公衆衛生 84巻7号 (2020年7月)

特集 認定専門家・専門医になる!—どうやって?役に立つの?

「公衆衛生」編集委員会
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 医師,保健師を含む公衆衛生従事者の専門性の高まりや個別分野に必要とされる知識や技術の高度化に伴い,また,臨床の専門医制度統合の動きなどとも呼応して,公衆衛生関連の学会や団体で専門家や専門医の認定制度を発足させるところが増えてきました.

 本特集は,以前から運営されている日本産業衛生学会の学会認定産業医制度や社会医学系の学会・団体が共同で立ち上げた社会医学系専門医制度を含め,公衆衛生分野の主な専門家・専門医の認定制度をレビューし,それらの目指すもの,メリットと課題,社会に対するインパクト,今後の展望を分かりやすく示し,既に取得している人,これから取得しようとしている人の参考となる特集を目指しました.また,わが国の保健医療に与える影響が大きい日本専門医機構の専門医制度や,英国など海外における状況についても解説しました.

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【ポイント】

◆専門家・専門医認定制度の設立が増えてきた背景には,高度な専門性の担保,人材育成や若手の確保の必要性等の理由がある.

◆具体的なメリットとして,若手の参入増加,学会活動参加者の増加,指導者による人材育成の促進等がある.

◆課題として,運営のための財政的・人的リソースの確保,資格者の活躍の場の確保,社会的認知の向上等がある.

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【ポイント】

◆人々の健康を守り向上することが「公衆衛生」の使命であり,この使命に貢献するのが公衆衛生の専門家である.

◆健康は多層的な多くの要因に影響を受けるため,公衆衛生活動には多くの領域,多くのサブスペシャルティが存在するが,専門家に必要なコンピテンシーも互いに関連・重複する.人々の健康へのアプローチにおいて,専門家間,セクター間で協働することが重要である.

◆公衆衛生とその認定専門家の重要性は再認識されているが,より認知度を上げ,専門家の仕事の魅力を発信し,社会貢献していくことが期待される.

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【ポイント】

◆日本産業衛生学会の「専門医制度」は,産業医を専門的職業とする医師が,体系的な研修を基にして産業衛生分野の専門性を身に付けるための制度である.

◆社会医学系専門医の取得を基本に,臨床分野の専門医の参加も受け入れている.

◆27年間の実績を基に制度は発展してきているが,持続可能性を高めるための課題の解決が必要である.

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【ポイント】

◆日本産業衛生学会産業保健看護専門家制度は産業保健看護専門職による実践活動の質を保証する制度として,2015年9月に運用が開始された.

◆産業保健看護専門家制度は「専門家制度登録者」「専門家」「上級専門家」の3段階のラダーで構成されており,それぞれの段階をクリアするために,筆記試験,面接試験,書類審査などにそれぞれ合格する必要がある.

◆今後,さらに制度を充実させ,専門家コミュニティーとして産業保健の発展に積極的に貢献するための活動を推進していくことが求められる.

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【ポイント】

◆社会医学系専門医制度の理念と目的を述べる.

◆社会医学系専門医制度の現状と課題を述べる.

◆社会医学系専門医制度における期待と将来展望を述べる.

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【ポイント】

◆日本疫学会の疫学専門家認定制度は,日本疫学会会員の自己研鑽と質的向上を目指すとともに,疫学研究を遂行あるいは支援できる人材を養成し,社会に貢献することを目的としている.

◆制度には疫学専門家(疫学研究を分担して実施できる人)と,上級疫学専門家(疫学研究の主導やコンサルテーション,疫学者の育成・指導ができる人)の2種類がある.

◆認定には会員歴と業績が必要である.認定レポートを記載して申請し,審査を受ける.疫学専門家はさらに筆記試験を経て認定される.

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【ポイント】

◆専門医の質の担保という教育的使命と,診療科・地域の偏在へ対応していく社会医学的使命の間にはジレンマがある.

◆内科,外科,放射線科は基本領域とサブスペシャルティ領域を連動して研修を行うことで,専門医を早く取得できる仕組みをつくった.

◆専門医には更新要件で生涯教育を義務付け,その質を担保する.

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【ポイント】

◆英国では,4年間の教育課程やコンピテンシーに基づく達成度評価など,専門家・専門医の養成・認定制度が確立している.

◆米国では,国レベルで設定されたコンピテンシーに基づいて専門家・専門医向けのさまざまなe-learningが実施されている.

◆わが国でも,コンピテンシーに基づいた教育資材,指導体制,達成度評価手法の開発・確立が求められている.

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はじめに

 筆者はこれまで保健医療分野の途上国への開発協力の実務に携わり,途上国での現場に加えて,グローバルヘルスの潮流に触れる機会があった.本稿では,その実例を紹介しつつ,わが国の公衆衛生の役割に関して思うところを述べる.

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はじめに

 「ブルキナファソ(Burkina Faso)からシアバターや手工芸品を輸入して日本で販売しています.あと,現地の人々と手作りで道路整備もしています.そうそう,HIV/AIDSや性感染症予防に向けた性行動調査もしています…」

 このような私の自己紹介を聞く人の顔には「?」が浮かぶことが多い.現在,上記のように3つの所属先があり,さらに社会健康医学の博士号取得準備中である.あまり稼働していないが,ブルキナファソの国際連合系HIV/AIDS対策プログラムで一緒に働いた多国籍の同僚たちと,保健医療コンサルタント事務所も設立している.一見バラバラであるが,実は全て,女性や子どもの問題の予防や削減,健康課題対策,エンパワーメントを目指した結果である.

連載 今さら知らないといえない 科学技術イノベーション—iPS,AIを説明できますか・2

ゲノム医療 武藤 香織
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はじめに

 2019年6月にがんゲノムパネル検査の保険適用が始まり,本格的にゲノム情報を活用する医療の幕が開いた.がんのみならず,希少疾患や生活習慣病に至るまで,医療の現場でゲノム情報が今後,ますます活用されるようになる.本稿では,公衆衛生の専門家が最低限持っておくべきゲノム医療に関連する知識について概説する.また,それぞれの現状と課題についても述べる.

連載 睡眠と健康を考える・9【最終回】

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はじめに

 ヒトは人生の1/3の時間を眠るとされるが,「睡眠」の研究が進み,その生体における役割が明らかになるにつれ,その重要性が認識されるようになった.その一方で,われわれの社会は1年を通じて24時間社会化しており,量的に十分な睡眠や休養を取ることが難しくなってきている.断眠実験を実施すると,動物は2〜3週間で死に至ると考えられることから1),睡眠は生命維持に必要不可欠であることが明らかであり,現代社会は,ヒトの健康には負の影響を及ぼしていると考えられる.以上は睡眠の量的な問題であるが,睡眠呼吸障害は質的な睡眠の確保を阻害し,現代社会では高い有病率を示していることが明らかとなってきた.

 2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され2),休養と睡眠が仕事に従事する人々の健康に不可欠であることが法制化という形で示された.2020年4月には時間外労働の上限が中小企業にも適用され,社会全体が休養および睡眠が健康に重要であると認識することがさらに求められている.そのような中で本シリーズ「睡眠と健康を考える」を始めた.8回にわたるこれまでの連載より約1年が経過したが,以上の状況を読者の皆様にも強く認識していただくべく,本シリーズの最後に「睡眠の諸問題:連載を終えるに当たって」と題して,これまでに記述された内容を総括し,各筆者の記述も引用しながら,休養および睡眠の問題を論じたい.

予防と臨床のはざまで

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 3月に入り,クラスター防止の考えに基づき,学会,研究会,講演会の中止が相次ぐようになりました.3月12日に予定していたさんぽ会(産業保健研究会)月例会も中止となり,私自身もお引き受けしていた複数の集合形式の講演会が中止となりました.中止により時間があいて暇になった感覚もありましたが,キャンセルや予定の変更などの対応にも追われ,なんとなく慌ただしい日々が続きました.大学では軒並み卒業式が中止となり,卒業式や謝恩会を楽しみにしていた学生や親御さんたちには残念な状況となりました.

 一方で,企業の衛生委員会は,大人数の会議の自粛を求める動きから中止になる企業と,最新情報の周知のために開催する企業が半々程度の印象でしたが,日々刻々と変わる状況や医学的なエビデンスを求めて,情報提供のニーズはかなりありました.「新型コロナウイルスの最新情報と企業の対応」というようなテーマで,複数の企業の衛生委員会や健康講話会でお話をさせていただきました.「新型コロナウイルスとは」から始まり,「医療現場から現在の検査・治療の様子」「日本と世界の感染状況の違い」「職場で今後取り組むべきこと」などについてお話しました.質問がたくさん出ることも多く,普段以上に関心が高いことが感じられました.

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 2014年4月16日,韓国・仁川港から済州島に向かっていた旅客船「セウォル号」が,全羅南道の観梅島沖海上で転覆・沈没し,修学旅行中の檀園高等学校生徒を含む300人を超える死者・行方不明者を出した海難事故がありました.日本でも大きく報道されましたから,この大惨事を記憶にとどめている方も多いと思います.今月は,この韓国全土を悲しみで包んだセウォル号沈没事故に取材した映画「君の誕生日」をご紹介します.

 海外から帰国したのでしょうか,スーツケースを抱えた男性がメモを見ながら団地の一室を訪ねる場面から映画は始まります.インターホンを押しますが,家の中にいる女性と子どもは応答しようとはしません.メモの住所が違っているのか,あるいは留守なのか,仕方なく男性は妹の家に向かいます.男性は主人公のジョンイル(ソル・ギョング),女性はその妻スンナム(チョン・ドヨン)です.なぜ,妻は主人公に会おうとはしなかったのか.男性は自宅の住所を知らされていなかったのか.映画はミステリーだといわれますが,ミステリアスな冒頭シーンで,イ・ジョンオン監督は観客の心をつかみます.

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次号予告

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 特集企画「認定専門家・専門医になる!—どうやって? 役に立つの?」はいかがだったでしょうか.筆者の方々には各制度の概要や特徴を大変分かりやすく示していただきました.歴史ある制度も最近できた制度もありますが,共通するのはその志の高さです.実際,生半可な気持ちでは制度を作り維持していくことはできません.公衆衛生分野は,どちらかといえば縁の下の力持ち的な存在ですが,健康な社会の守り手としての自負と情熱を感じていただき,一人でも多くの方が認定専門家・専門医取得に挑戦することを願っています.

 情熱といえば,今号には,国際協力に携わるお二方にご寄稿いただきました.「視点」の伊藤賢一先生には,国際協力機構(JICA)の現場から,日本の公衆衛生活動の歴史を途上国の皆さんと共有することの重要性について,「列島ランナー」の森重裕子先生には,西アフリカのブルキナファソでの調査研究,シアバター(シアの木の実から採れる植物性油脂で保湿クリームやせっけんに用いられる)や道路整備を通じての女性や地域のエンパワメント活動についてご執筆いただきました.いずれも国際協力の豊かな経験に裏付けられた静かな情熱が伝わってくる内容です.

基本情報

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公衆衛生
84巻7号 (2020年7月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

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