小児科診療 83巻7号 (2020年7月発行)

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特集　研修医と指導医に贈る　小児科学研究･論文のススメ

研修医に贈る　研究の仕方･論文の書き方　臨床の現場における研究･論文作成の意義と楽しさ香坂　俊 83巻7号 , 2020年7月 , pp.847-854

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●論文を読むことができると日々の臨床が｢立体的｣になる(ルーチンにならない)。●若い医師であっても医療判断を行えるようになる(少なくとも取っかかりはつかめる)。●継続的かつ重層的な科学的貢献は、診療に対する考え方を深くする。●自分で研究をするようになると、診療に対してさらに謙虚になる(｢巨人｣の大きさを実感する)。

研修医に贈る　研究の仕方･論文の書き方　医学論文の文章構成小枝　達也 83巻7号 , 2020年7月 , pp.855-859

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●論文には必ず｢問い｣と｢解答｣がある。●簡潔、明瞭、論理的という3つの原則を守る。●方法は読み手が理解しやすいような説明を加えるとよい。●結果の表示には表や図を効果的に用いるとよい。●結果に依拠した考察をする。結果を無視して、自分の思いや経験を書いてはいけない。●章立てをはっきりとさせながら執筆する。

研修医に贈る　研究の仕方･論文の書き方　症例報告の書き方古庄　知己 83巻7号 , 2020年7月 , pp.861-868

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●論文の素材は、書きやすさではなく、重要度で選ぼう。●症例報告には構造があり、書き方にはコツがある。●症例報告は、患者･家族と協同した社会貢献でもある。●さあ、今日から書いてみよう。

研修医に贈る　研究の仕方･論文の書き方　臨床研究の実際森川　和彦 83巻7号 , 2020年7月 , pp.869-875

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●臨床実践の知識を高め、常に臨床に疑問をもって臨むことでクリニカル･クエスチョンを感じよう。●専門家、メンター、同僚、共同研究者からの慎重な意見を求めて、リサーチ･クエスチョンを改善しよう。●クリニカル･クエスチョンをPICOT形式に従ってリサーチ･クエスチョンへ構造化しよう。●リサーチ･クエスチョンをFINER基準で評価し、実行可能性、臨床的意義を確認しよう。●熱意をもって、臨床研究を論文化までやり遂げよう。

研修医に贈る　研究の仕方･論文の書き方　生物統計学の基礎大庭　真梨 83巻7号 , 2020年7月 , pp.877-885

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●データを前にしてまずやることは目で見ること、要約することである。●次に自分の仮説にあった解析を行う。検定だけでなく、平均値や差や比の大きさを推定し、信頼区間とともに報告することが求められている。●交絡をはじめとしたバイアスと研究デザインの関係、サンプルサイズについてもふれた。特にP値が何かについてしっかり理解してほしい。

研修医に贈る　研究の仕方･論文の書き方　臨床研究論文の書き方小林　徹 83巻7号 , 2020年7月 , pp.887-894

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●臨床研究論文を書くために最も必要なことは、執筆前の事前準備である。●臨床研究企画段階で研究コンセプトを簡潔にまとめ、研究報告Statementを参照すべきである。●統計学的有意差(小さなP値)と臨床的有意差(大きな効果量)はしばしば一致しないが、臨床家にとって重要な視点は臨床的有意差である。

指導医に贈る　研究･論文指導の方法　研修医と指導医に贈る　科学論文のススメ山岸　敬幸 83巻7号 , 2020年7月 , pp.895-899

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●科学論文の執筆は、楽しくて苦しいものである。●明快･簡潔に書くための技術がある。●事実と意見の落とし穴を識る必要がある。●パラグラフとトピックセンテンスを意識する。●書くことは考えることである。

指導医に贈る　研究･論文指導の方法　症例報告を指導する長谷川　奉延 83巻7号 , 2020年7月 , pp.901-905

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●症例報告を書く研修医の指導をする若手･中堅指導医は以下4点を銘記する。(1)日常診療そのものが重要である。(2)自己研鑽する。(3)平素の研修医指導が重要である。(4)実際の論文を書きはじめる際にも気をつけたいことがある。

指導医に贈る　研究･論文指導の方法　臨床研究論文を指導する三浦　大 83巻7号 , 2020年7月 , pp.907-912

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●研修医のクリニカル･クエスチョンと自主性を尊重する。●臨床研究を始める前に、研究デザインを入念に計画する。●学会発表と併行して論文の準備を進める。学会期間中は執筆のチャンスである。●論文は分割して、項目ごとに執筆の締切りを設定する。

活躍する小児科physician-scientistsの研究　大学院生編　大学院での研究生活山下　基 83巻7号 , 2020年7月 , pp.913-918

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●大学院は臨床医としても科学者としての視点を養う大事な場である。●大学院での研究生活は大変なこともあったが、とても充実した数年間であった。

活躍する小児科physician-scientistsの研究　大学院生編　あなたは大学院に入るべきか? 渡邉　健太郎 83巻7号 , 2020年7月 , pp.919-925

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●多くの若手小児科医には基礎研究を学ぶ潜在的な動機や意義があると思われ、また大学院で基礎研究を学ぶにあたり特殊な才能は必要ないと考える。●一方で、臨床現場とは異なる心理的ストレスに対応する必要があり、自らの意思による判断で進学を選択することが必要である。●大学院で基礎研究を学ぶ目的、メリット、難点につき筆者の経験をもとに考察し、若手小児科医が将来を考える材料を提供する。

活躍する小児科physician-scientistsの研究　開業医編　開業医でもここまでできる臨床研究牟田　広実 83巻7号 , 2020年7月 , pp.927-933

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●豊かな臨床経験を積んでいる開業医こそ、研究を続けるべきである。●研究を行うことは、質の高い診療を提供することにもなる。●臨床現場で悩み、解決するすべを模索することが研究をはじめるきっかけになる。

活躍する小児科physician-scientistsの研究　開業医編　小児プライマリ･ケアにおけるリサーチマインド杉村　徹 83巻7号 , 2020年7月 , pp.935-939

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●小児科診療においての疑問や困難を解決するために、リサーチは必要である。●小児プライマリ･ケアには、新しい発見のヒントが隠れている。●リサーチクエスチョンを発展させるためPICO(PECO)の手法がある。●研究をはじめる前に、先行研究、エビデンスの有無の検索が重要である。●日本外来小児科学会リサーチ委員会は、研究サポートシステムを運営している。●"なぜ?どうして?"リサーチマインドは未知なる発見へつながる。

活躍する小児科physician-scientistsの研究　勤務医編　医者は死して何を残す? 鳴海　覚志 83巻7号 , 2020年7月 , pp.941-946

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●優れた医学研究は時空を越えて医療によい影響をもたらす。●臨床では成功がデフォルトであるが、研究では失敗がデフォルトである。●成功を収めた研究者は幸運にみえるが、その本質は｢幸運をつかみにいったかどうか｣にある。●医学研究は｢自分のため｣｢他人のため｣という2つの要素があり、特有のモチベーションが生まれる。

活躍する小児科physician-scientistsの研究　勤務医編　physician-scientistsの研究　小児腎臓病野津　寛大 83巻7号 , 2020年7月 , pp.947-950

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●Physician scientistsには、Basic Researcherに対して、(1)病気をみた経験がある、(2)臨床データ、患者検体にアクセスできるという2つの大きなアドバンテージがある。●論文となる研究テーマとしては、万人が面白いと思うものより、誰も知らない新しい発見のほうが重要である。●新しい発見はたとえ少数の患者データでも評価される。●新しい発見をした研究者はそれを世界中の関係する研究者とシェアをすることが重要である。

活躍する小児科physician-scientistsの研究　勤務医編　小児循環器の臨床につなげる発生学･再生医学研究古道　一樹 83巻7号 , 2020年7月 , pp.951-959

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●一次心臓領域、二次心臓領域、心臓神経堤細胞、心外膜前駆細胞という4種の心臓前駆細胞が、時間的、空間的遺伝子制御のもと、心臓の各コンポーネント発生に寄与する。●心臓流出路発生異常には、二次心臓領域と心臓神経堤細胞の発生異常およびそれらの相互作用の破綻が関与する。●患者特異的iPS細胞とその分化誘導を用いた疾患モデル構築に加え、従来のヒト遺伝子変異解析、マウスモデル、患者組織解析を組み合わせた多角的手法により、詳細な病因解明が期待できる。

活躍する小児科physician-scientistsの研究　勤務医編　小児がんにおけるbedとbenchをつなぐ橋渡し研究滝田　順子 83巻7号 , 2020年7月 , pp.961-968

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●小児がんの治療成績は向上したものの、依然として再発･難治例は予後不良。●小児がんの長期サバイバーの増加に伴い、重篤な晩期障害が問題となっている。●難治性神経芽腫の治療標的ALKを同定した。●小児T細胞性急性リンパ性白血病で検出した新規SPI1融合遺伝子は悪性度と関連する。●有効な治療法がない患者を研究によって救えることは大きな喜びにつながる。

症例報告

Basedow病と免疫性血小板減少性紫斑病を合併し、治療経過中にSjögren症候群に気づかれた多腺性自己免疫症候群3型の1例多賀谷　翠 , 佐藤　知実 , 田川　晃司 , 松井　克之 , 丸尾　良浩 83巻7号 , 2020年7月 , pp.969-972

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多腺性自己免疫症候群(APS)は内分泌臓器の自己免疫疾患を複数合併したものであり、その3型では自己免疫性甲状腺疾患に様々な他の自己免疫疾患を合併する。今回Basedow病に免疫性血小板減少性紫斑病とSjögren症候群を合併したまれな小児症例を経験した。自己免疫疾患を診断した際には、APSも念頭においた検索も必要と考えられた。

抗NMDA受容体脳炎女児例における早期診断のポイント沼田　遥 , 日暮　憲道 , 小竹　悠子 , 山田　哲史 , 齋藤　義弘 83巻7号 , 2020年7月 , pp.973-976

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抗NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体脳炎は、発症早期に統合失調症様症状が前景となるため、精神疾患との誤診が少なくない。小児例はまれではないが小児科医の認識はいまだ不十分であり、診断･治療の遅れを助長している。ていねいな問診と神経診察から早期に本症を疑い得た12歳女児例を経験した。精神症状の特徴、局所脳神経障害の検出に加え脳波、髄液検査を遅滞なく行い、本症の可能性を考慮することが重要である。