理学療法ジャーナル 33巻10号 (1999年10月)

特集 小児理学療法の動向

EOI(essences of the issue)
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 小児理学療法を取り巻く環境は,医療技術の進歩,少子高齢化,医療経済の効率化,健康観の多様化などによって大きく変化している.肢体不自由児施設の多くは機構改革を押し進めており,多様な障害児・者に対応できる機能と生活支援までを視野に入れた多機能システムを有したものに転換している.このため,入院中心の医療から外来指導に重点が移り,一般病院においても脳性障害児の理学療法を実施するところが増えるなど小児理学療法は変化している.

 そこで本号では,小児領域の理学療法の変遷と今後の課題に加え,小児の臨床実習や学内教育の在り方について解説していただき,小児理学療法の更なる発展に寄与できることを願って企画した.

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 1.はじめに

 小児領域における過去30年間の理学療法を振り返ったとき,変遷を引き起こした源は,いうまでもなく対象児の状態の変化であり,彼らのニーズの変化である.ニーズの変化は療育思想と施設体系の変容をもたらし,かつ理学療法技術の変化をもたらしたといえる.筆者らの立場は,北九州市立総合療育センターという1地域の小児施設において1理学療法士として療育に関わってきたものに過ぎず,また全国的なレベルでの療育の変遷についてとりわけ詳しいというものでもない.しかし,当センターにおける変遷を1例として紹介することによって諸兄の見識の深まりに資することを願って,当センターが今日まで辿ってきた対象疾患,施設体系,療育システムおよび理学療法技術等の変遷とその動向を整理し,今後の我々の展開について考察したい.

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 1.はじめに

 昭和22年に児童福祉法が制定された.同法に「肢体不自由児施設」は,医療法に規定される病院を有する肢体不自由児のための児童福祉施設として位置づけられ,設備や職員配置など最低設置基準が定められている.また,肢体不自由児通園施設および肢体不自由児療護施設も定められている.この法律に基づいた肢体不自由児施設として昭和24年群馬整肢療護園(群馬県・民立民営)が開設された.昭和25年には多摩緑成会整育園(東京都・民立民営),昭和26年には整肢療護園(東京都・国立民営)が開設された.昭和38年には全国で56施設となった.

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 1.はじめに

 昭和44年に単独の肢体不自由児通園施設(以下,通園施設)が制度化されてから,今年で30年目を迎えている.ノーマライゼーションおよびリハビリテーションの理念が根づいていない当時の社会のなかで,収容施設が主流であった療育環境に加えて,通園施設の登場には大きな期待がかけられた.と同時に,当時の医療・療育機関への影響も大きなものがあったと推測される.

 30年が経過して,初期の通園施設が置かれていた状況から比較すると,社会的・経済的状況を始めとして医療および福祉の環境は大きな変化をきたしている.障害児(者)および家族の権利意識の変化や,ノーマライゼーション理念の一般市民への普及,価値観の多様化と共に,通園施設に今求められている役割には,当初に期待された役割とは異なる内容のものが付加されていると考えられる.現在の通園施設が置かれている状況を見据えながら,そのなかでの療育サービス提供者としての理学療法士の役割を考えてみたい.

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 1.はじめに

 NHKが放映したマイケルクライトン監督のドラマ「緊急救命室(ER)」をご存じだろうか.好評をはくし現在もシリーズは継続している.このドラマのなかで,一般外科,血管外科で優秀な成績を収めた外科レジデント医師ピーターベントンが小児外科を選択し,悪戦苦闘の末,スーパーバイザーから適性に問題があると指摘され,小児外科のレジデントから外れるくだりがある.

 スーパーバイザーが問題があると指摘した点は,①乳幼児の臓器は成人のそれと比べ形状がまったく異なり,繊細であり,特別な知識が必要であること,②外科手術を問題なく実施できるだけでなく,今後の見通しや家庭での注意事項を親身になって伝え,家族を元気づけること,の2点であった.ドラマのなかでスーパーバイザーが指摘した点は小児領域の医療全体にいえることであり,必然的に小児領域の理学療法にも深く関わってくる問題といえる.

 1997年版理学療法白書によると,平成7年時点で,全国に肢体不自由児施設70か所,同・通園施設79か所,重症心身障害児施設78か所が設置されている.このほとんどの施設に理学療法士が配置され,都道府県単位で設置されている子ども病院と併せて相当数の理学療法士が小児領域の理学療法を支えていることになる.また,そのテリトリーも観血的治療を含む入院治療型から,通園・通所による地域療育型まで,かなりの広がりを見せている.このことも,臨床実習生の事前の学習を困難にし,小児領域の理学療法で学生自身につまずきを感じさせる一因になっているものと思われる.

 本稿では,地域療育型に属する川崎市地域療育センターの臨床実習の現状について報告し,これをもとに小児領域における臨床実習の課題について考察することとしたい.

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 1.はじめに

 小児を対象とした理学療法は,発達しつつある個体に加えられた障害に対し介入するという特徴をもっている.その理学療法体系においては,発達という時間経過を考慮しながら,理学療法評価・治療プログラムを構築する必要がある.本稿ではこのような特殊性を持つ理学療法学教科に対して,卒前教育として本学ではどのように対処しているかを具体的に解説し,その教育上の問題点と課題および今後の展望を論じることを目的とする.

とびら

「沖縄発→本土行き」 名嘉 淳
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 介護が必要になっても施設や病院でなく「住み慣れた地域(在宅)で暮らしたい」というのが,人間本来の希望する生き方であろう.

 この理念から,北欧などの医療・福祉の先進国では,十数年前から思い切った病院閉鎖による病院数の整理を行い,施設もできるだけ小規模で地域密着型の方向で整備を進め,在宅ケア重視の方向転換を行っている.

入門講座 パソコンによる学術情報整理学・6

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 Ⅰ.はじめに

 画像解析は様々な用途で活用されている.得られた画像を自分専用の画像データベースで管理したり,画像を客観的な数値に置き換えることにより,結果を比較検討するなど有用な手段である.本稿では,画像を取り込むのに必要なコンピュータおよび周辺機器を説明する.また,取り込んだ画像の処理や解析を行うのに大変便利なソフトウェアーであるNIH Imageを利用し,組織写真の解析例について紹介する.

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はじめに

大腿義足歩行はエネルギー消費が大きいこともあり,高齢者では実用性の獲得は容易ではない1-3).そのため入院中にある程度の歩行レベルに達しても,退院後は体力的に負担の少ない松葉杖や車椅子での移動が中心となり,義足歩行は運動手段の1つになってしまうことが多い.高齢大腿切断者が実用歩行を獲得したとするこれまでの報告は,切断時年齢が60歳以前のもの4)や,屋内でのセルフケアが自立したレベルのもの5),また,生活活動レベルに関する記載が不十分なもの3,6)などが多い.

 今回,筆者らは,大腿切断時が78歳という後期高齢者であり,フォローアップ時には既に87歳であったにも関わらず,義足歩行を実用的なものとして生活のなかに取り入れ,更には健常老人でも困難な畑・山仕事を行っている症例を経験した.義足歩行にも関わらずそこまで高いレベルの生活を再構築できたのはなぜか,その要因を多面的に検討し報告する.

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 各種の障害者スポーツ,国体,インターハイ,そしてオリンピック大会をはじめとする国際競技大会など,スポーツ医・科学の分野での理学療法士の活躍が目覚ましい.スポーツ傷害の予防や治療面はもとより,競技種目の特性を踏まえた筋力トレーニングなど,トレーナーとしても理学療法の知識や技術の有効性が注目を集めているのである.

 今月ご登場いただいた宗廣誠一氏はトレーナーとしての活動を始めて7年目,スポーツの良さを後々に伝えていくためにも,きちんとしたスポーツ医療を身につけて啓蒙していきたいというだけあって,スポーツ理学療法にかける夢は尽きるところを知らない感じなのである.

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 平成7年1月17日の阪神・淡路大震災から4年余りが過ぎた.この6,430人に及ぶ尊い命を犠牲にした教訓を,私たちは風化させることなく,今後起こりうる震災対策に生かしていかなければならない.

 東京都では,阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ,障害者団体代表と学識経験者そして福祉局(東京都心身障害者福祉センター)が「障害者震災対策検討委員会」を設立し,障害者自身の視点から,震災時に自分の命を守るために必要な具体的対策や行動について意見を交換し,「災害弱者防災マニュアルへの提言―障害者およびその家族などのために―」を発表している.

リレーエッセー 先輩PTからのメッセージ

一期一会 奥村 建明
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 今春,最前線の職場で活躍されてきた先輩PTの方々より,「はればれ定年退職」の挨拶状を頂いた.皆さんにその後の様子を伺ってみると,それぞれにPTとして新天地でいきいきと再スタートされており,その上,仕事の合間をみて各人各様の趣味にもチャレンジされているという.その姿はまるでミュージカル映画のスター達が華麗に舞い踊るように,人生という舞台上で飛び跳ねているかのようである.定年までの時間はまだ「序幕」にすぎず,その後から人生の「第一幕」が始まるような気さえする.

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はじめに

 肺は娩出直後の第一呼吸よりガス交換を開始する.胎生期の肺胞部分は羊水と肺胞液で満たされ,本来の機能である換気と拡散はまだ行っていない.それゆえ,出生直後の呼吸機能は形態学的・生理学的・運動学的・神経学的に未熟である.

 呼吸運動とそれに携わる諸器官は安定したガス交換を行うため,驚異的な発達・成長を遂げてゆく.

 本稿では,重い発達障害をもつ子どもの呼吸障害を治療するうえで知っておく必要がある,呼吸機能の正常発達と発達変容について解説したい.

1ページ講座 理学療法評価のコツ・10

断端周径の測り方 佐々木 久登
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 1)はじめに

 周径,肢長といった形態測定は巻き尺1個で簡単に行え,多くの情報を提供してくれる.しかし,その方法を間違えると,情報が交錯して,測定者の意図している情報が隠れてしまう恐れがある.今回は,断端の周径に焦点を当て,その計測方法の留意点について述べる.

雑誌レビュー

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はじめに

 “Physiotherapy Canada”(1998年版,vol.50)の紹介をさせていただく.この雑誌はカナダ理学療法士協会の機関誌であり,冬,春,夏,秋の年4回発行されている.論文構成としては,毎号巻頭に置かれるViewpoint,そしてCongress Report,Dialogue,Articlesとなっており(表),Aiticlesは毎号6,7編掲載されている.本稿では特にArticlesに焦点を絞って紹介するが,内容によって,「測定評価に関するもの」「治療に関するもの」「システムに関するもの,その他」に分類してまとめることとする.それぞれの論文の内容を詳細に述べるのは紙数の制約から不可能なので,要約のみを列挙する.更に興味のある読者は本誌を手にとって一読されることをお勧めする.

 なお,論文名は日本語訳し,そのあとに筆者名,号数,通巻ページ数を記すことにする.

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 問題1〔1〕

 (解説)「正しい組み合わせ」の定義がはっきりしないが,左の項と右の項にはそれぞれ同質のものを並べるべきであろう.

プログレス

プッシュアップ 水上 昌文
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 プッシュアップ(pushup)の一般的な和訳は,「腕立て伏せ」である.しかしリハビリテーション医学,特に脊髄損傷の分野では,座位にて上肢で座面を押し殿部を持ち上げる動作1)として,プッシュアップという用語が広く用いられている.また英文の教科書,論文などでは「腕立て伏せ」と区別するために,“sitting pushup”という表現を用いる2)こともある.この上肢で殿部を押し上げるプッシュアップ動作,およびその能力は,脊髄損傷のリハビリテーションの分野では非常に注目される動作能力である.それは下肢・体幹や一部上肢の機能にも障害を持つ脊髄損傷者が,車椅子を使用しない状況における唯一の移動手段であること,更に車椅子を用いたADLを行う上で必須な動作である車椅子とベッド,トイレ,浴槽,自動車などの種々の対象物との移乗動作のもととなる基本的な動作であるからである.

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 世界に先駆けて我が国に肩関節学会が設立されたのは1974年である.その後のスポーツ医学の普及,鏡視下手術の発達,それに画像診断技術の目覚ましい進歩を背景に,肩関節外科も著しい発展を遂げてきた.その間に新たに概念が確立された疾患も幾つか挙げることができる.新しく発見された診断技術や手術手技も少なくない.これらを整理し,臨床家の水先案内的な参考書としてまとめられたのが「肩診療ハンドブック」である.

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文献抄録

編集後記 鶴見 隆正
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 全国に先駆けて広島県呉市では,2000年4月から実施される公的保険制度の第一歩となる要介護認定の申請受け付けが9月1日から始まりました.療養型病床群やデイケアなどに関わっている方々は,今後障害者の家族から申請の相談を受けることが多くなり,より介護保険が身近なものになることでしょう.このように成人,高齢者の保健・医療を取り巻く環境は診療報酬などの医療経済,社会情報等によって目まぐるしく転換していますが,同様な現像が理学療法の源流といえる小児領域の現場にも押し寄せてきています.そこで21世紀に向けた小児理学療法の施設体系,治療体系,教育体系等の新たな取り組みの参考になればと考え,「小児理学療法の動向」を特集しました.

基本情報

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理学療法ジャーナル
33巻10号 (1999年10月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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