸収抑制剤（ラロキシフェン，ビスホスホネート，デノスマブ）による構造指標の変化の共通点として，断面係数の増加率が骨密度の増加率よりも高い値を示したこと，部位別では転子部の断面係数の改善率が最も高い値を示したこと，があげられた。これに対し，骨形成促進剤では，骨吸収抑制剤とは異なる変動を示した。このことは，HSAは骨粗鬆症治療薬の作用に応じた構造変化を捉えていることを示唆する。

理解を助けるトレーニング問題髙田潤一 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1049-1049

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（2013年７月号特集：「骨構造特性と骨強度」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい） ※PDFでは，本企画（理解を助けるトレーニング問題）の本号分すべてをご覧になれます。

連載　注目の海外文献（15）

１．既存および新規骨粗鬆症治療の骨折治癒に及ぼす影響：ESCEOコンセンサスペーパー　２．腫瘍性骨軟化症：中国における成人発症低リン血症性骨軟化症の重要な成因　３．選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターはマウスの骨密度を維持する水野有三 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1052-1054

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Lineup １．既存および新規骨粗鬆症治療の骨折治癒に及ぼす影響：ESCEOコンセンサスペーパー２．腫瘍性骨軟化症：中国における成人発症低リン血症性骨軟化症の重要な成因３．選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターはマウスの骨密度を維持する

１．EphB4は骨折治癒過程の軟骨内骨化を促進しリモデリングを抑制する　２．骨芽細胞でephrinB2/EphB4を阻害すると，副甲状腺（PTH）の骨同化作用が現れない　３．ephrinB2刺激は頭蓋骨の形成を促進する松尾光一 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1055-1057

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Lineup １．EphB4は骨折治癒過程の軟骨内骨化を促進しリモデリングを抑制する２．骨芽細胞でephrinB2/EphB4を阻害すると，副甲状腺ホルモン（PTH）の骨同化作用が現れない３．ephrinB2刺激は頭蓋骨の形成を促進する

バックナンバー 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1079-1082

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特集予告（８月号，９月号） 23巻7号 , 2013年6月 , pp.1083-1083

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基本情報

CLINICAL CALCIUM
23巻7号
(2013年6月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0917-5857 医薬ジャーナル社

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