胃と腸 17巻9号 (1982年9月)

  • 文献概要を表示

 胃結核症は,本邦報告例のほとんどが剖検または手術により診断されており,X線ならびに内視鏡診断学が進歩した現在でも,なお臨床診断がつけにくい疾患の1つである.

 内視鏡下生検の病理組織学的検討で本症を疑い化学療法を行いつつ,X線,内視鏡および生検にて経過観察をした胃結核症の経験に加え,本症の臨床,診断,治療上の問題点を主に本邦文献を中心に検討し報告する.

  • 文献概要を表示

 アミロイドーシスは最近,わが国でも注目され報告例が増えている疾患である.その主たる沈着臓器は,腎,肝,心,脾であるが,胃腸管へのアミロイド沈着もよく認められる.その症状として食思不振,下痢,血便があり,また吐血,下血を来した症例にはX線透視,内視鏡検査および生検が行われているが,確診されたのは,剖検例がほとんどで,胃切除が行われたという報告は少ない.

 われわれは最近,大量の吐下血を来し,X線透視および内視鏡検査で悪性リンパ腫を疑い,胃全摘の結果,原発性胃アミロイドーシスであった症例を経験したのでここに報告する.

  • 文献概要を表示

 近年,Reactive Lymphoreticular Hyperplasia(以下RLHと略す)に関する報告例が多数発表され,その分類も中村ら1)2),勝又ら3)4)によってなされている.最近,われわれは前庭部に高度の狭窄を示し,組織学的にRLHと診断された1症例を経験した.本症例は中村,勝又らのRLHの分類のいずれにも属さず特異な形態を示しているので報告する.

  • 文献概要を表示

 本邦における消化管カルチノイドの報告例は最近次第に増加しているが,十二指腸カルチノイドは,われわれの集計では1980年までに66例である.しかし,このうち直視下生検により術前に確診された症例は8例にすぎない.われわれも,今回直視下生検により診断した十二指腸球部カルチノイドの症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 家族性大腸腺腫症に十二指腸傍乳頭部癌が合併することはCabotの報告1)以来注目されている.また,同疾患に上部消化管ポリポージスが高頻度に随伴することが,最近の日本における調査研究にて明らかになってきた.このたび,われわれはGardner症候群に,直腸癌,十二指腸癌および胃・十二指腸腺腫症を合併した症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 家族性大腸腺腫症では,上部消化管病変が高頻度に合併することが最近の研究で明らかになってきた,欧米ではGardner症候群に随伴した十二指腸乳頭部癌の例が幾つか報告されている1)~8).本邦では胃,十二指腸,小腸などの腺腫の随伴する例が報告されているが9)~12),大腸以外の癌合併例の報告は極めて少ない.最近われわれは家族性大腸腺腫症で結腸全摘出術施行後7年目に早期十二指腸乳頭部癌および十二指腸腺腫を認めた本邦第1例目と思われる症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

 小腸は全消化管長の75%,全消化管粘膜総面積の85%を占めているが,癌の発生頻度は極めて低く,全消化管の約1%1)と言われ,本院での総消化管癌手術症例における小腸癌の頻度は,0.12%であった.最近,腹部不快感を主訴として来院し,血清CEA高値を呈した空腸癌を切除し,組織内CEAの酵素抗体法による特異染色と,CEAの定量を行い,CEA産生空腸癌と考えられる所見を得たので報告する.

  • 文献概要を表示

 良性の原発性小腸腫瘍は,症状の程度が軽くて検査されずに放置されるためか,また発見されても切除される機会が少ないためか,その報告例は少ない.われわれは腹痛と下血を主訴として来院し,注腸検査にて発見された回腸末端部の脂肪腫を経験したので,回盲弁,小腸粘膜のprolapse像,腫瘍影のX線学的関係を中心に検討を加え報告する.

  • 文献概要を表示

 小腸の多発性輪状狭窄は腸結核に多くみられる所見で,クローン病ではまれである.われわれは,多発性輪状狭窄を伴った小腸クローン病の1例を経験し,ほぼ全病変を小腸二重造影,術後造影,切除標本において対比しえたので報告する.

  • 文献概要を表示

 若年性ポリポージスは,胃・小腸・大腸に散在性にみられる有茎・無茎のポリポージスで組織学的に過誤腫として知られている.われわれは1975年にその1例を経験し,武藤らと共に本邦第2例目の症例として報告した5).本症についての認識は広まりつつあるが,なお未解決の点が多い.第1は遺伝形式が明らかでないこと,第2はjuvenilepolyposis coli(以下JPCと省略)とgeneralized juvenile gastrointestinal polyposis(以下GJGPと省略)とが異なる疾患と考えるか否かであり,第3は本症と腺腫症との関係が病理学的にも遺伝学的にも論じられている点であり,第4は本症に発生異常を合併することである.

 われわれは18歳男子にみられた直腸に限局した若年性ポリポージスの1例と,28歳女子にみられた胃・結腸の若年性ポリポージス(一部に腺腫が混在した)の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

  • 文献概要を表示

 潰瘍性大腸炎の癌化率は欧米では3%程度1)と言われているが,本邦での報告例はいまだ少なく,1981年7月の第15回大腸癌研究会の全国集計2)では潰瘍性大腸炎1,416例中癌発生と関係したと思われる症例は11例(0.78%)にすぎない.われわれは全経過5年の短期間に大腸癌と前癌病変の多発をみた潰瘍性大腸炎の手術,剖検例を経験し,摘出大腸を全割して組織学的に詳細な検索ができたので,文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

 偽性腸管閉塞症intestinal pseudo-obstruction(以下IPOと略す)とは,腸閉塞類似の症状を呈し,X線検査で認められた腸管腔の閉塞や狭窄が,手術や剖検で確認できない病態を言い,また,腸管囊腫様気腫pneumatosis cystoides intestinalis(以下PCIと略す)は,腸管の粘膜下や漿膜下に,気体がびまん性に散在して認められる病態を言い,双方とも原因は不明である.PCIでは腹腔内遊離ガスを高率に認めるため,IPO同様,不適切な手術の行われる危険がある.現時点では,PCIの気体の由来として,消化管と肺胞が考えられており,今回われわれの経験したPCIは,間質性肺炎とIPOを呈した多発性筋炎の症例であり,PCIの発生機序を考えるうえで興味深く,膠原病とPCIの関連とも併せて報告する.

 以下,膠原病の病名は下記の略語を使用する.PSS(進行性全身性硬化症),SLE(全身性エリテマトーデス),PM(多発性筋炎:皮膚筋炎を含む),RA(慢性関節リウマチ),PN(結節性動脈周囲炎),MCTD(混合性結合組織病).

  • 文献概要を表示

 胃腸上皮化生は胃癌との関連において注目されてきているが,その成り立ちについては,まだ十分には解明されていない.その組織学的特徴が,杯細胞,吸収上皮,バネート細胞から成ることは広く知られているが,これらの特徴がいつの場合もそろって出現するわけではない.したがって,胃腸上皮化生にも,その程度と段階を知る必要から,これまでに,幾つかの分類が試みられており,それぞれに注目される(Table1).

 今回,われわれは生検材料を用いて,組織学的,粘液組織化学的に,胃腸上皮化生を検討したが,その際,特に杯細胞の出現に注目した.杯細胞は腸上皮化生の特徴の中で,最も目立つものであり,多くの場合,吸収上皮を伴って出現するが,少数例では杯細胞のみが,正常の胃腺窩上皮の間に現れる場合がある.今回は主として,この現象に注目し,このような組織学的変化を杯細胞化生(goblet cell metaplasia)と名付け,腸上皮化生の成り立ちを解明する一助として検討した.

  • 文献概要を表示

 近年,X線検査・内視鏡検査の進歩により胃癌の診断能は著しく向上し,5mm以下の早期癌でも条件が良ければ容易に診断されるところまできている.しかし,噴門部に関しては長い間,その診断能は他の部位に比べて低迷してきたが,最近造影剤の改善や撮影装置の改良が進み,噴門部の微細所見の描写も十分可能になりつつある.この段階で噴門部の診断理論も改めて見直してみる必要があると,思われる.われわれは1978年以後,噴門部の診断について検討を行い,早期癌の発見に努めてきた.この間に発見された陥凹型早期癌を対象に,噴門部特に食道開口部近傍におけるX線診断に必要な基礎的検討を行ったので報告する.

  • 文献概要を表示

 胃癌の浸潤範囲をoral側およびanal側共に術前に正確に診断することは胃癌根治手術を施行するために極めて重要である.最近,われわれは幽門輪近傍にまで浸潤する胃癌症例に対して十二指腸への浸潤の有無を内視鏡検査時に球部内反転法を施行し術前に検索している.用いたファイバースコープはオリンパス製GIF-P2,P3およびXPで,当初はGIF-P2にて本法を始めたが,GIF-P3のほうがスコープ先端の彎曲角が大きく容易に球部内反転が施行でき,また負荷アングルが最大でも生検鉗子が先端まで誘導できるのでGIF-P3を用いるようにした.しかし現在ではGIF-XPが径が細く先端の彎曲部も短いので他の機種に比して容易に本法が施行できると考え,GIF-XPを好んで用いている.球部内反転法はこれらのスコープで胃内から幽門輪を観察した後,球部内ヘスコープを挿入し十二指腸上角近くまでスコープ先端を進め大轡側からアングルを負荷しながら幽門輪を通るシャフトが見えてくるまでスコープを押し入れて球部内反転を行っている(Fig.1).大彎側からではどうしても十二指腸下行脚ヘスコープ先端が進む場合は小轡側からアングルをかけて反転している.本法により穿孔や出血などの重篤な合併症は全く生じていないが,検査後の上腹部の激痛を2例の患者が訴えたので安易に行ってよい検査法とは考えていない.

 本法を術前に施行して十二指腸浸潤の有無を検討した症例で手術にて切除できたのは,治癒切除9例,非治癒切除1例の計10例で,これら10例について術前診断と切除標本での十二指腸浸潤の有無を比較検討してみた(Table1).症例1,2および8の3例は球部内反転法にて十二指腸への癌浸潤を診断できたが,症例7と9の2例は球部内反転法にては十二指腸浸潤(+)の診断ができなかった.なお組織学的に十二指腸浸潤の有無を検討する際には西らの提唱による胃・十二指腸境界線を判定の基準としたD.以下2症例を供覧する.症例1:MACのBorrmann4型の胃癌症例で胃X線検査では十二指腸への浸潤がないと診断したが,球部内反転法にて幽門輪周囲がボッテリと隆起しており,十二指腸への浸潤が1cmぐらいあると診断した(Fig.2).切除標本では十二指腸の粘膜下層と漿膜下層に約5mmに及ぶ浸潤が認められた.症例8:AのBorrmann2型の胃癌症例で胃X線検査で球部に陰影欠損を認め癌浸潤は幽門輪を越えると診断した.球部内反転法にても幽門輪を越えるRandwallの一部を認め(Fig.3),この部を生検すると癌陽性であった.切除標本でも胃・十二指腸境界線を越えて粘膜下層で8mmの長さの十二指腸浸潤を認めた.

  • 文献概要を表示

佐竹論文について

 今までの諸家の定義と粘液および酵素組織化学的所見について,再検討し,問題を整理するためには,腸上皮化生の個々の腺管の中の構成細胞の性状を厳密に記載することが必要であり,その意味で本論文は,生検診断上,有用な提案と考えられる,しかし,胃粘膜の本来の腺窩上皮に杯細胞が混じって出現する現象を,個々の細胞である杯細胞に化生という語を組み合わせて定義することに問題がある.

入門講座 大腸疾患診断の考え方・進め方・9

  • 文献概要を表示

直腸

 <質問>直腸は最低,何方向撮ったらよいでしょうか.

 牛尾 普通私は,ルーチンでは6方向を撮っています.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 Combined Modality Therapy of Esophageal Carcinoma: D.P.Kelsen, R.Ahuja, S.Hopfan, M.S.Bains, C.Kosloff, N.Martini, P.McCormack, R.B.Golby (Cancer 48: 31~37, 1981)

 食道癌で術前照射を行うと切除率が上がると言われるが,5生率は20%に達していない.ある報告では,術前照射にbleomycinを併用し,照射のみより2.5カ月生存が延長したと述べている.最近sloan-ketteringで,cisplatinとbleomycinを併用し,進行癌の患者で23%の反応率をみた.このレポートは,Memorial病院での,術前合併療法の成績を検討している.

編集後記 丸山 雅一
  • 文献概要を表示

 症例報告というのは,原著論文や綜説よりもずっとやっかいなものだと思う.文献を調べたらきりがないし,自分の症例が本当に価値があるのかどうか不安にかられながら一文をまとめる作業は辛いものである.限られた紙面のなかで,まず具体的事実を正確に記載すること,この事実に基づいた症例の位置づけに1つの自己主張を託すこと.こういったことを先輩に教えられて,初めての症例報告に挑戦したときのことを思い出す.

 本号に掲載されている症例は,これは見てくれ,といった著者の自信作ばかりである.1つ1つの症例は,われわれが日常の診療で悩み立ちどまったときの道しるべの役割を果たしてくれるであろう.個人的な興味としては潰瘍性大腸炎に多発癌を合併した1例を報告した辻仲論文にひかれた.

基本情報

05362180.17.9.jpg
胃と腸
17巻9号 (1982年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月5日~11月11日
)