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胃癌の浸潤範囲をoral側およびanal側共に術前に正確に診断することは胃癌根治手術を施行するために極めて重要である.最近,われわれは幽門輪近傍にまで浸潤する胃癌症例に対して十二指腸への浸潤の有無を内視鏡検査時に球部内反転法を施行し術前に検索している.用いたファイバースコープはオリンパス製GIF-P2,P3およびXPで,当初はGIF-P2にて本法を始めたが,GIF-P3のほうがスコープ先端の彎曲角が大きく容易に球部内反転が施行でき,また負荷アングルが最大でも生検鉗子が先端まで誘導できるのでGIF-P3を用いるようにした.しかし現在ではGIF-XPが径が細く先端の彎曲部も短いので他の機種に比して容易に本法が施行できると考え,GIF-XPを好んで用いている.球部内反転法はこれらのスコープで胃内から幽門輪を観察した後,球部内ヘスコープを挿入し十二指腸上角近くまでスコープ先端を進め大轡側からアングルを負荷しながら幽門輪を通るシャフトが見えてくるまでスコープを押し入れて球部内反転を行っている(Fig. 1).大彎側からではどうしても十二指腸下行脚ヘスコープ先端が進む場合は小轡側からアングルをかけて反転している.本法により穿孔や出血などの重篤な合併症は全く生じていないが,検査後の上腹部の激痛を2例の患者が訴えたので安易に行ってよい検査法とは考えていない.
本法を術前に施行して十二指腸浸潤の有無を検討した症例で手術にて切除できたのは,治癒切除9例,非治癒切除1例の計10例で,これら10例について術前診断と切除標本での十二指腸浸潤の有無を比較検討してみた(Table1).症例1,2および8の3例は球部内反転法にて十二指腸への癌浸潤を診断できたが,症例7と9の2例は球部内反転法にては十二指腸浸潤(+)の診断ができなかった.なお組織学的に十二指腸浸潤の有無を検討する際には西らの提唱による胃・十二指腸境界線を判定の基準としたD.以下2症例を供覧する.症例1:MACのBorrmann4型の胃癌症例で胃X線検査では十二指腸への浸潤がないと診断したが,球部内反転法にて幽門輪周囲がボッテリと隆起しており,十二指腸への浸潤が1cmぐらいあると診断した(Fig. 2).切除標本では十二指腸の粘膜下層と漿膜下層に約5mmに及ぶ浸潤が認められた.症例8:AのBorrmann2型の胃癌症例で胃X線検査で球部に陰影欠損を認め癌浸潤は幽門輪を越えると診断した.球部内反転法にても幽門輪を越えるRandwallの一部を認め(Fig. 3),この部を生検すると癌陽性であった.切除標本でも胃・十二指腸境界線を越えて粘膜下層で8mmの長さの十二指腸浸潤を認めた.
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