連載 睡眠と健康を考える・9【最終回】
睡眠の諸問題—連載を終えるに当たって
和田 裕雄
1
,
谷川 武
1
1順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座
pp.480-484
発行日 2020年7月15日
Published Date 2020/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209432
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はじめに
ヒトは人生の1/3の時間を眠るとされるが,「睡眠」の研究が進み,その生体における役割が明らかになるにつれ,その重要性が認識されるようになった.その一方で,われわれの社会は1年を通じて24時間社会化しており,量的に十分な睡眠や休養を取ることが難しくなってきている.断眠実験を実施すると,動物は2〜3週間で死に至ると考えられることから1),睡眠は生命維持に必要不可欠であることが明らかであり,現代社会は,ヒトの健康には負の影響を及ぼしていると考えられる.以上は睡眠の量的な問題であるが,睡眠呼吸障害は質的な睡眠の確保を阻害し,現代社会では高い有病率を示していることが明らかとなってきた.
2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され2),休養と睡眠が仕事に従事する人々の健康に不可欠であることが法制化という形で示された.2020年4月には時間外労働の上限が中小企業にも適用され,社会全体が休養および睡眠が健康に重要であると認識することがさらに求められている.そのような中で本シリーズ「睡眠と健康を考える」を始めた.8回にわたるこれまでの連載より約1年が経過したが,以上の状況を読者の皆様にも強く認識していただくべく,本シリーズの最後に「睡眠の諸問題:連載を終えるに当たって」と題して,これまでに記述された内容を総括し,各筆者の記述も引用しながら,休養および睡眠の問題を論じたい.
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