病院 74巻12号 (2015年12月)

特集 ロジスティクスが病院を変える

巻頭言 神野 正博
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 超高齢社会の到来に向けた改革とその対応策としての地域包括ケアシステム構築議論が盛んだ.それは,2025年を見据えて2007年度に設置された社会保障国民会議,2012年度に設置された社会保障制度改革国民会議などで提言された医療介護福祉をはじめとした社会保障のあり方の方向性を基にして進められている.さらに,今年度には保健医療の価値を高めるためのリーン・ヘルスケアの達成などの目標を掲げた厚生労働省の「保健医療2035」も今後の方向性を提言している.

 一方,プライマリーバランスの2020年度黒字化という政府の財政再建に関する国際公約は,極めて重いものであり,社会保障と経済・財政の調和,すなわち経済の活性化と社会保障給付の削減という大きな流れが方針づけられている.

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●医療費削減,病院経営悪化の中で,病院は診療材料,薬品,給食などの材料費や委託費などの経費の圧縮を図らざるを得ない.

●経費圧縮,サービス向上のカギとなるのは,産業界や他のサービス業界,さらには諸外国を見習いながらの物流の改革と共同購入であろう.

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●病院における医薬品や医療材料などのロジスティクスは,医療看護行為に不可欠であるとともに,コストダウンのための効率化が求められている.

●さらには,ロジスティクスを通じた患者サービスの向上も求められている.

●本稿は,病院のロジスティクス改革について,①院外からの物品調達,②院内の物流効率化,③患者サービス向上,④災害に備えるBCP,の4つの視点から提案している.

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●医療を安全かつ効率的に提供するためには,トレーサビリティの確保がその基礎となる.そのために人手を要しては意味がなく,自動認識技術の普及が欠かせない.自動認識技術の要諦は,コードの標準化とともに,オーソライズされたデータベースの整備にある.

●介護施設を含め医療界へのバーコードや電子タグを利用した自動認識技術の導入は,スタッフの負担軽減,不要な不安からの解放に直結する.

●消耗品管理に適した方法として2-bin方式という先入れ先出しの考え方を紹介した.これによって至適配置数が明らかになり,過剰な在庫も減る.

災害時の物流を再考する 井出 博生
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●阪神・淡路大震災以降,災害時の対応は進んできたが,東日本大震災の分析を通じて支援物資の物流の課題が明らかになっている.

●これからの視点として地震以外の災害への対応,慢性期・生活期の支援,地域内での協力体制の構築,地域包括ケアにおける弱者の把握などが必要である.

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●Group Purchasing Organization(GPO)とは,医療機関が医療材料購入に当たりメーカーや卸売業者との価格交渉を有利に進めるために設立した共同購入組織である.

●米国では近年,Integrated Healthcare Network(IHN)という病院の経営統合が急速に進み,大手メーカーはGPOを通さないIHNとの直接取引の比率を高めている.しかしIHNの多くは大手GPOとの契約によりさらなる共同購入のメリット享受を図っており,GPOとIHNは相互連携の関係にある.

●わが国では,取引慣行の違いなどから共同購入システムを導入している病院はまだ少ないが,価格交渉の手間とコストの節減や,医療機材価格の透明化・医療の標準化の観点からも,GPO同様の機能の必要性には大きなものがある.

わが国における共同購入 後藤 俊男
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●2025年に向けた医療制度改革は,病院に「減収とコスト増」を余儀なくし,経営コスト削減が重要な課題となっている.

●病院単独のコスト削減には限界があり,求められるレベルの削減は難しい.共同購入は,単独では得られないハイレベルのコスト削減を可能とし,打開策として有効となる.

●病院が主体となり運営する日本ホスピタルアライアンスは,母体の異なる病院の参加を得て「病院による病院のための共同購入」に取り組み,23億円の成果を挙げるステージに来ている.

●共同購入は,「減収とコスト増」時代に病院が連携して取り組む時代の要請であり,日本ホスピタルアライアンスは幅広い分野で多くの病院の経営コスト削減に貢献していきたい.

対談

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赤字続きだった大病院が,ある改革によってわずか1年で黒字転換し,今も利益を上げ続けている——その“改革”の中身とは?

委託費,医療材料費をどう考えるか,事務部門が取り組むべき物流改革など,プロフェッショナルによる「収支改善のルール」を紹介する.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・12

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■はじめに

 大阪の万博記念公園から少し北西,住宅と緑に囲まれた静かな土地に,ホテルと見間違うような佇まいの病院が建っている(図1).かの有名な,千里リハビリテーション病院である.見学に訪れたことはなくとも,その強烈なコンセプトで印象に残っている人は多いだろう.

 病院の患者圏域は近郊の4市2町からが60%,大阪府三島郡からが30%,残りは遠方からである.紹介元は国立循環器病研究センターからが半分程度を占める.また,疾患の内訳としては脳卒中80%,骨折20%.回復期リハビリテーション病棟の平均在院日数は90日である.

 「リハビリテーション・リゾート」や「日常生活の中でのリハビリテーション」,そんな言葉をキーワードにこの病院が開院してから,既に8年が経つ.一貫して理念を曲げることなく歩んできた病院の運営を振り返りながら,本稿では,年月とともに変化してきた建築の使われ方などについてまとめる.

連載 Data mania・12

介護事業経営実態調査 小松 大介
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調査概要

 厚生労働省が3年に1回行っている「介護事業経営実態調査」は,介護保険サービスを手がける施設について,調査年の4月実績の収入,支出,職員人件費,その他施設・事業所における経営状況を分析するために必要な事項を調査しています.調査対象は,介護保険法により厚生労働大臣の定める地域区分,開設主体によりサービスごとに層化を行い,全体の1/6程度を無作為抽出して決定しています.

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■はじめに

 「看護師等の人材確保の促進に関する法律」(以下,「看護師等人材確保法」)の改正により,本年10月1日から,看護師等免許保持者は離職した場合などに都道府県ナースセンターへ連絡先などを届け出るよう努めなければならないこととされている.都道府県ナースセンターは,看護師等人材確保法に基づき都道府県知事から指定され,無料職業紹介,復職研修,相談などを行っている,看護職員確保の拠点である.この届出制度は,都道府県ナースセンターが届出情報を活用して離職中の看護師等とつながり,個々のライフサイクルや事情などについて相談に乗りながら適切なタイミングで復職に向けた総合的・一体的なサービスを提供することにより,看護職員としての復職を支援することを狙いとしている.

 地域医療を支える看護職員について復職支援を通じた人材確保を図るため,届出制度が着実に実施されるよう,ご協力をよろしくお願いしたい.

連載 医療の可視化と病院経営・12【最終回】

地域医療構想の今後 松田 晋哉
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■はじめに

 1年間にわたって,地域医療構想の内容に関して,その目的および運用方法について説明してきた.また,この1年間はいろいろな機会を活用させていただき地域医療構想に関する講演会なども行ってきた.当初は単なる病床削減策であるという誤解があり,なかなか構想の目的がうまく理解していただけない状況もあった.本連載に関連して大きな転換点となったのは,本誌8月号に掲載した「鹿児島県姶良・伊佐地区における模擬『地域医療構想調整会議』」であった1).病床推計の考え方,データブックとして配付されている資料を活用した各地域の現在および将来の医療提供体制と傷病構造の分析を行うことで,今後の課題に関して医療関係者で認識を共有するプロセスを,この模擬調整会議で具体的に示せたことは,地域医療構想に関する理解を深める上で重要なステップになったのではないかと思う.あらためて鹿児島県医師会会長の池田先生をはじめとする関係者の方々にこの場を借りてお礼を申し上げたい.

 本連載で説明してきたように,今回の地域医療構想では膨大かつ詳細なデータが各都道府県の関係者(行政および医師会)に提供されている.病床推計ツールを除くと,このデータは第6次医療計画策定時に各都道府県庁の関係者に配付されたものと内容的には同じものである.第6次医療計画では医療施設の機能分化と連携を進めることで医療提供体制を適正化するという目的を掲げ,それを達成するためにPDCAサイクルに基づいた展開を行うことが予定されていたが,残念ながら策定された計画のほとんどはこの目的に応えるようなものではなかった.

 民間の医療事業者が大多数を占めるわが国で,国が強制力をもって構造改革を各施設に迫ることはできない.しかしながら,急速な少子高齢化,そして長期にわたる経済の低迷は医療を支える社会保障財政を厳しいものにし,そして高齢化に伴う傷病構造の変化が需要と供給のミスマッチをもたらしている.こうした状況を放置していれば医療施設そのものの経営が厳しくなり,最悪の場合には経営破綻ということもあり得る.高齢社会において,医療や介護は重要な社会共通資本である.その経営の持続性を保証するためにも,各施設が中期的な動向を考えることができるデータが必要なのである.地域医療構想で示された資料は,そのような将来を考えるための指針の一つであると考える.今後,こうしたデータは国の施策の中でも活用されていく.そこで連載の最後である本稿では,地域医療構想の今後について私論を述べたい.

連載 医療・病院をめぐる文献ガイド・3

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■医療政策史・衛生政策史領域の動向

 医療政策が大変革の時代を迎えている中で,自院が生き残っていくためには何が必要か.筆者は,医療政策や衛生行政の歴史を学ぶことを提案したい.医療に限らず政策は,過去に行ってきた政策を前提にして立案される.積み上げてきた政策の延長に新しい政策が存在する.

 猪飼周平は『病院の世紀の理論』1) の11頁で「医療政策に長期的展望が必要であるとすれば,それを開く上で有効な方法の1つは,ただ未来を想像することではなく,歴史を学ぶことによって,今日の医療がどのような歴史の延長線上に位置しているのか,今日の医療に与えられた歴史的遺産とは何であるかを点検することである」とするが,筆者も同じ見解に立つ.

連載 赤ふん坊やの地域ケア最前線!〜全国各地の取り組みに出会う旅〜・[6]

長野県佐久市 小松 裕和
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 長野県佐久市では,地域の医師会を中心として,多職種で企画する多職種連携を促進するための取り組みが,2009年8月から展開されているんだ! 連載第6回目の今回は,地域医療の聖地・佐久から発信されている「地域ケアネットワーク佐久」の取り組みを紹介するね! 佐久市で有名中核病院および医師会に所属しながら多職種連携の場を提供され続けている,小松裕和医師にお話を聞きました!

連載 地域医療構想と〈くらし〉のゆくえ・9

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 いまの病院で働き出して間もないときのことです.とっても印象的な患者さんがおられました.

 それは,初老の男性に担がれて救急外来を受診された90代の女性でした.主訴は「両下肢が赤く腫れた」ということでしたが,それより,救急のスタッフたちが驚かされたのは彼女の全身が放つ異臭だったようです.

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要旨

 近畿2府4県のがん診療連携拠点病院・がん拠点病院等計153の病院ホームページ(以下,HP)を対象に,独自のチェックリストを用いてがん相談支援センターの掲載方法や内容を明らかにするとともに,多面的に工夫されている点や課題点を分析した.その結果から,がん相談支援センターについて病院HPに掲載する際,以下の6点が重要と考えられた.①がん相談支援センターのバナーがトップページにある,②がん相談支援センターの専用ページを設ける,③具体的でわかりやすい言葉や文を用いる,④情報をわかりやすく整理する,⑤相談場面が想像できるような写真などを掲載する,⑥がん相談支援センターからのメッセージを掲載する.

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次号予告

「病院」第74巻 総目次

基本情報

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病院
74巻12号 (2015年12月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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