臨床整形外科 16巻2号 (1981年2月)

シンポジウム 人工股関節置換術—この10年の結果をふりかえって

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はじめに

 股関節疾患における人工材料の応用は,急速に進歩しつつあり,現在わが国でもCharnley型,Müller型,Bateman型,慈大型等の股関節全置換術のほかに種々の型のsocket-cupやcup関節形成術が普及している.しかし,これらの関節形成術の日本人における長期間のfollow-upの結果についての報告は少ない.京都大学整形外科においては,cup arthroplastyとCharnley型low friction arthroplastyは,約10年の施行経験があり,socket cup arthroplastyは,約6年の施行経験がある.そこで,これらの3種類の手術法による症例の臨床成績の調査を行い,遠隔成績からみた手術適応と合併症について検討を加えた.

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はじめに

 今世紀後半の最大の整形外科的進歩であるといわれる人工股関節全置換術が臨床の場で広く世界的に行われるようになつて15年以上となつてきた.その間に短期成績の発表は枚挙の遑がないが,10年以上の長期成績についてはパイオニアであるCharnleyのグループの報告に限られている.

 二つの関節面を人工材料で置換するため,年月の経過とともに摩耗が進行する点や,生体材料と骨との間にゆるみの生ずる点,生ずる摩耗粉の生体への影響などから本手術の真の価値,手術適応を再検討するためには,厳密な長期成績の結果が必要である.

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 人工股関節に関する基礎的,臨床的な研究は,材料力学的,生体力学的あるいは組織学的等の多方面にわたり,使用材料,デザインの検討,骨セメントの検討,手術手技,手術器機,手術室環境の改良,工夫等が工学者の協力のもとに整形外科医によつて積極的になされてきたが,現時点では骨頭に金属,ソケットにH.D.P.を用い,骨との固着にはM.M.A.を骨セメントとして用いるCharnleyあるいはMullerの方法,またはこれらに準じたタイプの人工股関節が一般化し,定着している.一方,本手術が一般化し,症例数も増加し,経過年数も増すにつれて,種々の合併症も報告されるようになつた.なかでも手術直後の回復期を経過し,安定期において発症し,進行すれば再手術の止むなきに至る,いわゆるcomponentの"ゆるみ"(loosening)については人工股関節の開発以来,生物学的あるいは力学的な方面より,成因,病態などについて多くの議論がなされてきた,しかし,未だ確立された病因の追求,診断,予知法などはない.最近,Amstutzによりfemoral componentのlooseningについての分類が提唱されている.

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はじめに

 人工股関節全置換術(total hip replacement以下THR)は,わが国においても1970年代に入つて目ざましい普及,発展を遂げ,その適応も諸種の股関節疾患に拡大されてきた.しかし,いわゆる特殊適応に関しては適応や手術手技の面で論議の余地が残されている.

 THRを導入した1971年以来筆者が直接関与した症例は193例237関節であり,そのうち特殊適応の範疇に入るものは46例57関節である.これらは

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はじめに

 股関節全置換術は,高度に破壊され機能を失った股関節に対して,無痛性,支持性そして可動性の3者全部を再獲得させるという点で,画期的な手術であり,その術後成績では人体の各関節のうちでも最も安定した成績が得られることは周知のとおりである.しかしながら一方では,その施行例が増加し,経過年数も長くなるとともに,合併症,続発症も著しく増加しており,手術の際の技術的な点はもちろん,人工関節の材質,その固定法などに恒久的安全性という点で今後の改良の余地を残していることは,多くの報告によっても明らかである1〜5).今回,合併症,続発症(以下まとめて合併症と呼ぶ)を起こしたわれわれの症例を分析することにより,その予防策を検討した.

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はじめに

 全人工股関節置換術(以下THRと略す)は多くの好成績が報告され,股関節外科に大きく貢献してきた.しかし人工股関節は生体力学的に正しい位置に固定することができて,はじめて初期の目的が達せられ好結果につながるものである.

 THRの適応があっても生体側にそれを受け入れる条件を欠いている場合は,期待した結果が得られず,また耐久性も問題となる.たとえば寛骨臼底突出症(Protrusioacetabuli),股関節中心性脱臼骨折,人工骨頭置換術後やTHR後のmedial migrationなどで寛骨臼底に支持性を失っている症例,また大腿骨頸部内側骨折,femoralprosthesisのdistal migrationによってcalcar femorisが消失している症例などに通常の方法でTHRを行うと臨床的に愁訴は残り,耐久性も劣りその適応と限界が問題となる.

視座

急がば廻れ 玉井 達二
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 臨床を離れて六年余りの年月が,いつの間にか過ぎてしまつた.せめて本だけでも読みたいと心掛けてはいるものの,それもままならぬ日々がつづいている.しかし幸か不幸か,医学概論などを話すようになつてから,反省する機会には恵まれ,今まで自分が一端を荷つて来た医学教育は,あれでよかつたのか,などと考えることがある.

 医学教育は生涯教育であり,死ぬまでつづけなければならないものであり,教育の内容は,教育を受ける側の状態によつて異なることも,疑う余地は全くない.子供が生れて,母乳それから離乳食,そして普通の食事へと変わつて,一生食べつづけなければならないのに似ている.すなわち,教育は,卒前,卒後はもちろんその時期・時期に適した内容で,生涯つづけて行かなければならないものである.

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はじめに

 脊髄腫瘍は1887年,GowcrsとHorsleyがneurofibromaの最初の摘出に成功して以来,一世紀を経んとしており,脊髄外科の進歩普及により,摘出手術はもはや日常的なものとなつた.

 その間,本邦においても,1911年三宅の成功を嚆矢とし,以来脊髄腫瘍に関する報告は枚挙にいとまがない.慶大整形外科においても,1935年前田・岩原による学会宿題報告17)をはじめ,1956年岩原17),1967年泉田14)が自家例を中心に報告してきた.

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はじめに

 近年人工膝関節の研究は目覚ましく,次々と新しい優れた形式が開発されてきてがる.しかしより優れた人工関節を用いることが,ただちにすべての患者によりよい成績をもたらすことにはならない,私はすでに人工膝関節の成績は患者の病態,手術の技術,また手術前後の処置,管理面に負うところが大きいことを強調した6).現在まで私は高度の関節破壊により疼痛と機能障害を来たした膝に対して数多くの人工膝関節手術を行つてきたが,その成績を左右する因子はきわめて多く,結果は一様ではない.

 今回は各症例のもつ種々の条件のうち,手術成績に影響を与えると考えられる要因を分析し,手術適応について再検討したいと考えた.

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はじめに

 近年の骨肉腫治療の中心は,根治手術と同時に肺転移発見前より行うadjuvant chemotherapyである.Adriamycin(ADM)またはhigh-dose me—thotrexate(HDMTX)などによる単剤あるいは多剤併用療法の有効性は多数報告されている3,4,8,10,13,15).しかし,ある観察時点で生存率に差があつても,それが単なる延命効果なのか,または最終的な治癒率も上昇しているのかを知ることはできない.まだ長期観察例の少ない現在,この点の検討は困難である.我々は骨肉腫の生存率曲線に数学的モデル(対数正規分布)をあてはめ,短期の観察データから生存率の推移を予測し,adjuvantchemotherapyによる延命効果と治癒の関係を検討した.

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はじめに

 上位頸髄腫瘍は多彩な臨床像を示し,しばしば他の疾患と誤診されたり,見逃されたりすることがある.今回我々は上位頸髄腫瘍を手術的に剔出し病理組織学的にも確定診断を下し得た7例について,臨床像,主に検査所見について分析を行いその診断的価値について検討した.

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 漏斗胸は,胸郭に変形をきたす疾患として代表的なもののひとつである.従来,比較的に稀な解剖学的奇型であるとされてきたこと,また本疾患が,小児外科,胸部外科,形成外科,等の諸科との境界疾患であること等により,その治療は整形外科医にとつても一般的なものとはなつていない.しかし,治療を求めて病院を訪れる患者はそれ程稀ではなく,術中,術後の全身管理がより安全に行われるようになつた現在,呼吸,循環系に対する影響のみならず,美容面,精神面に与える影響も大きい,本疾患に対する手術治療の適応は,従来に比して拡大され,小児胸郭変形疾患として側彎症とならんで重要な治療対象となりつつある.今回我々は従来より教室で行われてきた,漏斗胸手術についての結果を報告し,手術手技,適応などについて文献的考察を加えて述べるものである.

調査報告

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はじめに

 昭和54年4月1日より学校保健法施行規則が改正され,脊柱側彎症の発見がいつそう強調されたが,実際に学校検診を行うとなると実施上多くの制約につきあたり,検診の具体的方法やシステムについては模索が続けられている段階である.

 検診を行ううえの制約として,第1に膨大な人数をスクリーニングしなくてはならぬ一次検診の方法の問題,第2に決定診断に必要なX線検査の施設の設定や,X線被曝の問題,第3にこれらの検診に要する費用の問題,第4に検診陽性者に対するアフターケアの問題などが大きなものであろう.

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 脛骨粗面の剥離骨折は14歳から16歳の間に好発し,特にスポーツ中に生じることが多い,最近,われわれは前方宙返りを行おうとして,両側に対称性に発生し,術中興味ある所見を見い出した症例を経験したので報告する.

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はじめに

 骨と直接的な関係を有するganglionについては,近年欧米でかなり報告されているが,本邦におけるその記載は少ない.

 最近われわれは左脛骨内果部に発生し,関節腔や骨外との交通を全く認めない骨内ganglionの一症例を経験したので,電顕的検索を行い,その発生原因について若干の考察を加えて報告する.

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はじめに

 大腿骨頸部外側骨折は,保存的療法によっても骨癒合が良好であるとされている.しかし,日常の看護を容易にし,早期離床や,早期社会復帰を図り,また,特に高齢者にあつては長期臥床による重篤な合併症を予防するためには積極的な観血療法が必要とされ,現在では全身状態の許す限り,広く観血療法が行われている.

 われわれも,本骨折の術後成績の一層の向上を目指し,各種の観血療法を試みてきた.今回は,1972年以降,症例を選んで行つてきたMassie型のsliding nail—plate法がその他の固定法と比較して満足すべき結果を得ているので,ここに,報告し,他の方法との若干の比較検討を行い,いくつかの問題点につき論じたい.

学会印象記

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 第15回Scoliosis Research SocietyのAnnual MeetingはシカゴのThe Drake HotelでDr.william J.Kaneを会長に1980年9月17〜19日開催された.今回は1966年初めてMinneapolisで開かれて以来,15周年に当るので記念のクリスタルグラスが配られたり,SRSの歴史や会員の分布などがまとめられて展示された.

 9月16日のシカゴは午後から天候が急変し,"TheWindy City"の名のごとくstormに襲われ,O�Hare国際空港が閉鎖されたため,多くの参加者がMilwaukeeなど他の空港に転送されたりしたため,16日夕のrecep—tionは例年になく淋しいパーティーとなつた.出席者が少なかつたもう一つの理由は15日から5夜連続でNBCテレビを中心に全米に放映された"将軍"のためでもあつた.Richard Chamberlainが演じる三浦按針を主人公としたこの映画は江戸初期の日本を舞台にしたもので,全米に大変なブームを呼び,"Root"以上の視聴率であつたという.

基本情報

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臨床整形外科
16巻2号 (1981年2月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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